【第2回】自動車保険の種類 保険の自由化で生まれた2種類の任意保険 |
保険の基礎知識、2回目は自動車保険の種類について。ご存知のとおり、自動車保険と言っても、大きく分けて2つある。1つが自賠責保険、そしてもう1つが任意保険だ。
加入が義務づけられる自賠責保険。写真は毎年3月に実施する広報キャンペーンポスターのもの |
任意保険がその名のとおり義務ではなく任意なのに対し、自賠責保険はクルマで公道を走るうえで加入が義務づけられているもの。車検取得の際には、その期間をカバーする自賠責保険の提出を求められるし、臨時運行許可(仮ナンバー)を取得する際にもやはり提出が必要となる。自賠責保険に加入していなければ仮ナンバーでさえ公道を走ることができない仕組みになっている。
この自賠責保険は、国が被害者保護の観点から、被害者が最低限の補償は受けられるようにと作ったもの。そのためいくつかの保険会社が取り扱うが、会社によって補償の内容と保険料に差が出ることはない。ちょうど今年の4月に値上げされ、現在自家用乗用車を2年契約した場合で2万4950円となっている。
しかし、自賠責保険はあくまで最低限の補償のため、補償内容としては十分とは言い難い。具体的に見ていくと、まず自賠責保険は対人保険であり、クルマやガードレールといった物損に対する補償は一切出ない。またドライバー自身の怪我などもカバーされない。さらに支払い限度額も、被害者1人に対し、死亡で3000万円、介護を要する後遺障害で4000万円、傷害で120万円まで。たとえば後遺症傷害の賠償では3億円を超える損害額が請求されたケースもあり、対人補償に関しても、自賠責保険だけで完全にカバーできないケースはある。自賠責で補いきれなかった額や、物損などは自己負担となるので、義務ではないとは言え、それらを補う任意保険への加入は絶対と言えるだろう。
対人賠償の高額例
認定総損害額 | 判決日 | 職業 | 年齢・性別 | 被害状況 |
3億8281万円 | 2005年5月17日 | 会社員 | 29才・男性 | 後遺障害 |
3億7886万円 | 2007年4月10日 | 会社員 | 23才・男性 | 後遺障害 |
3億6750万円 | 2006年6月21日 | 開業医 | 38才・男性 | 死亡 |
3億5978万円 | 2004年6月29日 | 大学研究科在籍 | 25才・男性 | 後遺障害 |
3億5332万円 | 2006年9月27日 | アルバイト | 37才・男性 | 後遺障害 |
■2種類ある任意保険
自賠責保険が保険料も補償限度額も一律なのに対し、補償の内容を自由に選べ、それによって保険料も変わるのが任意保険だ。しかし実は15年ほど前までは、任意保険も内容や条件が同じなら保険料も横並びだったのだ。それが、1996年に日米保険協議が決着し、1998年に自動車保険が完全に自由化されたことで、現在のように保険会社が独自で特約や料率を設定できるようになり、価格やサービスでの差が出せるようになったのだ。
自由化によってもう1つ変わったことが、保険の販売形態だ。以前は代理店による販売のみだったが、通信販売が認められるようになった。それによって、従来のディーラーなどで販売する代理店扱いの他に、電話やインターネットによって保険会社とユーザーが直接契約を結ぶ直扱い(通販型・ダイレクト系)の自動車保険が生まれた。
さらに自由化によって、通販型(ダイレクト系)保険を中心に進んだのがリスク細分型保険だ。従来もユーザーの年齢などによって保険料率を変更していたが、さらに走行距離や使用目的、免許の色など、ユーザーの特徴を細分化することで、より無駄のない保険料の設定が可能となった。
通販型保険は間に代理店を挟まず直接契約するため、利用者自身がある程度の知識をもっておかねばならない。リスク細分型となれば、なおさらだ。
しかし代理店を挟まない分、保険料を安くできるのも通販型の特徴だ。さらにインターネットを使えば、自宅にいながら複数の保険会社を同条件で比較できたり、インターネット契約で割引きになったりなど、努力次第でより保険料を安く抑えることができる。リスク細分型も使いこなせば保険料を抑える役に立つ。
このように利用者の努力次第で保険料を抑えられるのが通販型のメリットなのだ。ということで、次回からはこの通販型保険を使って、「安く」かつ「失敗しない」保険の選び方を提案していきたい。
(瀬戸 学)
2011年 6月 14日