長期レビュー

高橋敏也のトヨタ「86(ハチロク)」繁盛記

その9:サイバーナビ、入れ替えました

 もう、初っ端からハチロク以外だったりする、困ったことに。高橋、いったい何に乗ってるでしょうか? そう、これは知る人ぞ知るトヨタ(トヨタ車体)の電気自動車「コムス」である。電気自動車、EVですよ、EV! トヨタと言えばハイブリッドやPHVばかり目立っているが、電気自動車や燃料電池車もやっているのだ。そしてもちろんこのコムス、れっきとした市販車両なのである。まあ、地味だけれども……。

 実はこの車両、いつもお世話になっている東京トヨタ井草店に、短期の展示でやって来たものなのだ。こりゃ面白いということで、私の担当をしてくれている営業の太田さんが、わざわざ見せに持ってきてくれたのである。実際の会話は「高橋さん、コムスがあるんですけどご覧になります?」「もちろんです!」といった具合だ。当然、電話を切ってから私の頭の中で「コムスって何だ?」という疑問が駆け巡ったのだが。

 そしてやって来たコムスを見て、はたと気づいた。この車両、確か某コンビニチェーン店の駐車場で、何度か見たことがある。後で調べてみたら、確かにコンビニチェーンで宅配用にコムスが導入されていた。その1台を私はどこかで見ていた訳である。なるほど、確かにこのコムス、コンビニの宅配などには最適だろう。何しろサイズがコンパクトな上に、最高速度は60km/hを確保している。そして1回充電すると、市街地走行でも50km前後を走行可能というのだ。電気自動車としては低価格だし、環境にも優しい。小回りの利くシティコミューターとしては、かなりの完成度だ。まあ、1人乗りだけど……。

 さて、実際にコムスを観察し、動かした感想。とにかくコンパクトでシンプル、これ以上どう表現すればいいやら。ちなみに先ほど「電気自動車としては低コスト」と書いたが、こっちは言葉どおりとしか言いようがない。車両重量410kgをフル充電で約50km走らせることが可能なバッテリー(鉛電池らしい)を搭載している車両が、オプションを含めて100万円を切る価格で入手でき「環境に優しいデリバリービーグルを使ってますよ」とアピールできるなら、安いと言っていいと思う。だが、個人で買うとなると、清水の舞台がふと脳裏をよぎるのも確か。

 いずれにしても面白いものを見せてもらったと、大満足な高橋であった。

横から見たコムス。全長2395mmで最小回転半径が3.2m。ご近所デリバリーでの使い勝手は最高だろう
幅はたったの1095mm、約1m。駐車スペースもコンパクトでいいということだ
もうね、極限までシンプル。ただ、ハンドルが無駄にスポーティな雰囲気というのは……流用の関係なのかな?
トランスミッション……などない! シフトはドライブ、ニュートラル、そしてバックのみ!
見せてもらったのはコムス B-COM デリバリー。なのでリアにボックスが用意されている。ボックス内部、底面の仕切り板は木製だ!

サイバーナビ本体、入れ替えのお知らせ

 すでにCar Watchの別ページでご報告している通り、我がハチロクに搭載しているカロッツェリア(パイオニア)のサイバーナビを最新のものに入れ替えた。以前のモデルが「AVIC-ZH99HUD」、そして今回のモデルが「AVIC-ZH0009HUD」。実は以前のモデル、AVIC-ZH99HUDは「相当」である。実際には発売日などの関係で、ナビ本体とHUDを別に導入したので別型番になる。まあ、このあたりの細かい話はいいか。

●【特別企画】高橋敏也の新サイバーナビ体験記(前編)
http://car.watch.impress.co.jp/docs/special/20130624_603449.html

●【特別企画】高橋敏也の新サイバーナビ体験記(後編)
http://car.watch.impress.co.jp/docs/special/20130703_604683.html

 前モデルの発売から1年が経過し、順調にモデルチェンジしたサイバーナビ。もちろん新しいモデルが出たからといって、以前のモデルが急に陳腐化することはない。先進のHUD(ヘッドアップディスプレイ)は新旧でほぼ同等だし、仮想現実(AR)を活用した機能にも大きな違いはない。だが、そこはそれ新モデル。サイバーナビが気に入っている私としては、どうしても気になる機能が新モデルには搭載されていたのだ。

 それが「スマートループアイ」である。簡単に言ってしまうとこの機能、カメラで撮影したリアルな情報(写真)を、サイバーナビユーザー同士で共有しようというものなのだ。具体例を1つ挙げよう。例えば高速道路を走っているとする。目的地にたどり着くにはAかB、どちらかの出口を使って一般道に出なければならない。Aは状況によって恐ろしく混雑する出口、Bは混雑することは少ないが、高速を降りてから目的地までの距離が長い。さてAとB、どちらの出口を使うべきか?

 通信機能を搭載しているナビなら、渋滞情報がリアルタイムで入手できるため、それが判断材料になってくれるだろう。サイバーナビもそうだ。だが、その情報が本当にリアルなものなかは、実際に到着するまで分からない。だが、スマートループアイがあれば「ある条件」さえ整えば、本当にリアルな状況を画像で確認できるのである。では「ある条件」とは何か? それは「スマートループアイに対応したサイバーナビを搭載した車両が、そのポイントを通過している」ということだ。

 上記の例で言うと、自分より先行しているクルマが、スマートループアイ対応のサイバーナビを搭載していたとする。するとその先行しているクルマのサイバーナビはA、B地点を通過する際、自動的にスカウターカメラで写真を撮影し、それをスマートループアイのサーバーにアップロードする(撮影するのはスマートループアイポイントなのだが、高速道路のインターなど主要地点はそのポイントになっている)。後ろを走っているあなたのサイバーナビは、先行しているクルマが撮影した画像を、自分のサイバーナビで見ることができるのだ。これから向かう気になる場所の状況を、リアルな画像で確認できる。これこそスマートループアイのスゴイところなのだ。

 あー、もちろん難しい面もある。まず何よりその地点をスマートループアイ対応のサイバーナビが通過していなければ、画像を入手することはできない。さらに言えばナビが入手する渋滞情報と同じで、タイムラグによる状況の変化も無視することはできない。先行車が1時間前に通過した画像は、あくまで1時間前の状況。その後の1時間で、状況は変化するかも知れないし、しないかも知れない。

 今現在、スマートループアイに対応したサイバーナビを使っているユーザーとしては、同様のサイバーナビを搭載したクルマが増えてくれると嬉しい。そうすることで私のサイバーナビが得られる、ということは私が得られる情報が増えるし、リアルタイム性も高まるからだ。

 前回、SHOWA TUNING COMFORTをハチロクに装着し、遠出した記事を書いた。実はその時、サイバーナビというか、スマートループアイに嬉しいことが起きたのである。それは帰路、東京へ向かう東名高速で起きた。サイバーナビにルートを設定してあったので、先にあるスマートループアイポイントの画像が順次表示されていった。そこでふと、ポニョ嫁が気づいたのである。「これ、5分前の写真じゃ!」。その後も表示される写真は写真は5~10分前のものだった。そう、私のハチロクよりも10分前後先行して「スマートループアイ対応のサイバーナビを搭載したクルマ」が走っていたのだ。そのクルマのお陰で、私はこらから通る道の状況を把握できた訳だ。

 このスマートループアイの存在が、サイバーナビ本体の更新を私に決断させたのである。もちろんほかにも新モデルには、魅力的な新しい機能がある。例えばスカウターカメラの解像度が向上していたり(スマートループアイ用の画像を高解像度で撮影するという目的もあるのだろう)、HUDに表示される情報が増えていたり。特にHUDの情報表示では、現在時刻が表示されるようになったのが便利である。

入れ替えは毎度お世話になっているCATSさんにお願いした。CATSさんに届いたAVIC-ZH0009HUDの箱
暗くて申し訳ないが、以前のサイバーナビを取り外した状態。デロデロとケーブルが引き出されている。私には何が何やらだが、CATSの小林さんはちゃんと分かってる
取り付け終われば、まあ、以前のサイバーナビと大きな違いはない。操作ボタン部分の飾りが、よりスタイリッシュになったことが前モデルとの識別ポイント
スカウターユニットの外観は変わらなかった
スカウターユニットのカメラは、小林さんに無理を言って、より車体の中央近くに取り付けてもらった。解像度は31万画素から大幅アップの100万画素、ドライブレコードのムービーを見ても、画質が大きく向上している
2つの新機能を一気に紹介できる写真。信号のない横断歩道を画像認識して、ドライバーに注意をうながす機能。そして左下の「SPOT Watcher」にも注目。ルートの先にある重要ポイント「生麦JCT」の画像を表示している
使っているとHUDに表示される情報が多くなったことに気づく。前モデルで蓄積されたデータを元に、表示情報の最適化がなされた結果だろう

サイバーナビ、バージョンアップしました

 いや、決してハチロク本体のネタが切れた訳ではないのですよ。ではなぜにコムスから始まって、延々とサイバーナビのネタに走っているのか? 実はですね、サイバーナビの方のネタが貯まっていたのですよ。なので正常な状態、すなわちハチロク中心の内容に戻すため、2014年の一発目でサイバーナビ関連のネタを一気に放出してしまいましょう。そんな流れになったのである(これからもちょくちょく出ると思うけど、サイバーナビ。なんせお気に入りで自慢のナビですから……)。

 という訳でさらにサイバーナビのネタが続く。2013年末、新しいモデルに入れ替えてから初めての「全データ更新」、すなわちバージョンアップを行った。正確には2013年11月から全データ更新のサービスは始まったのだが、私は出遅れて12月に入ってからバージョンアップを行った。ちなみにサイバーナビには最初から、発売日から3年分のデータ更新サービスが付属している。これもサイバーナビを選んだ理由の1つなのだが、要するに私の購入したサイバーナビは2013年5月~2016年4月まで最新データの状態で利用し続けることが可能なナビなのである。

 が、しかし。全データの更新のため、ダウンロードしなくてはならないデータのサイズも巨大である。なんとそのサイズ、7.7GB超え! それをインターネット経由でPCにダウンロード、さらにサイバーナビで使用するSDカードに転送する。そのSDカードをサイバーナビにセットして、そこからリアルなアップグレードが始まるのだ。

 巨大なデータをサーバーからダウンロード、しかも人気のサイバーナビ。全データ更新に合わせて大量のダウンロードが発生、それも巨大なサイズのデータ。こりゃサーバーがたまったものではない。そんな訳で全データ更新のダウンロードは予約制となっていて、ユーザーを分散させる工夫がなされている。もちろんダウンロードが始まったばかりの頃は予約で一杯、まあ先でいいやと思っていたら12月に入っていた。

 それでも予約を入れてダウンロードを終え、SDカードに転送、SDカードをサイバーナビにセットしたところで本当のバージョンアップが始まった。ええ、分かってましたよ、前のサイバーナビでも経験したことですから。7.7GB超えのデータで、全データを更新するのだから、ナビ側でもえらく時間がかかる。それはサイバーナビ側も承知のこと、ちゃんとナビを使いながらバージョンアップできるようになっている。いやいや、それでも時間がかかるのが全データ更新。まあ、ナビを使いながらなら1日ががりと覚悟しておこう。

 なお、バージョンアップの終わりには、これまた恒例行事である「サイバーナビ、半年の一度の大リセット祭り」が開催される。かなりの回数リセットがかかるということだ。それが終わったところでサイバーナビの全データは最新のものになる。次の全データ更新は2014年5月、それまでは月単位で行われる道路データの更新と、地点情報データの更新だ。3年間、ずーっと最新データが使えるナビ、それがサイバーナビなのである。

全データ更新はNAVI STUDIOから行う。NAVI STUDIOでUpdate Managerを起動すると、更新できるもののリストが表示される。「全更新データ」と「AR HUD全更新データ」がある
全更新データは7.7GBを超えるため、予約制となっている。空きがあればいいが、なければ結構待つことになる
ダウンロードとSDカードへの転送が終わった。だが、ここからサイバーナビ本体のバージョンアップが始まるのである

サイバーナビの音響特性を補正してみた

 さらに続くサイバーナビネタ(ね、たまっていたことがよく分かるでしょ?)。

 まだ前モデルのサイバーナビをハチロクに搭載していた時の話。知人がそのハチロクを運転していて、ふと「このサイバーナビさあ、音響の最適化をちゃんとやった?」などと呟いた。その知人もサイバーナビシリーズを愛用しているのだが、運転席で聞くオーディオサウンドのクオリティに違和感を感じたというのである。最新(当時はそうだった)のサイバーナビなら、もっといい音がするはずだと言うのだ。そしてその原因は、私が音響(サウンド)の最適化をしていないからではとのこと。

 サイバーナビには「AUTO TA&EQ」という機能があって、これを使うと車両内部の状況に合わせて音響特性を最適化してくれる。サイバーナビのような市販カーナビは、さまざまなタイプの車両に搭載される。そして車両ごとにスピーカー構成はもちろん、内装の材質やシートの位置などが異なっている。車内空間の容積すら異なる訳だし、それらは全て車内で再生する音の広がりや反射に影響する。そういった車室内の状況に合わせて、音響特性を自動的に補正してくれるのが「AUTO TA&EQ」なのである。

 で、私がそれを実行していないのではと。はい、もちろん実行していませんでした。というか、そんな機能知りませんでした。そんな訳でもちろん以前のサイバーナビでも、知人から話を聞いてすぐにこの「AUTO TA&EQ」を実行した。結果として音楽を再生した際の音質が、私のようなオーディオ系に関心の強くない人間でも確認できるレベルで向上した。

 ようやく本題。サイバーナビを最新のものに載せ替えてから半年以上、この「AUTO TA&EQ」の存在をすっかり忘れていました! いかん、このままではいかん。ということで、また忘れる前に「AUTO TA&EQ」を実行することにした。

 マニュアルでは「車室内の音響特性(音の反射)を自動的に計測して、最適に補正」と書かれているのだが、ユーザーが実際にやることはさほど多くない。用意するのはサイバーナビに付属してきた「AUTO TA&EQ」用のマイクと、長めの輪ゴムかテープだけである。それをサイバーナビの搭載された車両に持っていき、あとは作業をするだけだ。

 ちなみにこの最適化を実行する際は、エンジンをかけない。ACCかONの状態で設定メニューからオーディオ設定に進み、「AUTO TA&EQ/その他設定」を選ぶ。次に音響測定用のマイクをサイバーナビ本体に接続し、マイク本体は座席のヘッドレストに輪ゴムやテープで固定する。助手席を音響の中心にするなら助手席のヘッドレストに固定してもいいのだが、私のハチロクは運転席に座る私が主役なので、運転席に固定する。

 「AUTO TA&EQ」の画面には「フロントL」と「フロントR」があるので、私の場合はハチロクの運転席だから「フロントR」を選ぶ。で、最後に「START」をタッチして、表示されるカウントダウンに驚く訳だ。最適化が行われている際は、かなり大きなノイズ音が再生される。もちろんその間はドアなどをすべて閉めておき、もちろんドライバーは車外で最適化が終わるのを待つ。約10分間、車内で大変なサウンドが再生されていることに驚きつつ、待つのである。

 「AUTO TA&EQ」が終わったら、後はマイクを片付ける。実行前と実行後では、音の奥行き感などがかなり違っていることに気づくはずだ。もし私と同様、「AUTO TA&EQ」を行っていない人がいるなら、すぐにでも実行することをお勧めする。

以前のサイバーナビでもそうだったのだが、ハチロクで音楽を聞くのに、私はiPod Touchを使っている。上のドングルはサイバーナビの通信用
そのiPod Touchと通信ドングルは、このようにグローブボックスに詰め込まれている
「AUTO TA&EQ」のための準備。念のためマニュアルと、「AUTO TA&EQ」用のマイク、そして長い輪ゴムを用意した
輪ゴムをマイクの裏にあるフックに通して……
運転席のヘッドレストに固定する。テープなどで固定するのもありだ
エンジンをかけずに電装をON。サイバーナビの設定で、オーディオ設定を呼び出す。右下に「AUTO TA&EQ/その他設定」がある
「AUTO TA&EQ」が未測定になっていることを確認したら、そこをタッチ
サイバーナビのディスプレイパネルがオープン状態になる
B-CASカードスロットの左に「AUTO TA&EQ」マイク用のジャックがあるので、そこにマイクを接続する
ハチロクの運転席側で設定するので「フロントR」を選び、「START」をタッチ……カウントダウンされている間に脱出! ドアを閉める
10分ほどで終了。「AUTO TA&EQ」は「測定済」になって、音響はハチロク車内に最適化された

2014年、高橋のハチロクは進化する!(予定)

 遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。

 と、ご挨拶しつつ、考えるのは我がハチロクの今後である。買った直後にサイバーナビを導入し、それを昨年、最新モデルに更新した。ナビに関しては満足しているので、当面いじることはないだろう。

 2013年の一番大きなカスタマイズはやはり、サスペンションユニットの交換である。スプリングだけでも相当よかったのだが、調子に乗ってユニット丸ごと交換にチャレンジした。結果は上々、これにも大満足である。

 さて、次は何だ? と、考えてみたら、結構あれこれ出てきた。足まわりを見ればホイールとタイヤは交換したいし、外装を見ればやっぱり大きな羽根(リアウイング)が欲しい。エアロパーツもいいと思うし、シートを交換してもいいんじゃないかと思ってみたりもする。いやいや、マダコの皮を被ったヒョウモンダコがごとく、エンジンに手を入れるのはどうだろうか?

 要するにできることは山ほどあるし、やりたいことも同じぐらいあるということだ。まあ、新しい年になったことだし、できることからコツコツとやって、我がハチロクをじっくり進化させて行きたいものだ。まあ、当初考えていた「赤いハチロクを国防色に」というのは、ちょっとどうかと思うが。

 いずれにしても皆様、2014年もハチロク共々よろしくお願いします。

高橋敏也

デザイナー、コピーライターを経て、パソコン関連のライターとして独立。SF小説なども上梓している。ライター歴は20年を超えるが、最近10年は真面目なレビュー記事というより、パソコンを面白おかしく改造する記事などを書いている。若い頃はオートバイをこよなく愛していたが、体力の衰えと共にクルマへの興味を持つ。このため自動車免許を取得したのは1998年。現在、クルマはトヨタのハチロク、オートバイはカワサキのNinja 1000とZ1300を所有、都内を縦横無尽に走っている。インプレスジャパン、DOS/V POWER REPORT誌に「高橋敏也の改造バカ一台」を連載中。ほかにImpress Watchでインターネット動画「パーツパラダイス」を配信中。