長期レビュー

日沼諭史の「お父さんと家族のCX-3」

第3回 スタッドレスタイヤ「BLIZZAK VRX」を装着して、温泉に行ってみた

BLIZZAK VRXを装着したCX-3

 思えば「CX-3」が納車された2015年末、その冬はせっかくの新車なのに走り回ったのは首都圏のみで、遠出することはなかった。なぜならそれは、筆者が北海道生まれ、北海道育ちのくせに寒がりなのもあるけれど、物理的に遠出できない原因があったからだ。ご存じのとおり、東京(の自宅)を離れて遠くに出かけようとすれば、どうしても“積雪”や“凍結”という障害にあちこちで阻まれてしまう。

 そう、積雪のほとんどない東京とはいえ、夏タイヤのままだと冬は意外に積極的には身動きできないのだ。積雪と凍結の心配が少ないのは、せいぜい東の房総半島だが、それ以外の西や北に向かおうとすれば雪と氷に遭遇する確率が高まる。このままでは必然的に家族サービスは不足し、(誰のとは言わないが)鬱憤がたまって平穏な日常生活を送りにくくなる……。

BLIZZAK VRXに交換! ふわっと感はあるけれど、好みのコーナリング。走りも静かに

 そんなわけで、まだ降雪の恐れがない2016年10月のうちに、スタッドレスタイヤに交換すべくタイヤショップ「タイヤ館 府中」へ。タイヤ銘柄はブリヂストンの「BLIZZAK VRX(ブリザック VRX)」をチョイスした。事前予約していたこともあってスムーズに交換作業に入り、かかった時間は実質40分ほどとあっさり完了。筆者が自分でバイクのタイヤ(2本)を交換するより間違いなく早い!

スタッドレスタイヤへの交換をお願いした「タイヤ館 府中」
タイヤはブリヂストン BLIZZAK VRX
工場に入り、即座にリフトアップされる我がCX-3
タイヤが取り外され……
あられもない姿に
タイヤチェンジャーで作業中
バランス取りも早い
タイヤ交換の終わったホイールが流れるように取り付けられていく
ナット締め付け時に振動を与えてセンター出しするタイヤ館独自の「センタリングマシン」を使用中。これにより正確にホイールの中心を車軸に合わせて装着できるという
40分で交換作業が完了
タイヤワックスでピッカピカ
早速走り出してみる

 早速スタッドレスタイヤを装着したCX-3を(乾燥した舗装路面で)走らせると、最初に車道に出た瞬間から明らかに違いが分かる。弾力のある、ふわっとした感触がシートとハンドルから伝わってきて、夏タイヤの時にある敏感さみたいなものは控えめになったようだ。

 この“ふわっと感”は、夏タイヤに慣れた身では最初こそ違和感があったけれど、徐々にファミリー的な実用面では全然わるくない、と思い始めた。というか、むしろうれしい。粗い舗装路面では間違いなく振動が減り、穏やかになって乗り心地がアップしているし、なによりロードノイズが劇的に小さくなっている。今まで「ンゴーーーーー」と盛大に聞こえていたところでも「コー――――」くらいになっているようなイメージだ。

 騒音が減るということは、単純にラジオの音声が聞こえやすくなり、車内での会話が妨げられることも少なくなるということ。クルマでの移動中に必ず騒ぎ出す子供をあっという間に黙らせる魔法のツール、妻がスマートフォンで見せる動画の音声も、聞き取りやすくなる。スタッドレスにすることで、同乗者がロングドライブのいろいろなストレスから解放されるのだ。

純粋な雪上、氷上性能だけでなく、精神的な面でもメリット大

 ドライ路面もファミリー的に快適で、しかも雪道をものともしないであろうスタッドレスタイヤの本領をさっそく発揮させるべく、家族サービスを企画したい、と思った筆者。なんとか時間が取れた1月下旬の週末に、雪がたっぷり積もっているであろう群馬県は草津にある、草津国際スキー場に足を伸ばすことにした。

 中央自動車道、圏央道、関越自動車道を経由して、渋川伊香保インターチェンジで下り、伊香保温泉の看板を横目に草津へと至る片道約200km超。日帰りしたかったので早朝に出発したが、高速道路を下りるまではドライ路面で、凍結していそうなところすらなかった。

家族サービスのため、早朝にクルマを走らせる筆者
関越道は完全にドライ

 しかし下道を走り始めて間もなく、道路脇に残る雪が目に付くようになった。さらに走ると朝方ということもあって日陰に氷や、ブラックアイスバーンのように見えるところ、朝日で暖まってシャーベット状に溶けた積雪路面なんかが部分的に出現する。

高速道路を下りて少しの間は積雪ゼロだったが……
まもなく景色に白いところが増えてきた。路面にも凍っているところが見える
日本ロマンチック街道の朝

 そんな場面でも、スタッドレスタイヤを装着しているおかげで、一切怖さや不安を感じず、ハンドルを握る手に変な汗がにじみ出ることもなく、すっと走り抜けることができる。過信は禁物だが、リラックスしたまま走れるのは精神的な面でもメリットが大きい。

 山道に近づくと、シャーベット状の路面が増え、ところどころアイスバーンになった箇所も現れる。圧雪の上に水の膜が張ったようなごく一部の路面は、さすがにグリップさせることは難しそうだったが、それ以外の雪道はスタッドレスタイヤならではの性能を存分に発揮してくれた。

山道に入ると、シャーベット状の路面が当たり前に
怖いというより、楽しい!

 圧雪というほどではない少し柔らかめの積雪路面では、上り坂であってもぐぐっと車体を前に押し出すように加速してくれる。ギアを1速にしてよほど乱暴なアクセルワークをしない限り、タイヤが派手に空転することもない。このあたりはCX-3が装備しているTCS(トラクションコントロールシステム)が働いていることや、マツダの新世代4WDシステム「i-ACTIV AWD」であることも影響していそうだ。

溶けていない雪道も多くなってくる
スキー場前の道は真っ白な雪道だった

 試しにTCSをOFFにしてみると、やはり加速時の空転は増えがち。ただ、表面を滑っているというより、雪道に食い込み、掻き出しながら前に進んでいる、というのがしっかり分かる。ブレーキをかけると、ABSのおかげもあってほとんど滑走せずイメージどおりに減速でき、スタッドレスタイヤの威力をまざまざと感じさせてくれた。おそらく家族にとってはほとんど初めての本格的な雪道ドライブだったはずだが、何の不安も訴えられることがなかったのも印象的だ。

スタッドレスのおかげで、家族サービスはいつも以上に(?)大成功

 早朝に出発したのが幸いし、ほとんど渋滞にはまることなく午前中にスキー場に到着できた。3歳と2歳の子供2人は、スマートフォンでディズニームービーなり、しまじろうなりを見せておけば、2時間、3時間を超えるドライブでもとりあえずおとなしくしてくれる。ロードノイズが減っているおかげで、いつもよりスマートフォンの音量は低めでもちゃんと聞き取れたようだ。

草津国際スキー場に到着
子供1人1日1000円(保護者無料)のキッズパークでソリ遊びが一番の目的である
子供ばかり遊んでいて悔しいので、せめてという思いでかまくらを作った。腰を痛めた

 スキー場で子供たちのソリ遊びと雪遊びをフルサポートした後は、草津の温泉街に下りて体(と痛めた腰)を温め、薄暗くなり始めた16時頃に帰路につく。この日は比較的気温が高かったのか、朝は完全に雪道だったところも昼間に溶けてシャーベットかウェットの状態になっていた。アイスバーンが残っている箇所もゼロではないので油断はできないが、下りコーナーでも雪道をがっちり捉え、グリップ走行できるくらいの安定感があった。

ひとしきり遊んだ後は、山を少し下りて草津の温泉街へ
温泉街はよく除雪されているが、道幅が狭く急坂が多い。スタッドレスタイヤでも注意深く走りたい

 スタッドレスタイヤに変えてからの走行距離は約1500km。おそらくその99%は雪道以外での使用ながら、「スタッドレスでよかった」と思いつつ走っている距離は間違いなくそれ以上。安全と安心が得られるだけでなく、冬でも場所を選ばず行動範囲を広げられるという意味では、雪道走行が0.1%以下になったとしてもスタッドレスタイヤにする価値はある、と思えるドライブになった。

 毎週末のように家族サービスのため雪山をドライブする、というのは体力的に厳しいが、スタッドレスタイヤのおかげで「いつでもどんとこい」状態になれるのは、本当に心強い。今シーズンは少なくともあと何回かは、雪道かどうかにかかわらず家族サービスできればいいな、と思う。

日沼諭史

日沼諭史 1977年北海道生まれ。Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、現在は株式会社ライターズハイにて執筆・編集業を営む。IT、モバイル、オーディオ・ビジュアル分野のほか、二輪や旅行などさまざまなジャンルで活動中。著書に「できるGoPro スタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)などがある。2009年から参戦したオートバイジムカーナでは2年目にA級昇格し、2012年にSB級(ビッグバイククラス)チャンピオンを獲得。所有車両はマツダCX-3とスズキ隼。