2013フランクフルトショー
トヨタ、420HPを発生する次世代モンスターホットハッチ「ヤリス・ハイブリッドR」
TMGが開発した1.6Lターボエンジンと、インホイールモーターを含む3つのモーターを搭載
(2013/9/13 20:56)
世界で初めて「ハイブリッド」モデルを実用化したトヨタ自動車。その後、さまざまな自動車メーカーがハイブリッドモデルの開発を進めているが、「ハイブリッドの先駆者」として、新たな提案をフランクフルトショーで公開した。
トヨタは現在、WEC(世界耐久選手権)にハイブリッドシステムを搭載したレーシングカー「TS030」で参戦しているが、このモータースポーツで培った技術を市販車にフィードバックしたモデルが、今回お披露目されたヤリス・ハイブリッドRである。これまで、トヨタのハイブリッドシステムは燃費向上やCO2排出量の低減と言った、環境性能の向上がメインテーマであったが、このモデルには「走る楽しさ」を付加させたと言う。
開発は、ドイツ・ケルンにあるトヨタの欧州モータースポーツ拠点であるTMG(トヨタモータースポーツ)とベルギー・ブラッセルにあるTME(トヨタモーターヨーロッパ)によるものだ。
ベースはコンパクトハッチバックである「ヤリス(日本名:ヴィッツ)」。会場にいた関係者に「なぜ、スポーツカーではなくヤリスなのか?」という質問をしたのだが、その答えは「軽量ボディーである必要があった」とのこと。やはりハイブリッドシステム搭載による重量増があるため、トータルウエイトはできるだけ抑えたかったのだろう。
注目のパワートレーンはTMGが開発した1.6リッターターボエンジン「GRE(グローバル・レース・エンジン)」。最高出力は300HP/6000rpm、最大トルクは420Nm、最高回転数は7500rpmというスーパーユニットだ。FIAレギュレーションにあわせて開発され、WRC(世界ラリー選手権)やWTCC(世界ツーリングカー選手権)、F3(2.0リッターバージョン)での使用を想定しているユニットとなる。
ちなみにヤリス・ハイブリッドRはエンジンで前輪を駆動させるが、後輪には何と最大出力60HPのインホイールモーターを2個搭載する「e-4WDシステム」を採用する。もちろん、加速時にはアシスト、減速時には回生を行う。左右のモーターは独立制御されているので、次期「NSX」のようなトルクベクタリング機能も可能だ。さらにエンジンと6速シーケンシャルトランスミッションの間には3つ目のモーター(60HP)があり、発電機とトランクションコントロールとして作用する。
ステアリングにはスイッチが用意され、後輪モーターの使用出力をロードモード(40HPで10秒間)とトラックモード(120HPで5秒間)をセレクトすることが可能だ。リアシート部に配置される二次電池は、バッテリーではなくスーパーキャパシターを使用しており、これはTS030の技術をフィードバックした部分と言えよう。現状ではサイズの問題もあり、2シーター仕様となっている。
つまり、見た目はちょっとスポーティなヤリスになのだが、中見はエンジンとモーターのトータル出力で何と420HPを発生するというモンスターマシンなのだ。さすがにパワーユニットとハイブリッドシステム搭載のため、ボディーは各部が強化されている。
エクステリアは、専用のフロントマスク(ホワイトとブルーのコーディネイト)に、18インチのTRD製ホイールとミシュランパイロット・スポーツCUPの組み合わせ。インテリアはレカロ製のバケットシートが用意される。
コンセプトカーのため市販化の予定は未定だが、今後も開発は進めていくようだ。もし市販されるなら、日本のGRMNも驚くスーパーヴィッツの誕生である。