まるも亜希子の「寄り道日和」
目からウロコの製品を見つけた国際福祉機器展
2019年10月3日 00:00
幸いまだ私の両親は元気にしていますが、先輩たちからは家族の介護が必要になったという話がちらほらと聞こえてくるようになりました。乗り降りがしやすいクルマに買い替えたり、自宅をバリアフリーにリフォームしたりという大きな改良だけでなく、仕事をやりくりして病院への送り迎えをする時間を捻出したり、それまで必要なかった身のまわりのお世話をしたりといった、時間的・体力的な大変さも増えてくるようですね。
そうした中、介護する側の負担を減らし、介護される側の快適性や安全性を高める最新の福祉機器たちが大集合する「国際福祉機器展(H.C.R)2019」が、9月25日~27日に東京ビッグサイトで開催されました。
私はトークショー出演のため9月25日に伺いましたが、なんとトークショーのお相手は約2年ぶりにホンダブースに登場する、車いすプロテニスプレーヤーの国枝慎吾選手だったんです! 世界ランキング1位を独走していた矢先の2016年にヒジのケガが発覚し、手術後はバックハンドのフォームを変えるなど1からの挑戦に近い状況の中、試行錯誤しながらも2018年には徐々に戦績を伸ばし、なんとなんと、2019年はすでに優勝回数10回! 世界ランキング2位にまで復活を遂げた国枝選手。
「その強さとは?」の問いに、やはりテニスはメンタルスポーツなので、「俺は最強だ」と常に声を出して自分に言い聞かせ、信じることだとの答えが返ってきました。トークショーの合間にも、国枝選手は本物のラケットを持ってバックハンドのフォームを見せてくれたのですが、そのラケットにもテープに自筆で「俺は最強だ」と書いて貼ってあるんです。国枝選手曰く、ポイントは「最強になりたい」ではなく、「最強だ」と断言することだそうですよ。私たちも、仕事の大事なプレゼン前とか、試験の前などに、「絶対に大丈夫! 絶対に受かる!」って声に出して断言したら、実力以上のパワーが後押ししてくれるかもしれないですよね。
そして気になるのが、開催まで1年を切った2020年東京パラリンピック。国枝選手はもちろんその時期を最高の状態で迎えられるよう、体調管理などに気を配っているとのこと。「皆さんにまた来年ここで、金メダルを見せられるようにがんばります!」との言葉に、温かい拍手で会場が1つになったトークショーでした。本当に、心から応援しています!
さて、トークショーの後はもちろん会場を見てまわったのですが、まだ介護の大変さが分からない私でも、「なるほど!」と目からウロコの製品がたくさんありました。例えば、1回使い切りの携帯型ウォシュレット「お尻シャワシャワ」なんて、車中泊などのアウトドアレジャーや災害時、赤ちゃんのオムツ替えの時などにも使えるなぁと感心。「福祉機器」って聞くと、自分とは無関係のように思えてしまうけれど、視点を変えれば健常者にも役立つものが多いですよね。
そして今回、クルマ好きの心をくすぐるものも見つけてしまいました。それがトヨタブースに展示されていた、車いすに連結して使うことができる歩行領域EV(電気自動車)。必要に応じて着脱することで、手動の車いすとしても、電動車いすとしても使えるようになるのがいいところです。1回2.5時間の充電で約20km走行できるとのこと。これって、2017年の東京モーターショーに出展されていた「Concept-愛i WALK」がベースになっているものですよね。あの時は2021年に発売予定と言っていた記憶がありますが、こんなに早く実物(まだコンセプトでしたが)が見られて嬉しく思いました。
さらにトヨタブースでは、すぐにでも欲しいと思うものを発見。それが、シートの座面にただ置くだけで、着座面がクルリと回転して体の向きが簡単に変えられるようにできる「回転クッション」です。要介護まではいかないけれど、私の祖母のように足腰が弱くなってきて、クルマの乗り降りがちょっと大変、という人にいいなぁと思いました。置くだけなのでどの席でも使えるし、複数のクルマで共有できたりするのが便利ですよね。
そして最後に、今後もし私が車いす生活になったとしたら、真っ先に欲しいと思ったものを紹介します。それが、「着脱式手動運転装置 SWORD(ソード)」です。わずか3kgほどの重さなので手軽に持ち運びができ、ほとんどのクルマに自分で簡単に取り付けができて、足を使わずに手の操作だけで運転できるようにしてくれるというもの。クルマを手動運転用に改造するのもいいけれど、それだといつでもどこでもその1台しか運転できなくなってしまいますよね。でもこれがあれば、例えば旅先でレンタカーを借りた時や、友人とドライブに行って運転を代わってあげたい時、クルマを買い替えた時にもそのまま使えます。「障害を持つ身となっても、いろんなクルマに乗る楽しみを奪われたくない」という人には、うってつけの装置だなぁと思いました。
というわけで、毎回いろんな発見がある国際福祉機器展。でもいつも感じるのは、ここには「人が人を想う気持ちが溢れているなぁ」ということです。「誰にでも等しく移動の自由を」と願うクルマ業界も、着実に進歩していると感じました!