まるも亜希子の「寄り道日和」

中古車&新車ディーラーで見た新しいクルマ販売のカタチ

ズラリと並んだ展示車に圧倒されるなか、ショールーム内に入るといきなり出迎えてくれたのが、ホンダ車最高額にして世界に誇れるスーパーカー「NSX」の中古車。いや~、欲しい!(笑) ご興味のある方は、お値段などぜひU-Select城北店へお問い合わせくださいね

 3月といえば、決算期! という業界は多いですよね。自動車業界でも、ディーラーなど販売店の前に「決算大売り出し」なんてのぼりが立っている店舗をよく目にするのが、3月です。でも今、100年に一度の変革期を迎えていると言われる自動車業界。その販売方法もまた、大きく変わりつつあるのかなと感じています。

 先日、まったく異なる2つのディーラーを取材してきました。1つは、市場拡大が続いているという中古車の販売店。今や、フリマアプリなどで、素人が気軽にモノを売り買いできる時代ですよね。その影響もあって、“中古品にしかない買い物の醍醐味”というのが浸透してきたと感じています。例えば、子供のころに大好きだったキャラクターグッズが、もう廃盤で新品では買えないけど中古なら手に入るとか、新品同様にきれいなのに、格安で買える掘り出し物感とかね。

 それと同じように、中古車に対しても偏見や抵抗が薄れてきて、昔より格段に買いやすくなったように感じるんですね。認定中古車のように、保証がついた物件もたくさん選べるし、外観もインテリアもプロの手できれいにしてあって、タバコ臭いクルマとかも減ってきました。

 そんな、中古車販売店の最新のカタチだなぁと感じたのが、埼玉県和光市にある「Honda U-Select城北店」でした。店舗に近づくにつれて、まずその広さ、ズラリ並んだ展示車の多さにビックリ! 1階だけじゃなくて2階の屋上にも展示スペースがあって、なんと常時150~250台くらいの展示車を自由に見て回れるそうなんです。新車ディーラーじゃ、こうはいかないですよね。中古車は1台1台、色もグレードも走行距離などの状態も異なるから、できれば自分の目で見て確認しながら選びたい、というのが私たちお客の立場での本音。まるっきり全部の希望が揃っている1台を探すのが難しいからこそ、いろんな視点での比較がしやすいことは、とてもありがたいなぁと思いました。しかも、ほとんどの展示車は試乗も可能で、ここになければ希望の車種や条件で全国の在庫から検索して探してくれるそうです。

 これまで、私は何台もの中古車を購入してきましたが、いつもどこか、気に入らない部分がありながらも「仕方ないか」とあきらめていたことが多かったんです。保証もなく、買ってすぐに壊れても泣き寝入り。車検や点検までは面倒見てくれないので、自分で探したお店で飛び込みで車検をやってもらってボったくられたり、なんて悲しい経験をしたことも。でもこれからは、たとえ中古車だろうと譲れない条件はガマンせず、納得してから買えるし、納車前の点検整備をしっかりやってくれて、購入後のサポートもちゃんとお願いできる。そうした、新車購入のいいところを中古車でも享受できるのが素晴らしいですよね。

これまでたくさんのディーラーを取材してきましたが、ここまで立派なキッズルームは初めて見ました。児童館もビックリの大きな滑り台のある個室で、これなら子供が脱走する心配もないし、外から子供の様子が見守れるので安心。ゆっくりクルマ選びが楽しめそうですね

 そしてこのU-Select城北店は、子供連れにもうれしいおもてなしがたくさん! まず、大きな滑り台があって、遊び道具もたくさんある豪華なキッズルーム。クルマの購入ってけっこう書類などのやりとりに時間がかかるので、子供ってすぐ飽きちゃうんですよね。でもここなら、逆に「まだ帰りたくない~」なんて言われそうなほど、楽しそうです(笑)。さらに、小さな子供をずっと膝で抱っこしているのって疲れるんですが、ここにはレストランにあるようなキッズチェアが用意されていたり、ブランケットがあるのもうれしいところ。もちろん授乳室もあったのですが、まるで応接室みたいに広くてゴージャスで、ここなら赤ちゃんも心地いいだろうなと感じました。子供が生まれたのを機にクルマを買おう、というファミリーも多いので、これは素敵なおもてなしですね。

まだオープン間もないアウディシティ紀尾井町は、ホテルニューオータニからすぐの好立地。坂の途中に建つ趣のある外観で、この日はイエローのR8が道ゆく人たちの注目を集めていましたよ。展示車は少ないですが、地下には20台ほどの試乗車があり、気軽に試乗しに来てください、とのことでした。取材の内容は4月15日発行の「ahead」でぜひ

 さて、場所も雰囲気もガラリと変わって、もう1つご紹介したいのは、アウディが世界で6店舗目となる都市型ショールームとして、東京・紀尾井町にオープンさせた「アウディシティ紀尾井町」。ここは東京の一等地で、これまでは自動車ディーラーができるなんてまったく想像もしなかった場所なのですが、実際に見てみると意外にも景観に馴染んでいて、素敵だなと素直に感じました。ディーラーというよりは、どこかインテリアのショールームとか、小さな美術館のような雰囲気もあります。その理由は、もちろん外観やインテリアにこだわっていることもあるんですが、やっぱりここがサービス工場を併設しないディーラーというのも大きいでしょうか。展示車は数台と小規模ながら、VRなどの最新技術を駆使した接客を行ない、目黒・豊洲のサービス工場と連携して購入後のサポートをするという、新しいカタチです。

 店舗に入ってみると、クルマを見る場所というよりも、落ち着いて話をしたくなる空間として、すごくいろんなところにこだわっていると感じました。見た目のオシャレさだけでなく、手で触った感触や座り心地もすごくしっくりくるソファやチェア。圧迫感がないのに、スカスカしない心地よさがある個室。そして、特別に作ってもらったというオリジナルの香りがほんのりと漂い、心が穏やかになるようです。しかもこの香りは、アロマなど湿式のものだとお客様の洋服やクルマのシートなどに香りが移ってしまうので、それを防ぐために乾式のものにしているという、驚きのこだわりまで! さらに、納車ルームや試乗の拠点となる地下1階に降りると、また違った香りが出迎えてくれるという、なんとも贅沢なおもてなしでした。

店舗の中はこんな感じで、なんだかインテリアショールームのようにも見えますね。この大きなソファは、よくヨーロッパのホテルロビーなどで見かけるもので、とてもオシャレ。1つひとつ、置いてあるものが上質でセンスがよくて、うっとりしてしまいました。残念ながら私が感心したオリジナルの香りは販売されていないそうですが、バッグなどのグッズコーナーもありましたよ

 アウディシティ紀尾井町では、実際にズラリと並んだ展示車を見ながら納得のクルマ選びをすることは叶いませんが、その代わりに、ドイツ本国のサーバーと接続したさまざまなデータを呼び出して、色や素材などをとことん、自分の思い通りに組み合わせて納得のいくまで比較できるというのが大きな魅力です。VRによって、まるで目の前に本当にクルマがあるみたいに見られるのも、それを後押ししてくれていると思います。

 まったくタイプは異なりますが、共通していると感じたことは1つ。お客様にもっともっと満足してもらうために、新しい一歩を踏み出した販売のカタチだということです。ドアを開けたり座ってみたりしながら、あーだこーだと悩むのも楽しいし、画像で未来の愛車の着せ替えをしながら、理想の1台をオーダーするのも絶対に楽しいはず。どちらも、いい買い物ができそうな予感でいっぱいになった、新世代ディーラー取材でした。

これが、ここアウディシティ紀尾井町の特徴の1つでもある、VRを使ったアウディエクスペリエンス。日本で販売しているモデルはすべて、内装や色、乗った感覚などを試すことができます。ほかのメーカーでもVRを使ったことはあるんですが、1人でワーキャー騒いでしまうのでちょっと恥ずかしいことも(笑)。でもここは、目の前の大きな画面に同様の映像が流れるので、VRゴーグルをつけていない人にも、なんとなく分かってもらえるのがいいと思いました

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z(現在も所有)など。