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【スーパーフォーミュラ最終戦】「昨年の悔しさをバネに強い気持ちで取り組んだ」。新チャンピオン・国本選手の記者会見

アンドレ・ロッテラー選手は最期のスーパーフォーミュラとなる可能性を示唆

2016年10月29日~30日 開催

「全日本スーパーフォーミュラ選手権 最終戦 第15回 JAF 鈴鹿グランプリ」は、10月29日~10月30日の2日間にわたり三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットにおいて開催され、レース1は国本雄資選手(2号車 P.MU/CERUMO・INGING SF14)が優勝し、レース2はストフェル・バンドーン選手(41号車 DOCOMO DANDELION M41Y SF14)がそれぞれ優勝した。また、注目されていたドライバー・チャンピオン争いは、レース1で優勝してポイントリーダーとなっていた国本選手が、レース2でも6位となったことで初めてのシリーズチャンピオンを獲得した。

 本レポートでは、レース終了後に行なわれたレース2の記者会見、そしてそれに引き続いて行なわれたシリーズチャンピオンの会見についてお伝えする。

アンドレ・ロッテラー選手はアウディWEC撤退の影響で、今回が最後のスーパーフォーミュラとなる可能性を示唆

左から村岡監督(チーム・ダンデライアンチーム)、アンドレ・ロッテラー選手、ストフェル・バンドーン選手、石浦宏明選手

──表彰台に上った3選手に今日の感想をお聞きしたい。

ストフェル・バンドーン選手(レース2 1位)

ストフェル・バンドーン選手:スーパーフォーミュラの最期になるレースで勝てたのは嬉しい。今シーズンは上がったり、下がったりと大変なシーズンだったけど、F1に昇格するのに必要な経験を積むことができたのは本当によかった。このシリーズは非常に経験の豊富なドライバーが揃っているレベルの高い戦いが繰り広げられているので、F1に向けてのいい準備になったと思う。

アンドレ・ロッテラー選手(レース2 2位)

アンドレ・ロッテラー選手:レースの結果はよかったけど、もう1つ順位を上げればチャンピオンだっただけに、複雑な気持ち。この最後のレースはわるくなかったし、本当に僕のベストを尽くしたレースだった。ただ、この最終戦にだけボーナスというポイントシステムでは優勝した人が沢山のポイントを持って行くので、いろいろ難しい。実際、僕も最後の最後で2位になってタイトルを失うということを経験している個人的にはクレイジーなシステムだと思っている。今ストフェルが最後のレースと言っていたけど、僕にとってもこのレースは最後のスーパーフォーミュラのレースになるかもしれない。ご存じのとおり、アウディがWEC(世界耐久選手権)から撤退することを決めたので、他のオプションを選ばないといけないかもしれないので……。

石浦宏明選手(レース2 3位)

石浦宏明選手:スタートはわるくなかったが、バンドーン選手がもっとよかった。セーフティカー明けのリスタートでも順位を失うことになって、あまりいいレースをすることができなかった。しかし、両方のレースで表彰台に乗れたし、それによってチームチャンピオンも獲れた。シーズン前から今年は国本選手も上位にこれるようにとチームで頑張ってきたので、もちろん本当は自分が獲りたかったが、シーズン前にチームで目標としてきたことが実現できたのはよかった。

村岡監督:最後のレースに勝てるというのは来年まで続くので気持ちがよい。ストフェルがF1に行くのは嬉しいことではあるけど、寂しくもある。ストフェルは初めて走る日本のチーム、異なる文化の中で苦労してきた。そしてチームも彼から勉強して、ヨーロッパのトップチームに少しは近づけたかと思うので、彼にお礼を言いたい。ただ、今アンドレの話を聞いててショックを受けた。彼やストフェルのようなスーパースターがいなくなって、スターがいないからお客さんが減ったなんてことにならないように、日本人のスーパースターを育てる努力を育てないといけないと不安に思っている。

──バンドーン選手に。セーフティカーが2回入ったけど、リスタートはうまくこなせていた。

ストフェル・バンドーン選手:セーフティカーが入ってリスタートになるのはレースにつきものだけど、誰にとってもオーバーテイクのチャンスなので、後ろにいるドライバーの動きを警戒していた。2回ともリスタートでギャップを作ることに成功したので、自分でもよい仕事ができたと思っている。

──2回目のリスタートでロッテラー選手が石浦選手をオーバーテイクした。それぞれに状況を教えてほしい。

アンドレ・ロッテラー選手:非常に近くなって、オーバーテイクのチャンスがあると思っていた。1回目のリスタートではうまくいかなかったけど、2回目のリスタートの時は彼がシケインでオーバーステアを出したので、それで抜くことができたんだ。

石浦宏明選手:アンドレが言ったとおり、1回目のリスタートは問題なかったけど、2回目はシケインの立ち上がりでミスをしてしまい、その瞬間に1コーナーでは厳しいだろうと感じるほどだった。自分のミスだ。

昨年悔しい思いをしたので、それをバネに今シーズンに臨んだと国本選手

 レース2の記者会見後には、初めてのシリーズチャンピオンを獲得した国本雄資選手とチームタイトルを獲得したセルモ・インギング・チームの立川祐路監督による会見が行なわれた。

立川祐路監督(左)と国本雄資選手(右)

──この1年を振り返った感想を教えてほしい。

国本雄資選手

国本雄資選手:長い1年が終わってほっとしている。昨シーズンがふがいない結果で終わり、今年は色々なことを変えないといけないという1年だった。開幕戦で2位になり、岡山のレース2で優勝できて、自分の中でも自信がついて、この最終戦で絶対チャンピオンを獲るんだという強い気持ちでやってきた。第1レースで最高のレースができたが、レース2ではうまくいかないレースになったが、まわりの状況を冷静に見ながら走った。去年、本当に悔しい思いをしたので、このタイトルにはとても重みがある。

 昨シーズンが終わったときに、来年誰がチャンピオンになるかなどを皆さんも予想したと思うが、自分だと予想した人は誰1人いなかったと思う。それでも自分としては今年は自分が獲るんだという強い気持ちでやってきた。苦しい時を支えてくれた関係者、声援を送ってくれたファンに感謝したい。

立川祐路監督

立川祐路監督:昨年は石浦選手がドライバータイトルを獲ってくれたが、チームタイトルの方は逃してしまったので、今年はなんとてもチームタイトルを獲るんだということを目標としてやってきた。なので、タイトルを獲ってくれた国本だけでなく、石浦も最後まで頑張ってくれた。今年は2人とも速くて結果を残せるシーズンになった。昨年、石浦がタイトルを獲ったことで、国本は非常に悔しい思いをして今年に賭ける気持ちがものすごく強かった。彼の昨年の不振はクルマ的に問題があることが分かったので、それをシーズンオフに修正し、今シーズンは2人ともよい戦いをしてくれた。そして何より2人を支えるスタッフ1人ひとりが頑張った結果でもある。毎年チーム力は上がっており、今日の結果は本当に嬉しい。

──国本選手は去年と比べて何が変わったのか?

国本雄資選手:クルマも変わったし、自分自身もすべて変えてきた。何が変わったかは自分でも分からないが、毎日1つひとつを積み重ねてきた結果だと思う。それは昨年本当に悔しい思いをしたので、勝つために必死になったことが大きい。いきなり何かが変わったというよりは、毎日髪の毛がちょっとずつ伸びる感じだ。

──今年1年間を振り返って、一番印象的に残ってる瞬間は?

国本雄資選手:今日のレース1のスタート。それだけ僕はあの瞬間に賭けていた。ものすごいプレッシャーだったが、最高のスタートができた。昨日はスタートに不安があったので、チームとトヨタで話し合ってもらって解決してくれた。本当にみんなの支えがあったと思う。

──レース中にチャンピオンシップの状況は把握できていたのか?

国本雄資選手:最後の方にバンドーン選手が1位で、ロッテラー選手が2位だということは分かっていた。アンドレに勝たれたらまずいなとは思っていた。最後の3~4周はそっちばっかり気になっていた。それでもなんとか獲れたのでよかった。

──レース1とレース2のスタート前では緊張の度合いは違っていたか?

国本雄資選手:いつも同じ。全レース強い気持ちで集中して戦った。

──立川監督に。国本選手が変わったところはどこか?

立川祐路監督:何かがというよりも、気持ちの面だ。昨年石浦がチャンピオンになり、同じチームのドライバーがよい成績を出したのにという状況で、今年も同じだったらドライバー人生終わるというぐらいの気持ちだったと思う。昨晩も両方のレースで石浦がポールポジションを獲った時には非常に悔しがっており、その気持ちはこちらに伝わってくるぐらいの状況だった。実際、レース1で1周目をトップで戻ってきた時には文字通り雄叫びをあげてた。チームの方もそれを感じ取って、彼のために頑張ろうという気持ちになっていた。正直、去年までは与えられた環境に乗ってというように見えたが、今年は自分の努力で引っ張るようになったのがよかったのではないか。

──国本選手に。セーフティカーが2回入ったが、特に2回目のリスタートでロシター選手に先行されていたが、ランキングについて意識はしていたのか?

国本雄資選手:1回目のセーフティカーが出たときには自分もピットに入る予定だったので、ロスなくいけた。ただ、コールドタイヤでセーフティカーの速度で走られるとタイヤの暖まりには不安があった。ランキングについての状況はチームから聞いて理解していたし、セーフティカー2回目のリスタートの時にはシケインの立ち上がりで遅れてしまったので、ロシター選手に抜かれてしまった。ただ彼と争う必要はないと自分で立て直して、無理にブロックしないで彼を行かせることにした。そこは冷静に計算していた。

──その後、ロシター選手が塚越選手に接触した時の状況は?

国本雄資選手:S字の1つめでロシター選手が行ってて、この先当たりそうだと思ったので引いた。

──今後ドライバーとしてどうなっていきたいか。目標を教えてほしい

国本雄資選手:日本で一番速いことは証明できた。もちろん来年もスーパーフォーミュラにも挑戦して、またタイトルを獲りたいが、やはり世界で戦えるようなドライバーになりたい。これからも努力を続けるだけだ。