まるも亜希子の「寄り道日和」
街で見かけるのが楽しみな最新のロンドンタクシー「TX」
2020年3月26日 00:00
新しいクルマを見ると、ついつい「運転してみたい!」と思いがちなのですが、今回は珍しく「乗せてもらいたい!」と思いました(笑)。それがこちら、最新のロンドンタクシー! まさか、日本でお目にかかれるとは思っていなかった、LEVCの「TX」です。2020年1月に日本上陸したそうなのですが、お値段が1000万円超えということや、コロナウイルスの影響もあり、現在まだ納車先は決まっていないそう。ということは、日本ではまだまだ珍しい1台。貴重な体験をさせていただいちゃいました。
きっと多くの人が、東京オリンピックでの送迎需要を見込んだ導入なんでしょ? と思うかもしれませんが、LEVCジャパン 経営企画室室長の渋谷さん、広報部長の石黒さんにお話を聞いてみると、実はもっと深い想いがあったのです。このTXは、ロンドンで現在2500台が運行しているそうなのですが、ガバッと大きく開く伝統の観音開きドアには、サッと簡単に引き出せるスロープがあり、耐荷重250kgで電動車いすにも対応。室内に乗り込んでから、くるりと展開するスペースも確保できるので、誰かの助けを借りずに乗り降りが可能だと言います。また、手動のコンパクトな車いすなら、車いす+4人が乗車可能で、家族が同じ空間で同じ目線でのドライブを楽しめます。これこそが、今の日本に足りないもの、これからの日本に必要不可欠な乗り物なのだと、自らも車いす生活を送った経験のある渋谷さんは感銘を受け、日本導入に至ったのだそう。
確かに、日本のタクシーには車いすOKのサインはありますが、街中で乗せているところを私自身は一度も見たことがありません。一部の報道によると、空車が来て手を挙げても通過されたり、乗車拒否をされたりすることも多いと聞きます。パラリンピックを開催しようとしている国が、こんな状況でいいのでしょうか? そんな疑問は常にありました。
このTXは1.5リッターエンジン+モーターのレンジエクステンダーEVなので、自治体によって変わるものの購入時に300万円超の補助金が利用できます。そうなると、個人で購入するのにはまだ高価ですが、政府主導での導入なら、それほどハードルが高い金額ではないように思います。渋谷さんは、「すべての人には、自由に移動する権利があります。日本ももっとこういう乗り物を増やして、誰もが精神的にも豊かな生活を送れるようになってほしい」と語ってくれました。
さて、実際に最新ロンドンタクシーのキャビンに乗ってみると、天井は大きなガラスルーフで明るいし、常時座れるシートが3席、向かい合う形で折りたたみ式の簡易シートが3席、計6名分が備わり、とっても広々とした観覧車のコンパートメントのよう。運転席とは透明なパーテーションで仕切られているので、お互いのプライバシーも守れます。助手席の部分にはシートはなく、荷物置き場になっていました。
走り出すと、ときおりブーンとエンジンがかかる音はかすかに聞こえるものの、やっぱりとても静かです。乗り心地は、ふっくらソファのような、とまではいきませんが、遊園地の乗り物よりはかなり上質、という感じ。なにより、大きな窓ガラスから外の景色がよく見えます。ドアにあるマイクのスイッチを押すと、運転手さんとの会話ができるようになっていました。
で、乗せてもらいたいと言っておきながら、せっかくだからとやはり運転もさせてもらいました(笑)。出足は重いのかと思いきや、拍子抜けするほど軽やか。実はこのTX、贅沢にもボディの骨格がアルミで外板が樹脂なんだそうです! そして加速フィールも安定感はしっかりありつつ、軽やかさの方が優っている感覚。アイポイントが高いので、しばらく運転していると、この感覚って何かと似ているような……!? そうだ、これは大きめのSUVをオンロードで走らせているような感覚です。ロンドンタクシーは、運転していても想像以上に楽しい乗り物でした。
TXの納車第1号は、いったいどなたになるんでしょうね。街で見かけるようになるのが楽しみです!
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