CES 2017

NVIDIAとアウディが共同開発するAI自動運転車「Audi Q7」に乗ってみた

1つのカメラ、1枚のAIコンピュータ「DRIVE PX 2」でレベル3自動運転

NVIDIAとアウディが共同開発するAI自動運転車。AIコンピューティングにはディープラーニングのテクノロジーが使われている

 NVIDIAと独アウディは1月4日(現地時間)、米ラスベガスで開催されている「CES 2017」の会場において、2020年の路上走行実現に向けて最先端のAI搭載自動車の共同開発を進めると発表した。

 その共同開発を具現化した自動運転車両の試乗会をNVIDIAが行なっていたので、試乗することにした。と言っても、自動運転車なので自分でステアリングを握るのではなく、後部座席に座って自動運転のデキを確かめるというもの。

 NVIDIAは自動運転デモ用に特設コースをCES会場に作成。変形8の字コースで、2周ほど外周を回り、次の周にコースを遮る標識を設置。その標識を認識して小回りするというものだ。

 驚異的なのは、このAI自動運転を1つのカメラと、1枚のAIコンピュータ「DRIVE PX 2」で実現していること。特設コースにはSUVのためか荒れ地が設定されていたが、そこもなんなくコーストレースし、不安もない。

 これまでCESにおいて、いくつかの自動運転車に試乗(もちろん、後席や助手席)してきたが、このアウディ車の凄いところは、ステアリング操作が実にスムーズなこと。これまでの自動運転車の場合、どうしてもステアリング操作やアクセル操作がぎこちない部分もあり、認識→判断→操作→運動という一連のループを考えると、仕方のない面もあったと理解していた。

 ところが、このアウディ車は一般的なドライバー並のスムーズな自動運転を行ない、突然現われる標識においてもぎくしゃくした部分もなく、コース変更をしていく。

 その動きは、外からの映像と中からの映像を見てもらえれば実感してもらえると思う。

アウディ車のAI自動運転。標識設置後のコース変更に注目。撮影カメラも結構ワイド系なのだが、スムーズにコース変更をしていることが分かる。ちなみに途中ガタガタしているのは、ラフロードが設定されているため。ラフロードによるコースミスもない
アウディ車のAI自動運転。標識設置後のコース変更が見所

 そしてリアゲートを開けると、さらに驚愕の光景が広がる。これまでの実際に動作する自動運転車では、ラゲッジルーム一杯にPCなどが積まれており、それらのPCのパワフルなコンピューティングパワーで認識→判断→操作→運動というサイクルをリアルタイムにこなしていた。参考までに、2015年のCESで登場したアウディの自動運転車「Jack」のラゲッジルームの写真も掲載しておくが、ラゲッジルームに1枚のAIコンピュータ「DRIVE PX 2」しか載っていないのは、本当に驚異的だ。

AI自動運転を実現してる機材。これだけ。中央部がAIコンピュータ「DRIVE PX 2」
AIコンピュータ「DRIVE PX 2」が見える。ツインファンで冷却しており、右はAIコンピュータ「DRIVE PX 2」を駆動するための安定化電源だと思われる。驚愕の風景
NVIDIAのブースに展示されているAIコンピュータ「DRIVE PX 2」
参考までに2015年のCESに登場した自動運転車「Jack」。アウディの最新車だったが、ラゲッジルームはこのような状態。2年でボード1枚になるとは、想像もしなかった

 実際にレベル3の自動運転車が社会で走り出すためには、さまざまな法規制の問題などがあるだろうが、これだけの能力を持つ自動運転機能がドライビングをサポートしてくれるのであれば、レベル2自動運転として早期の導入を期待したいところだ。

こちらは走行デモ会場の横でお休みしていたNVIDIAの自動運転車「BB8」。アウディ車と交代でデモを行なっているとのこと
BB8には各種センサーが取り付けられていた

 NVIDIAのCEOであるジェンスン・フアン氏は、インタビュー記事(AI自動運転時代の鍵を握る、NVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏に聞く)において、「AIカーを実現できるソリューションを提供済み、他社に数年先行している」と語っている。アウディの自動車に関する深い運動解析、NVIDIAの強力なAIコンピューティングパワーが実現した、驚きの自動運転車だった。