まるも亜希子の「寄り道日和」

スケートリンクで開催された氷上の電動カートレース

この「第1回 SDGs ERK on ICE 氷上の電気レーシングカートの祭典」の模様は、日本EVクラブの公式Webサイトで後ほど動画レポートがアップされるそうです。合言葉に「Stopクルマ離れ」があるように、子どもや若者にも運転の楽しさを伝えたい。でも環境への負担を大きくしてしまっては、子どもや若者の未来にも負担がかかってしまう。それならば、ゼロエミッションの電動カートで、天候に左右されず交通アクセスもよいスケートリンクで行なえば、すべての要素が叶えられるのではないか。そんなことからスタートしたこの新しいモータースポーツを、ぜひチェックしてみてくださいね

 夏が終わり、フィギュアスケートなどウインタースポーツに活気が出始めてきましたね。私も今年はいち早く、スケートリンクを走ってきました!

 むむ、スケートリンクを「走る」? いったいどゆこと? って感じですよね(笑)。

 実は今回、「Stopクルマ離れ」「Stop気候変動」を合言葉に、SDGsに対応した新しい氷上電気駆動スポーツの提案として、「第1回 SDGs ERK on ICE 氷上の電気レーシングカートの祭典」が開催! その舞台となったのが、ダウンコートなしではブルブルと震えてしまう、新横浜スケートセンターだったんです。

 いつもはきっと、この氷上を華麗に滑って舞うフィギュアスケーターで賑わっているはずなんですが、この日ばかりはまるで似つかわしくない、ヘルメットとレーシングスーツを着た大人たちがズラリ(笑)。

 というのも、本来は子どもたちの一般参加を募って開催するはずが、コロナ禍のために断念。その代わり、モータージャーナリストとメディアの編集者が2人1組となった8チームが、トーナメント形式のパシュートで競う、メディア対抗戦を無観客で行なうことに。私は「くるまのニュース」副編集長の金子さんと組んで参加してきたのでした。

開会式のチーム紹介では、まるでフィギュアスケーターがこれから演技に臨むように、スケートリンクへの入り口でご挨拶させていただきました。約5年ぶりに着たレーシングスーツも、入ってよかった(笑)。翌日は腕や足が筋肉痛になったので、いつか娘と一緒に走れるように、これからちゃんと筋トレと体力づくりに励みたいなと思います

 カートは大好きなので、もちろん目指すは優勝! なんですが、どのチームも俊足のベテランジャーナリストばかり。とくに強敵なのが、うちの夫・橋本洋平と佐藤編集長の「Tipo」チーム。パシュートはチームのどっちかが速くてもダメで、2人とも先にゴールした方の勝ちなんですよね。

 でも、サーキットに魔物がいるというように、氷上にも魔女がいました(笑)。ツルツルすべる氷の上を走るため、スパイクタイヤを履いている電動カートなんですが、練習走行ではまだみんな慎重なので、「お、けっこうグリップするじゃん」って安心しきったわけですよ。

これが、氷上でカートを走らせるため、日本EVクラブ代表の舘内さんが世界中を探して見つけたという、カート用のスパイクタイヤ。センター3列にピンが打ってあり、予想以上に氷の上でもグリップしてくれます。無茶をしなければ、誰でも安全に走って楽しめます

 モーターなのでアクセルオンと同時にフルトルクが出るため、うまくコントロールしないとパワーが出すぎて左右に振られたり、ブレーキも丁寧に踏まないとスピンしやすいのはわかってたんですが、本番になるとリキんじゃうものですね~。もう、トーナメント戦の1回目から、あっちでスピン、こっちでコースアウト(笑)。こりゃ、サーキットでカートが速いからといって、有利とは限らないぞと、のっけから誰が勝つかまったくわからない、面白い展開でスタートしたのです。

 そしてわがチームの初戦は、ベテラン2人が組む「ル・ボラン」チームとの対戦。金子副編集長はあまりカート経験がなかったのですが、これはミスなく手堅く走ればなんとかなるかもと、作戦会議。でもいちばんの心配は、オーバルコース3周のうち、最低1回は前走カートと後続カートが入れ替わらなければいけない、というルール。コーナリング中に入れ替わるのは至難の技だってことはわかったので、直線区間でなんとか、スムーズに入れ替わろうと約束して、いざスタート!

 ところがところが、私はスタートでアクセル全開にしすぎてタイヤが空転! 一気に出遅れちゃうわ、慣れてきた2周目で調子にのってハーフスピンするわ、前後の入れ替えもまったく予定通りにはいかないわで、ボロボロ。惜しくも負けてしまったのです~。

 でも大丈夫。今回のトーナメント戦は1回戦で勝ったチーム同士、負けたチーム同士が再び戦い、最後に両方の勝者が決勝戦を行なうという仕組み。私たちは1回戦の反省を活かして、2回戦の「EVスマートブログ」チームに勝利! 3回戦の「ドライバー」チームに勝てば、なんと決勝戦で夫婦対決ができるかも? という展開に。

 そして「ドライバー」チームにも勝利したんですが、そこで相手の電動カートが電欠していたという事実が判明し、審査員の協議の末、両チームの代表1名同士の一騎打ちで再レースをすることになってしまったんです~。って、相手は百戦錬磨の先輩ジャーナリスト、斎藤聡さんじゃ~ん(涙)。まぁでも、正々堂々と戦うのみ!

 ということで鼻息も荒く出撃した私。1周目はおおっ、互角だぞ、イケるいける! なんて思ったところで、リキみすぎて2回もスピン……。あえなく撃沈、ここで敗退となってしまいました。

 そして「ドライバー」チームが、決勝戦で「Tipo」チームを破って優勝! いやいや最後の最後まで、白熱した面白いレースに参加者もスタッフもかなり盛り上がっておりました。でも、どんなに速く走っても騒音も排気ガスも出ず、クリーンなところは電動カートならでは。それに、運転しているとすごく体感スピードはあるし、コーナリングは難しいしで筋肉痛になるくらいなのに、実際の速度は通常のカートと比べるとかなり低速なので、子どもからお年寄りまで安全に楽しめるところも、大きな魅力だと感じました。

ERK(Electric Racing Kart)こと、電動カートがこちら。通常のカートと違うのは、シートを挟んで左右にバッテリーが搭載されていることくらいで、スイッチを押せばスタート準備完了。アクセルを踏むと、音もなくバビュンッと鋭い加速を見せ、それだけでもワクワクさせてくれます。今回は4台のカートごとに速さの差があったため、どのチームがどのマシンに乗るかはくじ引きで決めていました。ただ、周回を重ねるごとにスパイクのピンが抜けてしまって滑りやすくなったり、バッテリーが弱くなったりで、結局のところどのマシンが有利だったのかは不明です(笑)

 今回も、念のためにスケートリンクの壁にクラッシュ対策のエアバッグが取り付けてありましたが、壁にぶつかった人は皆無。カート同士がぶつかるクラッシュもゼロで、これなら娘にもトライさせてみたいなと思ったほどです。

 ただひとつ難点は、寒いこと(笑)。ダウンコートを着て冬の格好をしていたんですけど、やっぱり長時間スケートリンクにいると全身が冷えきっちゃいますね。とくに、レーシングシューズが薄いこともあって足の裏がジンジンと冷えて辛かったので、今度は足裏用のカイロを貼っていこうと誓いました。

 そんな寒さ対策さえバッチリやれば、文句なしに面白くて年齢性別関係なしに楽しめる、氷上の電動カートレース。環境への負荷を最低限にしながら、運転の楽しさ、安全運転、モータースポーツの魅力など、いろんなことが伝えられる、まったく新しいスポーツの誕生だと実感しました。主催の日本EVクラブでは、ゆくゆくは日本全国のスケートリンクで開催して、シリーズ戦をやれたらいいなと考えているそうなので、ぜひ皆さんも今からチェックしておいてほしいと思います。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z(現在も所有)など。