まるも亜希子の「寄り道日和」

JAIA主催のイベントで印象深かったお話

こちらには360度ターンが大バズりしているGクラスのEVがデデーンと展示されており、大人気。試乗の申し込みもたくさんいただきました

 丸の内エリアにズラリと最新輸入モデルが並び、とても華やかになったイベント「JAIAカーボンニュートラル促進イベント in 東京」。これは世界最先端の電動化モデルの展示にはじまり、フォーミュラEのマシンや東京マラソンを先導する車両の展示、充電インフラ、バッテリ・リサイクルなどの事業者のブースなど、新しいライフスタイルの姿をまるっと見ることができる、おおがかりなイベントとなっていました。

 JAIAというのは日本自動車輸入組合のことで、今回はその会員企業のブランド、アウディ、BMW、BYD、ヒョンデ、ジャガー、メルセデス・ベンツ、MINI、ポルシェ、フォルクスワーゲン、ボルボ、マクラーレン、テスラとたくさんの出展があり、まるでプチモーターショー。いや、もはや旧東京モーターショーであるジャパンモビリティショーには輸入ブランドがほとんど出展していませんから、こちらの方が輸入車好きにはたまらない状態だったのではないでしょうか。無料だし、ぶらぶらと散歩しながら見られるし、会場は多くの人でにぎわっていました。

会場の1つであり、試乗プログラムの発着所となっていた丸ビルの屋外スペースは、ズラリと最新輸入モデルが並びました。これは早朝の写真ですが、お昼近くになるともうクルマが見えないくらいたくさんの人が見入っていましたよ

 2日間の開催のうち、1日はモータージャーナリストによる試乗プログラムがあり、私もインストラクターとしてお客さまを乗せてドライブさせてもらいました。まだ日本に登場したばかりのGクラスのEVも試乗車にラインアップしていたので、それにさっそく試乗させてくれるなんて、さすがJAIA主催のイベントですよね。私はBMWのiXやiX1、レンジローバー AUTOBIOGRAPHY P550eなどを担当したんですが、試乗コースがこれまたクルマのイベントとしてはなかなか珍しくて、丸ビルを出発して東京駅前をかすめ、皇居をぐるりと1周して戻ってくるという、東京観光ドライブのような楽しさ。私が担当したお客さまの中には、友人に会うために福岡から来てこのイベントを知り、EVに乗ってみたくて来てくださった方や、静岡からこのためにわざわざ来たという方など、遠くから来た方も多かったのでとても喜んでもらえてよかった!

 30分程度の試乗ですが、その間にいろんなお話が聞けるのもジャーナリストとしては貴重な機会。私の記事をよく読んでくださっている人もいれば(このコラムを読んでくださっている方もいてうれしかったです)、普段はまったくクルマの記事を読まないので、「BMWの社員の方ですか?」なんて聞いてくる方もいて(笑)、面白いんですよね。今回、すでに愛車としてEVが2台目で、近々3台目への乗り換えを検討しているという生粋のEVラバーのお客さまもいらっしゃって、海外でしか発売されていないEVの情報まで詳しくて感心しました。

 でもその方にいろいろ聞いていると、どうも日本メーカーのEVにはあまり関心を持っていない様子。日本は、10年以上前はEVの量産化で世界をリードしていたはずなのに、いつの間にこんなことになってしまったのか……。危機感を強めずにいられないですね。その方の意見では、家族を乗せても余裕のあるスペースがありつつ、それほど大きくないボディサイズで、往復400km程度のドライブくらいが安心して賄えるEVを探しているとのこと。確かにそうなると、輸入ブランドのEVの方がラインアップが豊富な気がします。MINIカントリーマンのBEVなんてうってつけかもしれないですね。

 そしてもう1人、印象深かったお話は、10年以上大事に大事に乗っているセダンがあるのですが、昨今の環境問題から自分もそれに貢献すべきではと考え、EVへの乗り換えを検討しはじめたものの、なかなか踏ん切りがつかないというお悩み。きっと、同じように感じている人は多いのではないでしょうか。その、踏ん切りがつかないいちばん大きな理由はなんですかと聞いてみると、航続距離でも充電インフラでもなく、「思い出」の大きさだというのです。働き盛りの頃に自分へのご褒美という気持ちもあって購入し、家族の一員のように過ごしてきた愛車。まだどこも壊れていないのに、それを手放してまで欲しいと思えるEVが残念ながらまだないのだと。その気持ち、わかるような気がします。

 そんなお話をしながらの試乗は、生の声を聞くことができる貴重な時間となりました。次世代モデルは地球のために必要なものでもありますが、普及を促進するためにはやはり、私たちの心を動かすべく進化を遂げていくことの重要性をあらためて実感したのでした。

充電インフラの紹介やパーソナルモビリティといった新しい移動のカタチをさまざまに見ることができるエリアもありました
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラス、スズキ・ジムニーなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSD。