まるも亜希子の「寄り道日和」

グッドデザイン賞の受賞会場へ

アイシン×立命館大学デザイン科学研究所の共同研究プロジェクトから生まれた「性被害やっつけたるわファミかるた」がグッドデザイン賞を受賞! おなじみ「Gマーク」のパネルの前で、企画者でありプロジェクトをまとめてきた立命館大学大学院経営学研究科の山田貴子さん(左)と、アイシンの鈴木研司シニアエグゼクティブアドバイザー(中央)、立命館大学副学長の徳田昭雄教授(右)がパチリ

 なにかを購入するときに、「グッドデザイン賞」受賞のマークがついてるとちょっと「私、いい買い物したな〜」なんて思っていたのですが。先日初めてお邪魔してきました! 東京ガーデンシアターで開催された、日本デザイン振興会が主催する「2024年度グッドデザイン賞 受賞祝賀会(大賞発表)」です。

 というのも、いつも交通安全応援プロジェクト「OKISHU(オキシュー)」とコラボさせていただいている、アイシンと立命館大学デザイン科学研究所の共同研究プロジェクトから生まれた、SNSに起因する子どもの性被害を防止するためのカルタ「性被害やっつけたるわファミかるた SNS編」が、なんとなんとグッドデザイン賞を受賞したんです! これはぜひ応援に(いや、取材に?)行かねばと駆けつけたというわけです。

 最初に訪れたのは、六本木にある東京ミッドタウン。今までぜんぜん知らなかったんですが、広大なミッドタウンの中の4つのフロアにわかれて、2024年グッドデザイン賞の受賞作品がすべて、5日間にわたって展示されているのです。今年のテーマが「勇気と有機のあるデザイン」ということで、今の社会に本当に必要なものは何かが考え抜かれた、優れた製品、サービス、プロジェクト、そしてもちろん様々なジャンルのプロダクト、建築、コンテンツまで。いや〜、すべて見るには時間が足りなさすぎました。入場無料なので、毎日通う人もいるみたいですね。

 そんな膨大な展示の中から、見つけましたよ。受賞カテゴリ「研究・開発手法」のところに、「性被害やっつけたるわファミかるた SNS編」のコンセプトや見どころ、完成までの道のり、その成果までわかりやすくパネルで展示されておりました。

 私は、このプロジェクトの中心となった立命館大学大学院経営学研究科の山田貴子さんをはじめ、経営学部の徳田ゼミ3回生の学生さんたちに、企画段階から完成までの間に何度かお会いし、経緯や大変だった点、難しかった点などのお話を聞いていたので、その努力がこうして大きく実ったことが本当に嬉しく、誇らしくもありました。また、この作品を選んでくださった、グッドデザイン賞の審査員の皆さまの鋭い眼識にも感服です。この共同研究を見守ってきたアイシンの鈴木研司シニアエグゼクティブアドバイザーは、これで終わりではなくここからまた社会に役立つプロジェクトに育っていってほしいと、引き続き見守っていく姿勢を見せてくれました。

東京ミッドタウンで5日間にわたり開催されていた「GOOD DESIGN EXHIBITION2024」には、すべての受賞作品が紹介されていました。「性被害やっつけたるわファミかるた」の目的や経緯、完成後の効果などがわかりやすくまとめられたパネルがありました

 ほかの受賞作品もざっと見てまわると、今年はクルマ関連ではブリヂストンの「REGNO GR-XⅢ」や横浜タイヤの「ADVAN dB V553」「GEOLANDAR A/T4」といったタイヤや、カーリースなどの新しい仕組みやユニークなパーソナルモビリティなどがたくさん受賞していました。

 さて、いよいよ受賞祝賀会の会場へ。まるでコンサートでも始まるのかと思うような幻想的なステージを前に、3階席までたくさんの参加者が詰めかけています。さすが、1957年から続く、日本を代表する世界的なデザイン賞ですよね。審査委員長の齋藤精一氏をはじめ、審査副委員長の倉本仁氏、永山祐子氏といった方々のお話では、今年は5773件の応募の中から、1579作品が受賞したとのこと。受賞作品たちはどれも、まず「絶対に実現するんだ」という諦めなかった力があり、そのあとに周囲を巻き込む力、そして巻き込まれる方の力(これを巻き込まれ力と呼んでいるそうです)が存分に発揮されていたのではないか、との見解が語られました。

2024年度の受賞作品は1579作品ということで、受賞者とプレスのみが参加できる「2024年度グッドデザイン賞 受賞祝賀会(大賞発表)」は大賑わい。ステージではトークセッションが行われ、ためになる話も聞けてとてもいい経験をさせていただきました

 多岐にわたるジャンルの作品が受賞しているのは、「コト」と「モノ」を分けるのではなく、「コトの周りにモノがあり、モノの周りにコトがある」という考え方からなのだそう。確かにそうだなと、クルマの周りに人や社会があり、それがどんどんつながっている今と重ね合わせて聞いていたのでした。

 この「性被害やっつけたるわファミかるた」も、子どもの性被害にまつわる問題は、どうも「気まずい」とか「扱いにくい」と目を背けがちだけど、大人や社会が自分ごとと考えて、大人と子どもで一緒に遊びながら学ぶきっかけになったり、問題意識を共有できたらという気持ちで企画されたもの。学生たちも最初は戸惑っていたそうですが、徐々に積極性が生まれ、性被害の現状を調べたり、そこから課題解決に向けて議論したり。50音の句と絵札のイラストを何日もかけてアイディアを出し合い、取捨選択をして完成させたのだそうです。

 そしてそれを、今度はアイシンの技術のプロたちがかるたとして制作。すでに、地域の防犯イベントなどで子どもたちに体験する機会を設けており、私もその会場にお邪魔しましたが、みんな「面白かった」「大人と子どもが一緒に学べていい」と好評だったんです。今回のグッドデザイン賞の受賞報道から反響が大きくなり、「欲しい」「販売してほしい」といった声が続々と届いているそうで、アイシンは個人や営利団体の希望者に実費(1000円程度)を負担していただく形での提供を決定。公共機関など子どもの性被害防止活動に賛同し、啓発活動を目的とした使用者には無償での提供を行うそうです。これを機に、もっと広まるといいなと思います。

 さて、グッドデザイン賞にはすべての受賞作品の中から最も優れていると認められた1件が「グッドデザイン大賞」に選ばれるのですが、2024年度は(株)ジャクエツの「遊具研究プロジェクト」が受賞。障がいの有無にかかわらず、誰もが遊ぶことができる遊具の開発を医療と遊具の分野を超えて実現した「RESILIENCE PLAYGROUNDプロジェクト」で、確かにこれは素晴らしい取り組みですよね。

 そして今年度より、先ほどの東京ミッドダウンのエキシビジョン来場者やほかの受賞者たちの投票によって決まる「みんなの選んだグッドデザイン」がスタート。社会福祉法人聖救主福祉会/NPO法人地域で育つ元気な子/JAMZAの「多世代共生の複合型福祉施設 深川えんみち」が選ばれました。これは高齢者デイサービス、学童保育クラブ、子育てひろばの3つの事業からなる複合型施設だそうで、さまざまな交流が生まれそうなところがステキ。こうして、見にいっただけでたくさんの気づきや刺激をもらったグッドデザイン賞でした。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラス、スズキ・ジムニーなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSD。