まるも亜希子の「寄り道日和」

新型「フィット」のレーシングマシンでJoy耐にチャレンジ

4代目となった新型「フィット」のBASICをベースに、N2と呼ばれる仕様のレーシングマシンへと変わりつつあるわがチームのフィット。車体そのものはN1規定に入るのですが、タイヤにSタイヤ(横浜ゴム ADVAN A050)を装着するとサイズが変わってしまうため、N2規定になるそうです。これからカッコよくカラーリングしてもらい、4月上旬にはシェイクダウンする予定。本番は、現時点では6月27日(予選)、28日(決勝)となっています

 いろんなことが中止や延期になって、ガックリと肩を落とすことも少なくないこの春。私もたくさんの予定が水に流れてしまいましたが、なにより命を守ることが最優先ですから、これはもう落ち込んでいても仕方ないぞ、ということで、世界がにっくきウイルスに打ち勝つ日が来た時に備え、コツコツと準備だけでもしておこう。そう前向きに考えることにしました。

 そんな準備の1つとして、今一番ワクワクしながら進めているのが、新型「フィット」でのJoy耐チャレンジです! Joy耐とは、ツインリンクもてぎで行なわれる真夏の7時間耐久レース。これに、モータージャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」が、2モーターとなった新型フィットをマシンに迎えて挑戦しようという計画なのです。

レーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」は、次世代エコカーの楽しさ、アマチュアレースの魅力を広く伝えようと、モータージャーナリストの石井昌道、橋本洋平、まるも亜希子の3人で2008年に結成しました。これまでに「シビック ハイブリッド」「インサイト」「CR-Z」などでJoy耐にもチャレンジ。先代フィットでは大御所である桂伸一さんをはじめ、島下泰久、山田弘樹、山本シンヤといったジャーナリスト諸氏をゲストに迎えながらさまざまな視点でレポートを続け、2018年にはクラス優勝も達成しました。2020年はどうなることやら、今からワクワクです

 TV-CMなどで見た人も多いと思いますが、新型フィットはスペック至上主義を捨て、とにかく乗る人が「心地いい」クルマを目指して生まれ変わりましたよね。グレード体系も見直されて、ヒエラルキーをつけるのではなく、いろんなライフスタイルに合うようにというバリエーションがラインアップされていて、これまであったスポーツグレードのRSも撤廃されてしまいました。

 でも、開発に携わった研究所のエンジニアたちに話を聞くと、だからといって決して「走りの楽しさ」を捨てたわけじゃないんだよ、というのです。これまで通り、いやもしかしたら2モーターのハイブリッドを手にいれたことで、これまで以上に走りの楽しさは追求できているかもしれない。それが本当にそうなのか。走って楽しいフィットを求める人たちに本当に受け入れてもらえるものなのか。それを、ぜひJoy耐で試したい。そんなきっかけでこのプロジェクトがスタートしました。

 そこでまず、何はともあれ急ピッチで進められたのは、サーキットを走るために最低限必要な装備を付けてもらうこと。マシン製作は栃木県宇都宮市にあるショップ「ターマックプロ」にお願いして、私もその様子を覗きに行って来ました。作業は、安全確保のためにロールバーを装着したり、耐久レースは燃費のよさも重要なカギとなってくるため、内装を剥がして軽量化したり、といったところがメインです。

 作業スペースに置かれていた新型フィットと対面すると、すでに試乗会で見た姿とは別人のような姿に(笑)。「ありゃ~、何にも付いてないよ」とビックリするやら感心するやら。作業を担当してくださったターマックプロの川口さんは、これまでにたくさんのクルマをレーシングカーにする作業をしてきていますが、見たことがないくらい新型フィットはシッカリと造ってあって、防音材や溶接などもコンパクトカーでは考えられないほどの高レベルな作り込みで驚いた、と言っていました。外から見ただけでは分からないところだけに、こうした話が聞けるのも面白いですよね。

 ウマ(リジットラック)に載せられた状態のまま、ブリッドのバケットシートが付いた運転席に座ってみましたが、試乗会で感じた以上のパノラマ視界にただただ圧倒されます。Aピラー、ほんっとに細い!(笑)。これはサーキットを走る上でもメリットになるでしょうね。とくにJoy耐は約90台が一斉に走るレースなので、周囲のマシンの動きを把握することがクラッシュを避ける上で欠かせない。なので、これはよさそうです。

 わがチームは、初代フィットから歴代のフィットでJoy耐にチャレンジしてきたメンバーもいるので、この最新のフィットで走る7時間がいったいどうなるのか? どんなよさがあってどんな弱点が出てくるのか? ドライバーには優しいのか、厳しいのか? いろんなことが本当に楽しみです。私はチーム代表兼マネージャーとしての参加なので、そのあたりは橋本洋平がレポートしてくれると思います。どうぞ、新たなチャレンジの顛末にご期待ください♪

耐久レースに出るための作業をほぼ終えた状態の新型フィット。運転席以外はガラーンとしていて、なかなか普段は見られない光景ですよね。ロールバーの根元をどこにするのか、車体内蔵物との兼ね合いなどを考えながら、バランスを見て取り付けていくのがプロのノウハウと腕の見せどころだそうです。早く乗ってみたい!

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z(現在も所有)など。