東京モーターショー2015

シトロエン、2017年日本導入予定のコンパクトSUV「C4 CACTUS」を初公開

発売1周年記念限定の7シーターMPV「GRAND C4 PICASSO 1st Anniversary」など展示

2015年10月30日~11月8日一般公開

日本初公開となるコンパクトクロスオーバー「C4 CACTUS」「GRAND C4 PICASSO 1st Anniversary」が並ぶシトロエンブース

「第44回東京モーターショー2015」で、シトロエン(プジョー・シトロエン・ジャポン)は、コンパクトクロスオーバー「C4 CACTUS」(欧州仕様車)を日本初公開した。あわせて2014年10月の発売から1周年が経過することを記念した限定車の7シーターMPV「GRAND C4 PICASSO 1st Anniversary」と、パワートレーンとデザインを刷新した「C4 Seduction Upgrade Package」の計3台を西1ホールにて展示している。

 10月28日に行われたプレスカンファレンスでは、2014年6月からシトロエンブランドのCEOに就任した、リンダ・ジャクソン氏が来日して出展モデルの紹介をした。

 リンダ・ジャクソン氏には、カンファレンス後に単独でインタビューができたので、記事後半にて掲載している。ぜひ読み進めてほしい。

展示車を紹介するシトロエン CEO リンダ・ジャクソン氏

C4 CACTUS(市販予定車)

C4 CACTUS

 C4 CACTUSは、2014年3月のジュネーブモーターショーで初公開され、その独創的でカラフルなデザインが大きな話題となったコンパクトクロスオーバー。日本導入予定を2017年としている。価格は未定。

 ボディーサイドやリアの角、ヘッドライト下などに設置した「エアバンプ」と呼ばれる車体保護アイテムや、バンパーやオーバーフェンダーが未塗装の成形色であしらわれ、デザインのアクセントになっていて、シトロエンのテーマでもある「BOLD(大胆)」「OPTIMISTIC(楽観的)」を表現するモデルとしている。このデザインにより、ワールドカー・デザインオブザイヤー2015を受賞している。室内も「旅すること」をテーマにした、独特の楽しげなデザインに仕上がっている。

ボディーサイドのエアバンプ。押すと弾力がある
エアバンプの厚み
ヘッドライトまわり。ここにもエアバンプがある
ヘッドライトのアップ。ハロゲンとLEDが分離したデザイン
リアコンビネーションランプはシンプル。下にエアバンプがある
ピラーとサイドミラーが塗り分けられている
リア側もピラーが塗り分けられている
ルーフレールが備わる。屋根はリア部分がオーバーハングしたデザイン
ルーフレール先端の詳細
独特なデザインのホイール
タイヤはグッドイヤー EfficientGrip。サイズは205/50 R17
「CACTUS」エンブレム。樹脂に埋め込まれている
リアドアのウィンドウは、最近では珍しくなったポップアップさせる開閉方法
C4 CACTUSとキャンペーンガール

 展示車のパワートレーンは、欧州仕様の直列3気筒1.2リッター「PureTech」エンジンと5速ETGの組み合わせだが、2017年の日本導入モデルでは、トランスミッションが「EAT6」の6速ATになる。最高出力60kW(82PS)/5750rpm、最大トルク118Nm/2750rpmを発生する。シトロエンの先端技術を実用化し、車重1t前後という軽量ボディーに収めている。

インパネまわりも「旅すること」がテーマの独特なデザイン
ハンドルまわり。メーターパネルがあまり見ない板状のデザインになっている
シフトがボタンになっていてシンプルな作り。USBコネクタが見える
ダッシュボードを助手席側から見たところ
グローブボックスはフタが上に開く。右のレバーが開閉ボタン。サイズは余裕がある
グローブボックス内にもUSBポートが用意されている
ドア内側のアームレスト周辺。取っ手のバンドが特徴的
パノラミックガラスルーフが開放的
ラゲッジスペースは十分な広さ

GRAND C4 PICASSO 1st Anniversary(市販車)

GRAND C4 PICASSO 1st Anniversary

 C4 PICASSOは2014年10月から販売され、日本でのミニバンクラスに該当することもあり好評を博している。この1周年限定モデルとして、上級グレードの「Exclusive」をベースにしたアニバーサリーモデル。大型ヘッドレスト、助手席電動カーフレストを備えたハーフレザーシート、電動テールゲートといった装備を追加した「GRAND C4 PICASSO 1st Anniversary」を会場に展示。

ヘッドライトまわり。LEDが分離したデザイン
ヘッドライトのバイキセノンは2トーン処理
リアコンビネーションランプはクリアな3Dデザイン
ピラーからルーフレールにかけて流れるように繋がっている
ワイパーは中央から左右に広がって拭くタイプ
17インチアロイホイール。タイヤはミシュラン Primacy HP。サイズは205/55 R17
「PICASSO」エンブレム

 7シーターのGRAND C4 PICASSO 1st Anniversaryを120台限定、5シーターのC4 PICASSO 1st Anniversaryを50台限定で販売する。価格はGRAND C4 PICASSO 1st Anniversaryが390万円、C4 PICASSO 1st Anniversaryが370万円。

 パワートレーンは、1.6リッターターボチャージャー付き直列4気筒DOHCエンジンと6速AT。最高出力121kW(165PS)/6000rpm、最大トルク240Nm/1400-3500rpmを発生する。

インパネまわり。メーターパネルはセンター。12インチパノラミックスクリーン
ステアリングには各種コントロール機能のボタンが多数。シフトレバーはコラム式
ピラーの三角窓は大きめ。エレガントなデザイン
電動サンブラインド付パノラミックガラスルーフ
3列目席から前を見る
2列目と3列目の座席は収納できる
3列目席がある場合のラゲッジスペース。これを畳めば広くなる
リアゲートを閉めるのは電動
ラゲッジスペースにもシガーソケットが備わる

C4(市販車)

新型「C4」

 パワートレーンを直列3気筒1.2リッターの「PureTech」エンジンと6速ATの「EAT6」に変更し、新たなデザインのLEDランプを組みこんだヘッドライトにフェイスリフトしたハッチバックの新型「C4」もブース奥に展示されている。この「PureTech」エンジンは、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー2015を受賞している。

新デザインのヘッドライト。LEDによる縁取りがアクセント
リアコンビネーションランプも3D視覚効果のある新デザイン
17インチアロイホイール。タイヤはミシュラン Primacy HP。サイズは225/45 R17

 17インチアロイホイールやパノラミックガラスルーフ、スマートキーシステムなどを含む「Seduction Upgrade Package」装着車で、価格は296万円。標準の「Seduction」は276万円。こちらは9月に発売が開始されている。

C4のインパネ。オーソドックスな落ち着いたデザイン
運転席。ステアリングにはコントロールボタンが多数配置されている
1DINスペースにオーディオを装備。近年DINボックスが用意されなくなってきているので貴重
開放感の高いパノラミックガラスルーフはUpgrade Packageに含まれる

シトロエン CEO リンダ・ジャクソン氏インタビュー

インタビューに気さくに応じてくれたシトロエン CEO リンダ・ジャクソン氏

 ここからは、シトロエン CEO リンダ・ジャクソン氏にカンファレンス後、出展モデルなどについて伺うことができたのでその様子をお伝えする。とても気さくな女性CEOで、笑顔をまじえ終始和やかに話を進めた。

──C4 CACTUSから伺います。独創的なデザインで楽しいクルマだと思います。このようなクルマを日本でも発売予定としていただけて嬉しいです。

ジャクソン氏:私もです。すてきなクルマでしょう!

──C4 CACTUSは、欧州ではすでに販売が開始されています。評判はいかがですか?

ジャクソン氏:とても順調です。まず2014年6月にフランスでローンチし、9月にドイツ、10月にイギリスと順次発売していき、今のところトータルで11万台売れました。目標は到達しています。元来、C4 CACTUSはヨーロッパのためだけに作られました。それが人気に火が付きまして、販売を拡大しています。日本でも2017年に発売予定ですし、オーストラリアでも発売していきますので、人気が世界中に広がっています。

──それはすばらしい状況ですね。

ジャクソン氏:C4 CACTUSは、シトロエンのブランドを語る上でもとても重要な位置にいます。日本でも人気の高いC4 PICASSOの延長線上にありながら、クリエティブなデザインで他社とはまったく異なるものを出していく、という特徴を持っています。

──デザインによる違いは一見して判別できますが、同じPSAグループから出ているプジョーのSUVである2008との差別化ポイントはどこにありますか?

ジャクソン氏:プジョーとは違うお客様を対象にクルマを作っていると言えます。シトロエンで目指しているのは、クルマを作るときにまずデザインを重視することです。とても目立つ、ほかとは異なる特徴的なデザインを目指します。シトロエンはプジョーとまったく異なるデザインの指向を持っていると思います。また、快適性に対するデザインのアプローチでは、単にサスペンションやシートの快適性だけではなく、スペース(空間)をより広く快適にするという考えがあり、グローブボックスの位置、ストレージスペースといった収納スペースを含め工夫します。異なるアプローチです。ところで、快適性についてサスペンションの話をしました。ハイドロニューマチック・サスペンションはシトロエンが発明したことで有名ですが、このサスペンションに換わる新しいテクノロジーを開発中です。シトロエンのフィーリングがよりよくなり、効率もよく燃費も高まるでしょう。トップレンジのC5だけでなく、すべてのレンジに適用していきます。

──その新しく置き換えられるサスペンションは、シリーズすべてのモデルに採用を考えているのですか?

ジャクソン氏:そうです! すぐにではないですが。シトロエンにとっては特徴的な要素になると思っています。このサスペンションと、先に述べた快適性をあわせて追求していきます。

──SUVはトレンドになっていると思いますが、日本でもバリエーションを増やしていきますか? たとえば、コンセプトカー「CACTUS M」のようなオープンモデルとか。

ジャクソン氏:CACTUS Mはショーの評価を把握したいために純粋にコンセプトカーとして作ったものです。商品化は考えていませんが、とても興味深いコンセプトだと考えています。現在商品計画を練っているところです。日本での販売台数は、2014年に比べ50%以上増加しています。これからの4年間でさらに2倍に持って行きたいと考えています。これを実現させるため、ニューモデル投入とディーゼルエンジン導入、そしてディーラー網を育成、強化していくという3点を考えています。

──ディーゼルの話題が出ましたので、少し今後取り組んでいく環境対策についてお話し願えますか?

ジャクソン氏:エンジンや重要な技術の開発については、PSAグループの3つのブランドにて共通して行います。新先代エンジン「PureTech」、ディーゼルとしては「BlueHDi」を開発しています。ディーゼルに関しては、今後日本に導入します。EVに関しては、現在戦略を開発中です。すでにヨーロッパでは、「C-ZERO」(三菱自動車工業 「i-MiEV」ベース)とBerlingo(ベルランゴ) Electricが販売されていますが、これを広めようと戦略を立てています。そして、3ブランド共通のPHEV戦略も作成中です。

──GRAND C4 PICASSOは7人乗りで、日本ではファミリーに人気のミニバンのユーザーが目をとめるのではないかと思います。発売から1年間経って反響はいかがでしたでしょうか。

ジャクソン氏:昨年の発売以来ベストセラーとなっています。明らかに日本のお客さまにウケているということだと思います。C4 PICASSOは、まさにシトロエンが重要な柱としている「Feel Good(快適性)」の要素を具現化したモデルです。MPVセグメント(日本ではミニバンにあたる)では快適性の基準を打ち立てていると思います。

──特に今回発表の「GRAND C4 PICASSO 1st Anniversary」は、お買い得感も高いと感じます。さらに人気が高まるのではないでしょうか。

ジャクソン氏:そのようになることを願っています(笑)。

──C4 CACTUSのポップでアバンギャルドなデザイン、C4ではライトのエレガントなLEDデザインなどにフランス車らしさを感じますが、フランス車を未経験の読者に、分かりやすくシトロエンがこだわる「フランス車らしさ」を教えてください。

ジャクソン氏:まず重要なのは、シトロエンの歴史です。96年前に創立し、現在までの間にとても象徴的な車種を作りあげてきました。「トラクシオン・アヴァン」(※1)であり、「2CV」(※2)であり、C4 PICASSOなど人気車種を作ってきました。「People carrier」というコンセプト自体、我々が生み出してきたものです。成功したのは、他社には類を見ない、まったく異なるデザインという特徴があるからです。作ろうとしているのは、フランスが得意とするデザイン、クリエイティビティ(創造性)の要素が強調された製品です。このクリエイティビティの要素は、とても重要だと思っています。クリエイティブなデザインのクルマを見かけると、すぐにシトロエンだと分かるようにしたい。直線的なデザインではなく、曲線美やフロー(流れ)を大事にしてデザインしています。

──曲線美を持つクリエイティブな刺激のあるデザインのクルマということですね。

ジャクソン氏:インテリアのほうでは、素材選びに神経を使っています。DSのようなパリ発の高級感とは違った意味での素材選びをします。シトロエンでは、実用性はあるけれども、とてもステキに見える、たくさんの色を使ったカラフルな素材を選んでいます。カラーはとても重要です。C4 CACTUSのエアバンプのように、明るい色にスポットで違う色を使ったりするだけで活き活きとしますし、個性を加えることができます。色はとても重要なのです。

──C4 CACTUSでの色の塗り分けは、とても特徴的です。

ジャクソン氏:そうです。ユニークなアプローチだと思っています。

──最後に、日本の自動車ファンに向けて、シトロエンが目指すクルマ作りや、日本向けに考えているサービスがあれば、ひと言お願いいたします。

ジャクソン氏:クルマに関してですが、将来4年間で2倍の販売台数を目指すにあたっては、今のラインアップから、新しいモデルをどんどん投入してしていく必要があります。それらは、C4 CACTUSスピリットの延長線上で考えています。デザインであり、圧倒的な快適性であり、お客さまの役に立つテクノロジーを応用することです。サービスでは、お客さまの体験を大事にしたい。たとえば、サイトにアクセスしたときの使いやすさなど、イノベーティブなサービスの工夫をしていきたいと思っています。ディーラーで受ける体験が、ストレスのない快適なものになるようにしたいと思います。クルマのドアを開け、入って、「ホッ」とひと息リラックスしてもらう。それが理想的です。

──フランス車の新車では、なぜか不思議にくつろげる独特の香りがしてくるんです。

ジャクソン氏:そうそう(笑)。本当にその通りなんです。なぜでしょう!

──ぜひ、読者にも体験してもらいたいですね。たいへん、ありがとうございました。

※1:1934年に発売された世界初の量産前輪駆動車。広い室内と低重心が特徴。フランス語で「前輪駆動」の意味。1957年まで20年以上生産された。
※2:1948年に発表され、40年以上約387万台が生産された世界的ベストセラーモデル。フランスの国民車のような存在。2CVは2馬力の意味。現在でもファンがいる。

村上俊一