まるも亜希子の「寄り道日和」

コロナ禍で再び注目されている「ドライブインシアター」に行ってきました

夕闇に浮かび上がるような、ドライブインシアターのスクリーン。8月30日まで稲毛海浜公園駐車場で開催されている「DRIVE IN PARK CHIBA」に参加してきました! 18時過ぎにゴロゴロと近くで雷が鳴り始め、ちょっと肝を冷やしましたが、雨が降ることなく無事に上映されてよかった~。こちらでは、8月28日(金)~30日(日)には、銚子電鉄救済?!“超C級映画”のこけら落とし! と題して、「電車を止めるな! ~呪いの6.4km~」が上映されるそうですよ

 日本では1990年代をピークに、もうすっかり過去のもの。エコ時代の到来とともに消えたものだと思っていたのですが、まさか21世紀、令和の時代になって体験できるとは思っていませんでした。そう、それは自家用車の中から映画を鑑賞できる、ドライブインシアターです。

 きっと若い世代は「何それ?」と思う人も多いですよね。大きな映画館が日本各地にたくさんあり、レンタルや配信サービスも充実している今となっては、巨大な駐車場にスクリーンを設置して、それぞれのクルマから映画を見るなんて、ちょっと考えられない光景かもしれません。

 でも実は今、コロナ禍でもソーシャルディスタンスを保ち、パーソナルな空間で映画鑑賞ができるということで、ドライブインシアターが見直されているんです。クラウドファンディングによる復活プロジェクトが支持され、限定的に各地で開催されたり、巨大ショッピングモールのイオンが駐車場でのドライブインシアターを開催したり、アーティストがファンサービスのためのイベントとして限定開催したり。その波は日に日に大きくなっていると感じていました。

 なので私もかなり前から「参加したい!」と思って情報を集めていたんですが、あまりの人気にチケットは即完売。中には抽選になったりするものもあって、なかなか参加できず(涙)。子供も一緒に観ようと思うと、上映作品も限られてくるので、きっと同じような想いのファミリーが多いのかなと感じていました。

 そしてついに見つけたのが、千葉県の稲毛海岸で8月30日まで開催中の「DRIVE IN PARK CHIBA」。これはドライブインシアターと、ドライブスルー形式で参加できるグルメ&マルシェによる、クルマで楽しむエンタメパーク。新型コロナウイルスの影響でさまざまなエンターテインメントが自粛を余儀なくされ、飲食店や農家など生産者への経済的損失が計り知れない中、クルマという安全な空間を利用してエンターテインメントや飲食関係者の活性化の後押しをしたい、という思いで企画された取り組みです。

 インターネットでチケットを購入したのですが、料金はクルマ1台3000円。乗車人数に制限なし、というのにビックリ。8人乗りのミニバンも2シーターのオープンカーも料金は同じなんです。また、クルマを持っていない人でも参加できるように、会場と最寄り駅の送迎付きで、レンタカーから映画鑑賞できるプランもあり、そちらは6000円。これだって、5人で来たらすごくリーズナブルですよね。

 さて、上映日当日は、18時開場なのに張り切ってかなり早く到着してしまったので、ブラブラと海を見ながらお散歩して夕暮れを待ちました。開場とともに続々とクルマが集まってきて、1台ずつスタッフの誘導でスクリーンに向けて放射状に停車していきます。我が家はデカいミニバンだったので、恐る恐る「後ろの方でもいいですよ」と申し出たのですが、「どこからでも見えるように停めていただけるので大丈夫ですよ~」とのこと。確かに、あとで最後列のクルマの位置からスクリーンを見てみましたが、まったく問題ありませんでした(笑)。

本来は、ドライブスルー形式で楽しめるマルシェ「星空の夜市」というのを楽しみにしていたのですが、残念ながらこの日はお休み。ピザや焼き鳥、ウインナーといったグルメのほか、千葉の農家が丹精込めて育てた農産品の「お楽しみパッケージ」を手に入れることができるそうです。でもこの日は美味しいタコスのキッチンカーとポップコーンを購入することができました。千葉市観光協会では、アフターコロナという新しい価値観による、新しい様式のエンターテインメント空間の創出として、こうした取り組みを行なっているとのことです

 入場受付は、クルマのそばまでスタッフが来てくれて、窓からスマホのチケット画面を見せるだけ。感染拡大防止の観点からは、他人との接触がないのが安心ですよね。ほかのドライブインシアターでは、ポップコーンやハンバーガーなどのスナックセットが付いていて受け取れるプランなどもありますが、今回は会場の一角にキッチンカーがいて、そこで自由に購入できるようになっていました。この日はマルシェがお休みだったのは残念でしたが、入場前に自分たちで食べ物を用意して持ち込むのも自由なので、アレルギーのある人なども助かりますよね。

 上映開始までの時間を思い思いに過ごしながら、忘れちゃいけない準備が2つ。まずは、映画の音声を聞くためにラジオを主催者から指示されたFMの周波数に合わせておくこと。そしてクルマのライトを前後ともすべて消灯すること。車種によっては完全に消灯できないこともあるので、その場合はスタッフが目隠しをしてくれるそうです。そうしないと、後ろのクルマの人が眩しいですからね。

 さぁ、いよいよ上映開始時間になり、このまますんなり始まるのかな、と思ったら、ノリのいいスタッフの声がFMから聞こえてきました。いわく「コロナ禍でも安心して映画を楽しんでもらえる、素晴らしいドライブインシアターなのですが、1つだけ欠点があります」と。

 それが、会場の一体感が感じにくいことなのだと。その欠点をクリアするために、皆さん一緒に「ハザードチャレンジをしていきます!」という威勢のいい掛け声とともに、真っ暗な会場に全車がいっせいにハザードランプを点滅させて、まるで星空が地上に舞い降りたような空間に。

 そして次はスタッフが振る赤い誘導灯に合わせて、パッシングをピカピカッ。「ハイ次はもっと早くなりますよ~」なんて合いの手がとっても楽しく、一気にテンションがアップしたのでした。こういう風に、クルマを使ってみんなで盛り上がる時間って、やっぱりいいですね。娘もノリノリでした。

 今回の上映作品はディズニー映画の名作「ピノキオ」で、なんと1940年代の作品とのこと。家族全員、初めて観る映画でしたが、スクリーンの向こうに広がる夜空とともに、ファンタジーの世界を堪能することができました。

 特にいいなと思ったのは、上映中に娘が「今のはな~に?」「これはどういう意味?」と質問してきても、普通の映画館だと私語厳禁なので「シ~ッ」と黙らせてしまうところを、車内だと他の人たちに気がねなく「それはね」と教えてあげられるところです。

 あと、私はシートをいっぱいに倒して寝そべりながら見ていましたが、それも車内ならでは。クシャミをしても、モグモグと食べる音が響いても、周囲に迷惑がかからないのはいいですね。これなら赤ちゃんがいたり、ペット連れでも映画鑑賞ができると思います。

 ちょっと失敗したなと思ったのは、トイレです。駐車場なので簡易トイレが設置されているだけで、今回は和式タイプのみ。娘はこれまで洋式トイレしか使ったことがなく、夜で暗いこともあってかなり嫌がってしまいました。なんとか最後には使ってくれましたが、もっと小さなお子さんがいる場合は、ちゃんとしたトイレが近くにあるかどうか、事前に確認することをオススメします。イオンのように、ショッピングモールなどの駐車場で開催されるドライブインシアターなら、そうした心配はなさそうですね。

 さて終了後は、映画の余韻に浸りながら自宅まで夜のドライブ。これもすごくいいなぁと思ったことの1つです。なかなか新作映画は上映されないと思いますが、我が家はまた機会を見つけて、ドライブインシアターをリピートしそうです。

私はアボカドミートタコス、娘は辛くないキッズメニューのソーセージタコス、デザートに氷イチゴの練乳かけをゲット。車内にテーブルがなくて失敗したので、今度ドライブインシアターに行く時は、ちゃんとテーブルやお手拭きを準備して行こうと思います。会場には感染拡大防止の観点からゴミ箱がないので、各自でゴミ箱やゴミ袋も持参するといいですね

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z(現在も所有)など。