まるも亜希子の「寄り道日和」
中古車&新車ディーラーで見た新しいクルマ販売のカタチ
2020年3月19日 00:00
3月といえば、決算期! という業界は多いですよね。自動車業界でも、ディーラーなど販売店の前に「決算大売り出し」なんてのぼりが立っている店舗をよく目にするのが、3月です。でも今、100年に一度の変革期を迎えていると言われる自動車業界。その販売方法もまた、大きく変わりつつあるのかなと感じています。
先日、まったく異なる2つのディーラーを取材してきました。1つは、市場拡大が続いているという中古車の販売店。今や、フリマアプリなどで、素人が気軽にモノを売り買いできる時代ですよね。その影響もあって、“中古品にしかない買い物の醍醐味”というのが浸透してきたと感じています。例えば、子供のころに大好きだったキャラクターグッズが、もう廃盤で新品では買えないけど中古なら手に入るとか、新品同様にきれいなのに、格安で買える掘り出し物感とかね。
それと同じように、中古車に対しても偏見や抵抗が薄れてきて、昔より格段に買いやすくなったように感じるんですね。認定中古車のように、保証がついた物件もたくさん選べるし、外観もインテリアもプロの手できれいにしてあって、タバコ臭いクルマとかも減ってきました。
そんな、中古車販売店の最新のカタチだなぁと感じたのが、埼玉県和光市にある「Honda U-Select城北店」でした。店舗に近づくにつれて、まずその広さ、ズラリ並んだ展示車の多さにビックリ! 1階だけじゃなくて2階の屋上にも展示スペースがあって、なんと常時150~250台くらいの展示車を自由に見て回れるそうなんです。新車ディーラーじゃ、こうはいかないですよね。中古車は1台1台、色もグレードも走行距離などの状態も異なるから、できれば自分の目で見て確認しながら選びたい、というのが私たちお客の立場での本音。まるっきり全部の希望が揃っている1台を探すのが難しいからこそ、いろんな視点での比較がしやすいことは、とてもありがたいなぁと思いました。しかも、ほとんどの展示車は試乗も可能で、ここになければ希望の車種や条件で全国の在庫から検索して探してくれるそうです。
これまで、私は何台もの中古車を購入してきましたが、いつもどこか、気に入らない部分がありながらも「仕方ないか」とあきらめていたことが多かったんです。保証もなく、買ってすぐに壊れても泣き寝入り。車検や点検までは面倒見てくれないので、自分で探したお店で飛び込みで車検をやってもらってボったくられたり、なんて悲しい経験をしたことも。でもこれからは、たとえ中古車だろうと譲れない条件はガマンせず、納得してから買えるし、納車前の点検整備をしっかりやってくれて、購入後のサポートもちゃんとお願いできる。そうした、新車購入のいいところを中古車でも享受できるのが素晴らしいですよね。
そしてこのU-Select城北店は、子供連れにもうれしいおもてなしがたくさん! まず、大きな滑り台があって、遊び道具もたくさんある豪華なキッズルーム。クルマの購入ってけっこう書類などのやりとりに時間がかかるので、子供ってすぐ飽きちゃうんですよね。でもここなら、逆に「まだ帰りたくない~」なんて言われそうなほど、楽しそうです(笑)。さらに、小さな子供をずっと膝で抱っこしているのって疲れるんですが、ここにはレストランにあるようなキッズチェアが用意されていたり、ブランケットがあるのもうれしいところ。もちろん授乳室もあったのですが、まるで応接室みたいに広くてゴージャスで、ここなら赤ちゃんも心地いいだろうなと感じました。子供が生まれたのを機にクルマを買おう、というファミリーも多いので、これは素敵なおもてなしですね。
さて、場所も雰囲気もガラリと変わって、もう1つご紹介したいのは、アウディが世界で6店舗目となる都市型ショールームとして、東京・紀尾井町にオープンさせた「アウディシティ紀尾井町」。ここは東京の一等地で、これまでは自動車ディーラーができるなんてまったく想像もしなかった場所なのですが、実際に見てみると意外にも景観に馴染んでいて、素敵だなと素直に感じました。ディーラーというよりは、どこかインテリアのショールームとか、小さな美術館のような雰囲気もあります。その理由は、もちろん外観やインテリアにこだわっていることもあるんですが、やっぱりここがサービス工場を併設しないディーラーというのも大きいでしょうか。展示車は数台と小規模ながら、VRなどの最新技術を駆使した接客を行ない、目黒・豊洲のサービス工場と連携して購入後のサポートをするという、新しいカタチです。
店舗に入ってみると、クルマを見る場所というよりも、落ち着いて話をしたくなる空間として、すごくいろんなところにこだわっていると感じました。見た目のオシャレさだけでなく、手で触った感触や座り心地もすごくしっくりくるソファやチェア。圧迫感がないのに、スカスカしない心地よさがある個室。そして、特別に作ってもらったというオリジナルの香りがほんのりと漂い、心が穏やかになるようです。しかもこの香りは、アロマなど湿式のものだとお客様の洋服やクルマのシートなどに香りが移ってしまうので、それを防ぐために乾式のものにしているという、驚きのこだわりまで! さらに、納車ルームや試乗の拠点となる地下1階に降りると、また違った香りが出迎えてくれるという、なんとも贅沢なおもてなしでした。
アウディシティ紀尾井町では、実際にズラリと並んだ展示車を見ながら納得のクルマ選びをすることは叶いませんが、その代わりに、ドイツ本国のサーバーと接続したさまざまなデータを呼び出して、色や素材などをとことん、自分の思い通りに組み合わせて納得のいくまで比較できるというのが大きな魅力です。VRによって、まるで目の前に本当にクルマがあるみたいに見られるのも、それを後押ししてくれていると思います。
まったくタイプは異なりますが、共通していると感じたことは1つ。お客様にもっともっと満足してもらうために、新しい一歩を踏み出した販売のカタチだということです。ドアを開けたり座ってみたりしながら、あーだこーだと悩むのも楽しいし、画像で未来の愛車の着せ替えをしながら、理想の1台をオーダーするのも絶対に楽しいはず。どちらも、いい買い物ができそうな予感でいっぱいになった、新世代ディーラー取材でした。