北京モーターショー2016

【インタビュー】マツダ「CX-4」の岡野主査に聞く

世界に通用する面白いクルマができると思った

 先日の北京モーターショーで初公開されたマツダ「CX-4」。マツダいわくCX-4のコンセプトは「Exploring Coupe」だそうで、そのままの意味で解釈すれば「探求するクーペ」となる。これまでにないクーペルックなSUVとして登場したこと、どのようなターゲット層に向けて発売するのかなど、開発主査を務めた岡野直樹氏に聞いてみた。

――まずはCX-4の開発の狙いについて聞かせてください。

マツダ株式会社 商品本部主査 岡野直樹氏。1992年にマツダに入社し、技術研究室にて水素ロータリーエンジンの開発に従事。その後、企画設計部にて量産車基礎設計を行ない、シャシー開発部でも量産車の開発を担当した。2010年には商品本部に異動し、初代「CX-9」の開発主査を務め、2012年から今回発表された「CX-4」の開発主査となった

岡野氏:CX-4は、(CX-5から始まる)新世代商品群の販売がスタートした4年前から企画しました。その当時は、そろそろ中国をベースにしてクルマのコンセプトを立てても面白いのができるんじゃないかと思っていて、CX-4の開発が進むなかで、中国をベースにしながら結果的には世界に通用するコンセプトや開発内容になるなという予感がありました。

 4年前を振り返ると、中国市場もセダン主体であったりと現在とは違っていました。今はSUVがこれだけ流行っていますけど、そんな市場でインパクトある新しいことができないかとコンセプトを練ってきました。完成したCX-4を見ると、かなり先端なところにいっているので、面白いものが作れそうな予感は当たったと思います。

――そうすると、CX-4は中国市場を意識していたということでしょうか。

岡野氏:中国で発売するということをファースト・プライオリティにしてきました。なので、今回の北京モーターショーをお披露目の場としました。中国とグローバルの両方を視野に入れていたかというと、当初はそこまでは入れていませんでした。だけど、結果的には、中国に同期すれば世界的にもマッチするかなという予感もあったので、当時の判断は正しかったと思っています。

――4年前というとCX-5が出たのが2012年ですね。マツダでは「一括企画」という概念で開発していますが、CX-4もCX-5の派生モデルとして当初から計画されていたのでしょうか?

岡野氏:そこはお答えしづらいのですが、マツダが「一括企画」を採用することで、ユニット、コンポーネントの生産の精度、性能がすごく高まっているということは言えます。CX-4ではこれを上手く利用できたので、非常に効率的に開発と生産ができました。

 しかも、既にグローバル展開しているベースがあるモデル以外で、新規に中国で現地生産を立ち上げるというのはマツダとして初めての取り組みになります。新規モデルを中国で生産スタートするのは、他メーカーでも珍しいのではないでしょうか。

 そういった状況でしたが、発売のタイミングも狂わず、品質的にも問題なく生産体制が整ったのは、すでに一括企画のモデルである「マツダ6(アテンザ)」を現地で生産していた経験の影響が大きいです。(ユニット、コンポーネントは)かなり作り変えましたけど、そのベースポテンシャル、完成度があったので、こんな離れ技ができたと自負してます。

――中国市場ではSUVモデルが凄く伸びていて若い世代が買っていますが、CX-4のターゲット層はどこに置いてますか?

岡野氏:若い人もターゲットの1つですが、私たちが考えているのは年齢、ライフステージということで切るのではなくて、価値観で切っています。家族との時間、公共性を重視するというよりは、もっと個人の生活の質を重視する、そういう人であれば、感度が合うのではないかと思っています。

 実際の家族形態としたら、独身、カップル、子どもが小さいファミリー、エンプティネスターで気持ちはまだまだ元気というような人、SUVや大きなセダンをファーストカーで持っていて奥さんがセカンドカーとして乗る場合もあるでしょう。使い勝手よりも価値観で狙おうとしているんで、CX-9、CX-5、CX-4というネーミングのヒエラルキーは全然ないです。違う価値観を持ったオーナーを押さえていきたいですね。

――CX-4は具体的なライバルを設定しているのですか? このセグメントだとプレミアムメーカーにクーペルックなモデルが存在しますが。

岡野氏:少なくとも価値的、車系的なポジショニングとして挙げています。あるいはもっと小さいクラスだとメルセデス・ベンツの「GLA」も同じ価値観だと思います。ですが、直接的な競合を挙げるのは難しいです。今、SUVやセダンを所有している人や、「パサート CC」や「ラマンド」などを検討している人が、よく考えたらCX-4も検討材料になるとクロスショップしてもらえると期待しています。ハードウェアとして見た場合は、ベンチマークになるかなと感じています。

――まずは中国デビューとなったわけですが、日本国内にも導入してもらいたいという声があります。グローバル展開をもちろん考えていますよね?

岡野氏:今は検討中としか言えません。グローバルに出すとなると、中国で生産して出すというわけにはいかないので生産地を移す必要もあります。当然、規制も変わってくるので、パワートレーン展開も変えないといけないでしょうし、かなりの投資が必要になるので色々と検討して議論を行なっています。


 マツダのラインアップとしては、これまでになかった中国生産で中国デビューとなるCX-4。活気のある中国市場で販売することを第一に考えることで、グローバルモデルとは異なるアプローチができたというように、内外装ともに存分に個性を主張できるモデルだといえる。

 ただ、その個性や価値観は中国だけのものではなくグローバルでも支持されるに違いない。なぜなら、マツダの快進撃を支えてきた新世代商品群の概念や開発、生産ノウハウを十分に取り入れることができているからに他ならない。現行ラインアップの中でもっとも完成度が高く、次世代モデルとの架け橋となるのがCX-4の役目であり、その期待に十分応える素性と性能を併せ持つといえる。

真鍋裕行

1980年生まれ。大学在学中から自動車雑誌の編集に携わり、その後チューニングやカスタマイズ誌の編集者になる。2008年にフリーランスのライター・エディターとして独立。現在は、編集者時代に培ったアフターマーケットの情報から各国のモーターショーで得た最新事情まで、幅広くリポートしている。また、雑誌、Webサイトのプロデュースにも力を入れていて、誌面を通してクルマの「走る」「触れる」「イジる」楽しさをユーザーの側面から分かりやすく提供中。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。