特別企画

【特別企画】高橋敏也の新サイバーナビ体験記(前編)

新しいサイバーナビは凄かった!

不肖・高橋、未来を感じられるHUD(ヘッドアップディスプレイ)をこよなく愛しています。新型となって強化&進化したサイバーナビと、数日暮らしてみました

 現在、私の愛車はトヨタ自動車の「86(ハチロク)」で、そのハチロクに搭載しているカーナビはカロッツェリア(パイオニア)のサイバーナビである。今から約1年前、スポーツカーに乗りたい単純な思いつきからハチロクを選んだのだが、ちょうどいいタイミングで、カロッツェリアから新しいサイバーナビが登場した。そしてそのサイバーナビは、なんと! 驚いたことに! HUD、すなわちヘッドアップディスプレイに対応しているというのである!

 乗りたいと思っていたスポーツカーに、近未来を感じさせるHUDユニットを搭載する。もうね、ミリタリーマニア兼SFマニアとしては、これに飛びつかないはずがない。というか不肖・高橋、何も考えずに飛びつきましたよ、ええ。ハチロクが先か、HUDユニットをセットにしたサイバーナビが先か分からないぐらいの勢いで飛びつきましたがな。

 結果として我が愛車、ハチロクの運転席はサイバーナビ+HUDのお陰で「コクピット」と化したのである。サイバーナビのHUDユニットを搭載した運転席に座るだけで、気分はもう近未来。ジェット戦闘機だの戦闘ヘリだのを操縦する機会こそまずないだろうが、サイバーナビ+HUDを装備したコクピット、もとい運転席に座れば、気分はパイロットである。たぶん私の周囲の人間はかなりうんざりしていたはずである。ことあるごとにクルマと、そのクルマに搭載したカーナビを自慢しまくったのだから。

現在の愛車は「ハチロク」。1年ほどAR HUDとサイバーナビで走り込み中
昨年、AR HUDを取り付けて感涙した写真。HUDに対する思い入れは強い
ハチロクに取り付けてあるAR HUDの表示。十分な未来感を感じていたが、新型ではさらなる便利度アップが用意されていた
2013年モデルとなった新型サイバーナビ「AVIC-ZH0009HUD」。ちょっと見は、筆者が普段使用している21012年モデルの「AVIC-ZH99HUD」とあまり変わっていないが、よく見ると細かく変わっている。カメラ画像処理など、格段にパワフルなデータ処理能力を持つ

 そんなハチロク+サイバーナビの生活が始まってから約1年、サイバーナビのニューモデルが発表されたというニュースが飛び込んできた。ついに私のサイバーナビも旧モデルになるなあとか思った訳だが、やはり気になるのは新しいサイバーナビの機能である。どんなところが新しくなって、どんな機能が追加されたのか? 旧モデルユーザーとしては、かなり気になるところである。

 気になるなら実際に使ってみよう。そう思ってCar Watch編集部に相談したら、新サイバーナビを搭載した試乗車を用意してくれるという。ならば不肖・高橋、旧モデルとの比較も含めて、新しいサイバーナビを使い倒してみよう。なお、私は旧サイバーナビの愛用者なので、新しいサイバーナビに多少なりとも嫉妬心を持っているのは、ここだけの秘密である。旧モデルから約1年、順当な新モデル登場だということは分かっているんだけどね……。

新サイバーナビ、ファーストインプレッション!

2DINタイプの新型サイバーナビ「AVIC-ZH0009HUD」が取り付けられた試乗車で、あちらこちら回ってみることにした。スタート地点は、秋葉原の近くにある神田明神。もちろん、AR HUDも付いている

 「速くて、きれい(いろいろな意味で)」というのが、新しいサイバーナビに対する私のファーストインプレッションである。まず「速い」という点だが、これは旧モデルと比較しないと分かりづらいだろう。もちろん私の場合、旧モデルユーザーなので、その違いをしっかり体感できる訳だが。

 例えばナビの操作をした際の反応速度、これがまず速い。サクサク動く、この表現が一番しっくり来るだろうか? 任意の機能を選んで画面が表示されるまで、あるいは単純に画面のスクロールなどなど。サクサク動けばストレスが減り、快適さが向上する。旧モデルでも不便なことはないのだが、速く動いてくれるならいくら速くてもいいのがナビの操作感だと思う。

カーナビの反応速度が改善されていることにすぐに気がつく。タッチ操作をしっかり受け止めてくれ、反応速度の改善によるデメリットも見られない

 「きれい」という点に関しては、まずディスプレイ下部の操作スイッチ部がデザイン変更になり、文字どおり「きれい」になった。しかし、新サイバーナビの「きれい」、その本質は画面表示にあると言いたい。もっとも新サイバーナビのディスプレイ部スペックは旧モデルと同じ、7型ワイド、800×480ドットと旧モデルと同じである。ではどこが変わったのかというと、それは新サイバーナビ+新クルーズスカウターユニットの組み合わせにあるのだ。

ドライバーズビューの精細さに驚く

 サイバーナビの先進性を支える機能の1つに「クルーズスカウターユニット」がある。車載カメラで前方の景色を撮影し、その映像を解析、さまざまな情報と共にナビ画面へ映し出す。例えば私のお気に入りの機能は、前方を走る車両を認識し「ターゲットスコープ」で“ロックオン”、車間距離を表示するというものだ。

 近未来感といい、実用性といい、この機能だけでも「サイバーナビ+クルーズスカウターユニット」を導入した価値がある。そしてもちろん、クルーズスカウターユニットも、新サイバーナビに合わせてアップグレードされた。特に注目したいのが、車載カメラの性能アップである。私の旧クルーズスカウターユニットでは、車載カメラが約31万画素である。これが新モデルではメガピクセル、すなわち約100万画素にアップグレードされたのだ。

クルーズスカウターユニットのカメラ映像が大幅に高解像度化された。従来からあった信号機の色認識機能の画面も、とても高精細に映し出されている

 画素数にして約3倍、もうパッと見ただけでその精細度の違いは明らかだ。極端な言い方をすると、アナログテレビとフルハイビジョン放送ぐらいの違いがある。ここだけの話、私のような旧モデルユーザーが激しく嫉妬するぐらい(私は心が狭いのだ!)きれい、美しい画面なのである。

 カメラの解像度が上がったことによって、新サイバーナビはより高いレベルで画像解析が行えるようになった。車載カメラのリアルタイム映像とマップを同時に表示するドライバーズビューでの表示はより自然になり、情報を読み取りやすくなっている。

 解像度が向上し、解析能力もアップしたからなのか、新クルーズスカウターユニットでは横断歩道を認識してドライバーに注意を促す機能が追加された。さらに旧モデルと比較して、車線の認識機能が向上しているように感じた。こういったメリットのほか、車載カメラの解像度アップには、大変大きな役割があったのだ。

革命的な新機能、スマートループ アイ搭載!

 新旧関係なく、サイバーナビはHUDユニットと組み合わせると、実にサイバーなナビである。機能と見た目、両方においてサイバーナビ+HUDユニットは、「未来に生きている感」がバリバリ感じられるのだ。さらに新サイバーナビでは「スマートループ アイ」という新機能が追加されたのだ。まあ驚くような機能なのだが、まずはいったい何ができるのかを説明したい。

 新サイバーナビのスマートループ アイでは「これから行く先の“リアル”を見ること」ができるのだ! マップ上に表示される渋滞情報や工事情報ではなく、これから走るであろうルート上、その先の「リアルな現実」を「写真」で確認できるのである。

 例えば高速道路を経由して、ある地点に向かっているとする。ルート上には人気のアミューズメント施設があって、経由点の某出口は混雑していることで有名だ。時として混雑は出口車線だけでなく、走行車線にも広がっている。混雑は走行車線にまで及んでいるのか、それとも出口車線だけなのか? こればっかりはマップ上の渋滞情報から読み取れない。そこでスマートループ アイの出番である。

 その混雑する現場が、スマートループ アイの撮影スポットに設定されている状況で、そこをスマートループ アイの搭載したクルマが走ったとする。するとそのクルマは自動的に現場を車載カメラで撮影し、画像を専用サーバーにアップロードするのである。アップロードされた画像はプライバシーなどに配慮し、配信用に加工される。そしてスマートループ アイを搭載したサイバーナビがそこを通る際には、リクエストに応じて、その画像を配信するのである。

右下にスマートループ アイの写真が出ている。撮影日は6月3日8時32分。この先にある生麦JCTの30分前の状態が表示されている。データがたまればたまるほど有用なものとなるのがスマートループ アイという仕組み

 結果としてドライバーは行く先々の重要ポイント(スマートループ アイスポット)の状況を、写真というリアルな情報で知ることが出来るのだ。写真なのだから状況は一目瞭然、「あ、やっぱり走行車線は流れているな」と、見た目で理解できるのだ。もちろんそのためには誰かが、スマートループ アイ対応の新サイバーナビを搭載したクルマで、そこを通っていなくてはならない訳だが。

 こんな面白くて興味深い機能、試さない方がどうかしている! ということで実際にやってみましたがな! 走ったのは首都高速道路、あらかじめ首都高に関してはすべてのJCT(ジャンクション)、IC(インターチェンジ)がスポット登録されていると聞いてあった。そこで首都高を何度か周回してみたのである。

 出た! これから行く先、重要ポイントの写真がサイバーナビ上に表示されたのである! 但し! その画像を撮影したのは「自分」ではあるのだが(注:筆者が新サイバーナビを試したのは、製品発売前。よってサーバーにアップロードされている画像は、パイオニアのテスト走行で撮影されたものか、あるいは私のように試乗車を借り出して走った際に撮影されたものだけ)。

 さて、話を少し戻そう。先ほどクルーズスカウターユニットの解像度がアップして、画面表示がきれいになったと書いた。実は車載カメラの解像度アップは、このスマートループ アイでアップロードする画像のためでもあったのだ。低解像度では状況を把握しづらいので、アップグレードされた車載カメラで、より高い解像度の画像を撮影出来るようにしたのである。

 スマートループ アイスポットは主要幹線道路、高速道路などにあらかじめ設定されており、撮影は自動的に行われるのでドライバーは一切関知する必要がない。また撮影スポットは人気施設の駐車場近辺などにも設定され、さらには交通規制情報を元に、自動的に設定されるという。人気施設へ行った際に、スマートループ アイの情報で空いている駐車場、あるいは駐車場入り口を探す。ルート上で工事が行われていて、それが原因で渋滞が発生していた際なども、それを事前にリアルな形で知ること(見ること)ができる。

スマートループ アイの写真を拡大したところ。複数の画像が蓄積されてる場合、「前へ」ボタンを押すと、1つ前の画像に変わる。40km/h以上と表示されているのは、この区間の平均速度
スマートループ アイの項目が増えたメニュー画面

 後ほど触れるが、これはインターネット上で広く普及しているクラウドコンピューティングを活用したものである。クラウドにアップされたデータを、さまざま形で共有、活用するのがスマートループ アイであり、新サイバーナビなのだ。この新機能に関しては、無限の可能性を秘めているので、後編でもう少し掘り下げてみたい。

見やすく進化したHUDユニット

 さて、ヘッドアップディスプレイ、すなわちHUDである。このHUDユニットがあるからこそ私はサイバーナビを導入したのだが、もっと単純に言ってしまうと「超格好いいんですけど!」というのが正直な理由である。もちろん私だってテクニカルライターの端くれだ。「人間工学に基づくHUDの利便性と、それを他に先駆けて採用したサイバーナビの先進性に感銘した」とか、書こうと思えば書けるのだ。でもね、正直に言うと「格好いい!」というだけだったんですよ。それだけで飛びついたんですよ、私。

試乗車に乗り込み、AR HUDユニットの位置を調整中の不肖・高橋。もうね、このHUDがたまらなく格好いいわけですよ

 理由はともあれ導入したサイバーナビとHUDユニット、これがもう友人、知人に大人気。私の顔なんぞ見飽きている友人が、遠方からわざわざサイバーナビのHUDユニットを見るためだけにやって来るほどだ。現時点、HUDユニットを実際に体験できる場所が少ないということもあるのだろう。とにかく見たい、体験したいという人間が、私の周囲には大勢いる(もちろん私のサイバーナビでHUDユニットを確認し、導入した人間もいる)。

 今回の新サイバーナビでは、このHUDユニットもアップグレードされている。といってもRGBレーザー光源、780×260ドット、約20万画素といったハードウェア部分は従来通りである。アップグレードされたのは、HUDに表示される情報の内容である。例えば新HUDユニットでは現在時刻が表示されるので、ドライバーは時刻を確認するというだけのために、視線を大幅に移動させる必要が無くなった。新クルーズスカウターユニットで認識できるようになった、横断歩道予告検知も表示される。

 新しいサイバーナビと、新しいHUDユニットの組み合わせ。私の思い込みが強かったせいか、スペックもろくに調べず「HUDのハードウェア、性能アップしましたよね!?」とか、パイオニアの人に素で聞いてしまった。だが、先ほども書いたがハードウェア的には旧モデルと同じ。表示される情報がより洗練され、使いやすくなったということらしい。だけどなあ、私個人の印象としては、確かに見やすくなったように感じるんだけどなあ……。

新型サイバーナビ試乗車のため、撮影用として助手席側にもAR HUDユニットが取り付けられていた。撮影のため明るさは最大に、また運転席側と異なる角度で撮影している。新型サイバーナビとの組み合わせでは、情報量も増えながら、より整理された感じ。ちなみに写真だとHUDのコンバイナー部(透明なパネル部分)に地図が描かれているように見えるが、レーザービームにより投影方式のため、3m先に37インチ相当(90cm×30cm)の画面が広がるよう調整されている。この部分の仕様などは、2012年モデルと同様
まさに未来。料金所名やETCレーンが、夜の高速道路上に浮かび上がる。視距離も3m先、明るさも調整可能と、夜でも運転のじゃまにならないよう工夫されている
夜のハイウェイモード表示
夜の一般道
地図のスケールを広域に変更したところ。東京湾が暗い青で表示されている
施設アイコンもきれいに表示されている
レーンはみ出し警告もAR HUDユニットに描画。視線を動かさずに、ドライブをアシストしてくれるのはありがたい

未来をナビケートする新サイバーナビ

 新機能であるスマートループ アイ、そしてハード的にもソフト的にも機能が強化されたクルーズスカウターユニット。これらのほかにも新サイバーナビには、さまざまな新しい機能が搭載されている。例えばドライバーが思っていることを言うだけで目的を検索してくれる「フリーワード音声検索」。あるいはスマートフォンとの連携して、サイバーナビの楽しみと機能を拡張するLinkwith機能などなど。これらの機能も実際に試しているので、後編で詳しく触れてみたい。

 だが、何よりスゴイのはスマートループ アイである。行く先々の重要スポットの状況を、リアルな画像で確認できるというだけでもスゴイのだが、その将来性を考えた時、思わず「そうか!」と声が出てしまう。スマートループ アイスポットで撮影された画像は、クラウドサーバーにアップロードされ、新サイバーナビとそのユーザーたちに、さまざまな形で活用されるのを「待っている」のだ。

 もちろん第1に重要スポットの状況を確認するという、ダイレクトな活用方法がある。さらに未来を考えれば、例えばルート探索をする際に、渋滞情報とスポットの画像を総合的に判断して、より快適なドライブルートを見つけ出すといったことも可能になるだろう。さらにさらに先を見れば、サイバーナビのユーザーはナビだけでなくパソコンやスマートフォンからクラウドにアップされたスポット画像にアクセスし、ドライブプランを考えるといったことも可能になるだろう(注:これらはあくまで私個人の想像)。

 まあ、先ほども書いたが、スポットの画像を撮影でき、なおかつ見ることができるのは、新サイバーナビと新クルーズスカウターユニットを搭載したクルマだけである。なので最初はデータの量は少なく、その情報密度も高くはないだろう。しかし、それらを搭載したクルマが増えてくればくるほど、加速度的に情報量は多くなる。すなわち勢いをつけて、スマートループ アイの情報は役立つようになって来るのだ。

 後編では私の専門分野であるクラウドに関して、もう少し語りたいと思っている。また、前編で積み残したフリーワード音声検索なども取り上げたい。次回後編「秋葉原のメイド喫茶」をフリーワード音声検索した高橋、驚愕の事実に直面する!に乞うご期待!

後編では、クラウドに関することなどをお届け。また、クラウド機能を使ったフリーワード音声検索に関しても紹介していこうと考えている

高橋敏也

デザイナー、コピーライターを経て、パソコン関連のライターとして独立。SF小説なども上梓している。ライター歴は20年を超えるが、最近10年は真面目なレビュー記事というより、パソコンを面白おかしく改造する記事などを書いている。若い頃はオートバイをこよなく愛していたが、体力の衰えと共にクルマへの興味を持つ。このため自動車免許を取得したのは1998年。現在、クルマはトヨタのハチロク、オートバイはカワサキのNinja 1000とZ1300を所有、都内を縦横無尽に走っている。インプレスジャパン、DOS/V POWER REPORT誌に「高橋敏也の改造バカ一台」を連載中。ほかにImpress Watchでインターネット動画「パーツパラダイス」を配信中。

Photo:安田 剛