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【SUPER GT第6戦鈴鹿1000km】15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT、ポール獲得インタビュー

1分47秒456でコースレコード。道上監督、武藤&ターベイ選手に聞く

2016年8月28日 決勝開催

 日本のモータースポーツシーンにおいて真夏の祭典と言えば、2輪なら鈴鹿8時間耐久であり、4輪であればインターナショナル鈴鹿1000kmとなる。かつては全日本スポーツプロトタイプカー選手権の1戦として開催されていたが、現在ではSUPER GTの1戦として開催されている今年で45回目を迎える伝統のレースだ。

 格式、そしてレース距離自体も通常のSUPER GTのレース(300km)と比較して3倍以上となることなどから、ポイントも加算されており、通常1位で20ポイントのところが25ポイント、通常2位が15ポイントのところ18ポイントなどエクストラポイントも得られることから、多くのチームにとってシーズン中で最も勝ちたいレースと言っても過言ではない。

2016年シーズンのSUPER GTで、ホンダ勢初のポール獲得となった15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT(武藤英紀/オリバー・ターベイ組)。1分47秒456で、鈴鹿サーキットのGT500コースレコードとなった

 8月27日に鈴鹿サーキットで行なわれた鈴鹿1000kmの予選では、別記事で既報のとおり、GT500は15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT(武藤英紀/オリバー・ターベイ組、BS)が1分47秒456のコースレコードでポールポジションを獲得し、GT300は18号車 UPGARAGE BANDOH 86(中山友貴/山田真之亮組、YH)が1分57秒876でポールポジションを獲得した。

 本記事では、GT500でホンダ勢として今シーズン初めてポールポジションを獲得した15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTの2人のドライバー、武藤英紀選手、オリバー・ターベイ選手、そして道上龍監督に話をうかがってきた。

フリー走行、Q1、Q2といずれも最速タイムをマークして鈴鹿を圧倒した15号車

道上龍監督

――フリー走行、予選1回目(Q1)、予選2回目(Q2)とすべてのセッションでトップタイムを叩き出して、ポールポジションを獲得、完璧な日でしたか?

道上監督:言われてみれば確かに。非常にいい日だった。以前鈴鹿で行なわれた合同テストでトップタイムをマークした調子を、そのまま朝のフリー走行に持ち込むことができた。今日はこれでダメならもう後はないぐらいの気持ちで取り組んだ。英紀のコメントも「非常にいいです」と、何も変える必要はないぐらいだった。フリー走行でタイムができたので、クルマのセットはほとんど触らず、車高の好みが2人のドライバーで違うのでそれを変えるぐらいで済んだ。

――今回もオリバー・ターベイ選手がQ1担当、武藤英紀選手がQ2担当だったが、うまくいった。また、今回持ち込んだミディアム、ソフトタイヤのうちどちらを使ったのか?

道上監督:前回の富士戦でもオリバーがQ1、英紀がQ2という担当にした。そのときはうまくいかなかったのだが、今回はオリバーも乗れてるし、朝に速いタイムが出せたので、それでいけると考えた。英紀も緊張していたとは思うが、走り出せばよりいいタイムを出せてよかった。今回の予選ではQ1でも、Q2でもミディアムを利用した。

1分47秒456のコースレコードを記録した武藤英紀選手(ポールポジション記者会見より)

――武藤選手は非常にプレッシャーのかかる場面となったが?

武藤選手:非常に緊張した。午前中のフリー走行で1分47秒9が出たのだが、そのラップはミスがありながらこのタイムが出たので、47秒台の半ばぐらいまではすぐいけるのではという感触があり、いけると思っていた。

――セクター3では本山選手の46号車に詰められるシーンがありましたが……

道上監督:第1、第2セクターは順調にタイムを刻み赤、赤(筆者注:最速タイムをだすとタイミングモニターに表示されるセクタータイムが赤く表示される)で来ていたが、第3セクターでは46号車が速くて、サインガードにいるスタッフとこれは厳しいかもしれないなと話していた。ところが、計測ラインを超えたら46号車よりも0.1秒速いタイムを出しており、正直みんなビックリした。一体どういうラインを通ってきたのか……(笑)。

初のポールポジション獲得となったオリバー・ターベイ選手(ポールポジション記者会見より)

――ターベイ選手のQ1はどんな感じだったでしょうか? 決勝はどうなると予想されていますか?

ターベイ選手:フリー走行のGT500占有時間で、タイヤを試せたのがよく、Q1に自信を持って臨むことができた。タイヤのライフを考えると、最初のアタックラップがベストで、そこにフォーカスしていた。自分が使ったミディアムタイヤはバランスもよく作動していた。明日(決勝)は天気次第だと考えている。天気が崩れてきて路面の温度が下がってくればソフトタイヤがよくなるだろうし。いずれせよ天気次第だ。

――Q1とQ2の間にターベイ選手からのフィードバックなどをもとにセッティングの調整などはあったのか?

武藤選手:車高の調整はしたが、本当に味付け程度。オリバーのコメントがなくてもやった変更程度のことしかしていない。今回は本当にクルマのセットアップが決まっており、変にいじる必要もないと考えている。

決勝レースは天候次第だが、クルマは決まっているので濡れてても、乾いていても自信があると道上監督

――他のNSX勢と比較してどうなのか? 15号車だけ1分47秒456のコースレコードを記録するなどタイムが抜けている印象があるが?

道上監督:まわりに聞いてみると、「15が速くて頑張って削ったとしても0.2秒ぐらいで、追いつくのは難しい」と言われているみたいだ。実は鈴鹿の公式テストからそんな感じだった。ただ、ホンダ勢全体でデータなどは共有しているので、特にうちだけ何か秘密があるという訳ではない。

――今回はQ1、Q2ともにミディアムだったが、感触はどうだったのか?

武藤選手:あまり違いがなかったので。実は今朝タイヤチョイスを悩んだぐらい。午前中ソフトで行ったとき、渋滞につかまってタイムがまともに出せず、まともに評価ができていない状況だった。

道上監督:100号車で同じようなタイヤを試したところ、ピックアップがあったというフィードバックがあり、そういう話しもあったので、今回はミディアムをチョイスした。明日(決勝)はルールによりスタートタイヤはミディアムになるが、その後は天候や路面のコンディション次第。例えば、雨が降ってその後路面が乾いていくなどの状況になればソフトの方が作動温度に入りやすいと思うので、その場合はソフトという可能性もあると思う。

――ターベイ選手自身は今シーズンの進化についてどう評価しているか?

ターベイ選手:僕たちは今シーズンものすごく進化している。エンジンはドライバビリティが大きく改善されているし、シャシーも大きく改善されている。正しい方向に進化していると思っている。(エンジンとシャシーどちらの方が進化しているかと問われて)どちらもだ。

――武藤選手はどうか? また、コースレコードを塗り替えたことで、コースレコードのホルダーになるがどんな気持ちか?

武藤選手:去年まではハイブリッド積んでいたが、その段階としてはかなりいい状況にまで熟成してきた。しかし、今年はそれを降ろしたのでエンジンパワーが足りなくなり、重量配分も変わってきて難しいことになるとはシーズン前から予想していた。僕たちとしては新しいクルマでの1年目だと考えて取り組んでいる。そうした中で、鈴鹿サーキットというドライバーにとって特別なコースでポールを獲れたことは嬉しい。コースレコードホルダーになってことは、今後数年破られなかったりすれば嬉しいと思うようになるかもしれない。

――決勝のレース展開をどう予想しているか?

道上監督:明日(決勝)の展開は雨が降るか次第。雨が降ると後ろの方を走っているクルマは水煙で見えなくなるが、先頭のクルマは300が出てくるまではそれを気にせず走ることができるのため有利になる。僕たちのクルマは非常に決まっており、ウェットを走らせてもわるくないと思う。

 もちろん、雨が降ると濡れたり、乾いたりが刻々と変わっていくので難しい面はあるが、今の状態のクルマだと正直濡れてても、乾いててもどちらの路面でもいけると思う。

 英紀も言っていたように、鈴鹿はチャレンジングなコースであり、そうしたコースでポールを獲れたことはうれしいこと。特に今週末は、新しいNSXが発表された直後で、そうしたレースで一番先頭からスタートできるということは意味があることだと考えている。十分に勝てるポテンシャルがあるので、明日はきっちり勝ちたいと思っている。


 鈴鹿1000kmの決勝は、8月28日12時30分スタート。気象庁午前5時発表の三重県北中部の天気予報は、午前中は雨だが昼前からくもり。降水確率も午前中の60%から30%に低下する。