長期レビュー

高橋敏也のトヨタ「86(ハチロク)」繁盛記

その11:「HKS PREMIUM DAY in FSWに行ってきた!」

 スーパーチャージャーは漢のロマンであるっ! なんとなくそう思ったのは1979年に公開された映画「Mad Max」を見た時で、それをはっきり確信したのは1981年に公開された映画「Mad Max 2」を見た時だ。要するに、北海道の片田舎でバイク雑誌ばかり読んでいた少年が、映画に感化されて「スーパーチャージャー最強!」と思い込んでしまったという話である。まあ、そういうこともあるということで。

 冗談は別として、いや、別に冗談ではなく、私はスーパーチャージャーが大好きだ。機械的な動力を用いてエンジンに過給を行い、より大きな力を得る。その存在は実のところ、Mad Maxを見る前から知ってはいた。というのも、私はバイクマニアになる前からミリタリーマニアであったため、軍用機のレシプロエンジンに「過給器=スーパーチャージャー」が使われているのを知っていたからだ。しかし、そのスーパーチャージャーとクルマが私の結び付いたのは、Mad Maxのお陰なのだが。

 さて、そのMad Max 2の公開から33年(もうそんなに……と遠い目)、高橋少年はすくすくと育ち、高橋中年となった。その高橋中年は何の因果か、現在はスポーツカーに乗っている。そしてそのスポーツカーが搭載する水平対向4気筒のエンジン用として、スーパーチャージャーが市販されているのだ! 今回、ある場所で開催される、あるイベントに行けば、そのスーパーチャージャーを見られるだけでなく、試乗まで可能だという。ならば行かない理由はどこにもないのである。

目指せ! 富士スピードウェイ!

 2014年1月26日、我がハチロクが目指すは富士スピードウェイ。さすがスポーツカー、2014年初のサーキットランにチャレンジか!? いや、もちろんそんなことはない。というか、私は生まれてこのかた、ただの1度もサーキットを走ったことはない! というわけで、私が富士スピードウェイに向かったのは別の目的があったからだ。その日、富士スピードウェイでは「HKS PREMIUM DAY in FUJI SPEED WAY」というイベントが開催されていたからである。

 HKS PREMIUM DAY実行委員会が主催するこのイベントでは、HKSなどのメーカーからさまざまなカスタマイズパーツ、そしてカスタマイズカーが展示される。も・ち・ろ・ん! 展示車のメインはスポーツカーであり、今、スポーツカーと言えばハチロク(と、BRZ)を外すことはできないのである! という流れで、ハチロクのカスタマイズカー、そしてカスタマイズパーツが多数展示されるらしい。

 不肖・高橋、富士スピードウェイを訪れるのはこれで2回目。クルマの記事を書くようになるまでは、富士スピードウェイを何度も訪れることになるなんて思いもしなかった。ちなみに、富士スピードウェイ以外で行ったことのあるサーキットはツインリンクもてぎぐらいなものだ。まあ、バイクマニアなので8時間耐久レースが開催される鈴鹿サーキットぐらいは知っていたが。

 富士スピードウェイへの道は順調で、何のトラブルもなく到着。当日、富士スピードウェイはハチロク乗りにとって「天国」へと変貌していたのである。

せっせと写真を撮影する高橋。取材というより単なる見学者。自分のハチロクにどんなパーツを取り付けたいか、そんなことを考えている

カスタマイズカー、カスタマイズパーツが勢揃い!

 正直に言おう。今回のイベントで、まず最初に驚いたのは女性の見学者が多いこと。商売柄、PC関連のイベントにはよく行くが、残念なことに女性の見学者は少ない。だが、このイベントでは女性たちが愉しげに見学している。驚いたというか、羨ましいと思ったわけである。

 さて、本題。不肖・高橋、バイクのカスタマイズならそこそこ経験はあるものの、クルマとなると素人同然。ズラリと展示されたカスタマイズカー、そしてパーツたちに圧倒されてしまった。スゴイ! とにかくスゴイ! イベントのキャッチコピーに「HKS流、オ・モ・テ・ナ・シ!」とあるぐらいだから、クルマ好きにとってはごく普通の光景かも知れない。しかし、そこに放り込まれた素人のおっさんは「スゲエなあ……」と呟くしかないのだ。

 気を取り直して、カスタマイズカーとパーツをじっくり見ていく。基本的な視点は「自分のハチロクに取り付けるなら、どれがいいか?」である。そんなことを考えながら、せっせと写真を撮った訳だ。

HKS Racing Performer 86 RS-1。HKSらしさを追求したレース車両。驚異の580PSを絞り出す
Kansaiサービスのデモカーは、実にキレイにまとまっている。ターボキットを搭載、301PSを叩き出す
AVESTのデモカー。こちらも実によい雰囲気だ
純正とは大きくデザインの異なるフロントバンパー、そしてデイランプキットに注目
ADVANのホイールからプロジェクトミューのキャリパーが覗いている(ブレーキディスクもカスタムパーツ)。内部がよく見えるホイールだと、キャリパーの見栄えも気になるんだよな……
オクヤマのレース車両。一般公道を走るものではないが、実に格好いい
気になったテールランプ。格好よくない? 格好よいよね、やっぱり!
ブレーキ系統ではエンドレスのブレーキディスクに注目。性能も高いのだろうけど、見た目もよい
エンドレスのキャリパーを実際に見せてもらい、説明してもらう。内容の75%ぐらいは理解できた
このおっさん、何をしているかといえばタイヤとフェンダーの隙間に注目しているのだ。決して変な人ではない
YOKOMOのドリフトラジコンカーを買うべきか迷っているおっさん。ドリフト走行に特化したラジコンカー、面白そうだ

HKSのスーパーチャージャーキットを「ガン見」!

 さて、このイベントを見学(もう取材とか言わない)しに来た大きな理由は、HKSのスーパーチャージャーを見て、そして体験することである。HKSからリリースされている各種パーツが屋内展示されているというので、さっそく行ってみた。

 やっぱり格好いいわ、スーパーチャージャー。エンジンルームに組み込まれた状態で見ても格好いいし、単体で見ても格好いい。そして何度でも書くが、スーパーチャージャーは漢のロマンなのだ! ただのおっさんである私が、公道上においてスーパーチャージャーを必要とするような状況は、まず考えられない。だが、それが入っているのといないのでは、気持ち的に大違いなのである。

 やっぱり欲しい、スーパーチャージャー。さて、どうしてものかと考えながら、別のスペースへと向かう高橋であった。

HKSのGT SUPERCHARGER KIT、リニューアルモデルとのこと。この状態で自室に飾っておきたいぐらい美しい
こちらはCAPACITY UP GRADE KITのプロトタイプ。排気量をアップするのだが、ボアを変えず(ボーリング不要)に行えるのがポイント。スーパーチャージャー搭載車両用のバージョンもある
エキゾーストシステムのHi-Power SPEC-Lもリニューアル。軽量さをコンセプトにしたパーツだ
この4本出しのLEGAMAX SportsはBRZに対応した製品。ハチロク用に2本出しのモデルもある
4本出しも格好いいなあ……、いいなあ、これ……

ついにスーパーチャージャーを体験!

 今回のイベントでは展示だけでなく、カスタマイズカーでの同乗走行や、有名ショップのデモカーによるタイムアタック、そしてHKSのデモカーの体感試乗会なども行われた。そう、HKSのデモカー試乗となれば、そこには当然スーパーチャージャー搭載車両も用意されているわけだ。

 時は来た! いや、いつも来るんだけどね。そう、ついに私の順番が来たのである! 不肖・高橋、これからHKSのスーパーチャージャー、GT SUPERCHARGER 7040Lが組み込まれたハチロクに試乗します! 試乗車は最高出力が実測数値でノーマルの176.3PSから219PSにパワーアップし、最大トルクも18.2kgmが25.7kgmまで向上している。バリバリのチューンということではなく、むしろ抑え気味の渋いパワーアップではないだろうか。

 そして重要なポイントは、私が試乗するハチロクは「オートマ」のスーパーチャージャー搭載車なのだ。まさしく私のハチロクにスーパーチャージャーを載せたらどうなるか? それを体感できるわけだ。まあ、さすがにHKSのデモカーだけあって、試乗車はポンとスーパーチャージャーを載せただけではない。冷却系からエキゾースト、足まわりまで細かくカスタマイズされている。だが、やろうと思えば自分のハチロクをこの仕様にすることも可能なのである。

 でもって走り始めたスーパーチャージャー搭載のデモカー。カチッとした足まわりとグリップ力のあるタイヤが車体を安定させている。体験走行エリアに到着し、いよいよスーパーチャージャーの真価を試すことができる。まずは直線コースでの加速だ。スタート位置からアクセルを踏み込むと、私のノーマルエンジンにはない、太いトルクを感じることができた。自然吸気とスーパーチャージャーの違いは明白で、私でもしっかり体感できる。

 なんと表現したらよいだろうか? まるでエンジン排気量がひとまわり大きくなったような感触である。ハチロクは2.0リッターの自然吸気エンジンを搭載しているが、スーパーチャージャーのパワーアップは、その2.0リッターを2.4リッターにしたような感覚(あくまで個人的な意見)である。パワーアップもそうなのだが、トルク感が強くなったのが印象的。いうなれば、余裕を感じるパワーアップといったところだろうか。

 試乗エリアを何度か走ったが、スラロームもよい雰囲気でこなすし(これは足まわりやタイヤのお陰か)、とにかく直線での加速がよい。オートマとの相性もよさそうだし、これはもうネガティブ要素を見つける方が難しいと思った。もし可能なら、その場で1セット購入してお持ち帰りしたいぐらいだ(それはないけど)。スーパーチャージャー、やはり期待を裏切らない存在である。

試乗したハチロクのエンジンルーム
HKSの!スーパーチャージャーは!世界一ぃぃぃぃぃ!(意味不明)
スーパーチャージャー搭載! 「オートマ」のハチロクを体験試乗する!
これからやることを指差し確認しつつ
乗車!
勝手知ったるオートマハチロク。やや緊張気味だが、マニュアル車の試乗よりは気分が楽
よい加速ですなあ! エンジン排気量がひとまわり大きくなった感じ!
素晴らしい! これはよい!
試乗後、担当の人にお話を聞いたりしているシーン

これからどうしようか……

 来た、見た、乗った。スーパーチャージャーはやっぱりよいと確信した。そして、こういったイベントを見学しなければ分からなかったこと(女性見学者が多いという話は別として)をいくつも発見できた。そう、愛車であるハチロクの可能性に関してだ。エアロパーツとひと口に言っても、数多くのメーカーがさまざまなタイプの製品をリリースしている。Webサイトや雑誌などでその存在は分かっているのたが、実際に見るとよい意味で印象が大きく違ってくる。よりリアルな、身近な存在になるのだ。

 スーパーチャージャーも同じ。単純にロマンだロマンだと騒いでいる時も楽しいものだが、実物を見てパワーアップを体感し、その吸気音を聞いたあとは「いつ入れるか?」などとリアルなことを考えてしまう。足まわりやブレーキもそうだ。

 スーパーチャージャーでパワーアップするなら、ホイールもインチアップしたいなあとも思う。インチアップしたらスポーツタイヤに変えたいし、パワーアップするならブレーキ関係も強化したい。すでにサスペンションに関してはカスタマイズしているのでよいとして、スーパーチャージャーを搭載するなら冷却系も強化したいと思ったりする。

指をくわえてスーパーチャージャーに見入るおっさん。ヤラセっぽい写真だが、そのとおりです。でも、正直な気持ちもこの写真のとおり

 難しいのは、数あるパーツのなかからどれを選ぶかだ。自分の好みを優先するのは当然だが、統一感を持たせたいし、もちろん性能も気になる。まったくもってこれが大変な悩みどころだ。しかしまあ、出発前日の夜が一番興奮する遠足じゃないが、パーツ選びに悩んでいる時が一番楽しいって話もある。とりあえず、しばらく悩んでみようかと思うおっさんであった。

 そう言えば、今月は鈴鹿サーキットで開催されるバイクのイベント「BIKE!BIKE!BIKE!」を見学する予定だ。バイクのイベントだけにバイクに乗っていこうと思ったが、ハチロクで行くことにしよう。ハチロクで走りながら、今後のカスタマイズをどう進めていくか、じっくり考えてみたい。オートマ最強のハチロクを目指すべきか? はたまたど派手な外観で、視線を独り占めにするか? 痛車……というのは、今のところ考えていないけどね。

渋い! 格好よい! なんだか今回は「格好よい」を連発しているなあ
超渋いデモカー。ロゴのブラックアウトにセンスのよさが炸裂している
ここまで来ると私の範疇を超えているのだが、ハチロクもここまで来られるという見本
イベントでもらったキーホルダーとステッカー。キーホルダーはさっそく使うとして、ステッカーはスーパーチャージャーを入れたら貼ろうと思う

高橋敏也

デザイナー、コピーライターを経て、パソコン関連のライターとして独立。SF小説なども上梓している。ライター歴は20年を超えるが、最近10年は真面目なレビュー記事というより、パソコンを面白おかしく改造する記事などを書いている。若い頃はオートバイをこよなく愛していたが、体力の衰えと共にクルマへの興味を持つ。このため自動車免許を取得したのは1998年。現在、クルマはトヨタのハチロク、オートバイはカワサキのNinja 1000とZ1300を所有、都内を縦横無尽に走っている。インプレスジャパン、DOS/V POWER REPORT誌に「高橋敏也の改造バカ一台」を連載中。ほかにImpress Watchでインターネット動画「パーツパラダイス」を配信中。