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岡本幸一郎の首都高と第三京浜を結ぶ「横浜北線(K7)」を歩いてみた

3月18日16時開通

2017年3月18日16時 開通

ぐるっと回らずに済む

 筆者の生まれは富山だが、父の仕事の関係で幼少期は横浜の港北区に住んでいた。家から少し歩くと、県道12号「横浜上麻生道路」があり、その上に橋のようにかかってたのが第三京浜だった。まだ日産スタジアムができるずっと前のこと、あの辺りにある鶴見川の河川敷は雨が降ると路面がドロドロになって、父がクルマをはまらせて大変な目にあったことも記憶している。そして筆者は新横浜近くの小学校に1年生の終わりまで通い、富山の実家に戻って高校を卒業するまで地元で過ごした。

 次に横浜を訪れたのは11年後。大学受験のため、1987年の2月から3月にかけて、当時、父が勤めていた会社の社員寮があった生麦で過ごした。岸谷のやや高台にある法政女子高校のすぐ隣りで、今では立派なマンションが建っている。それからちょうど30年。生麦JCT(ジャンクション)~横浜港北JCT間を接続する首都高速道路の「横浜北線」(高速神奈川7号 横浜北線、K7)が3月18日16時に開通する。筆者にとってゆかりのある横浜の2つの地が、こうして結ばれることを感慨深く思っていた。

 そんな折、開通を控えて実施された報道向けの事前公開に参加するチャンスに恵まれた。開通後には歩いて細かく見ることなどできない、またとない貴重な機会である。概要についてはトラベル Watchでも「3月18日開通!! 首都高と第三京浜を結ぶ横浜北線(K7)を事前報道公開」の記事でお伝えしており、そちらとも併せて最新の都市高速の事情を、首都圏在住ではない人にもご一読いただければ幸いだ。

 現在、東京の世田谷に住んでいる筆者も、この横浜北線を頻繁に使うことになるのは間違いない。この道ができた恩恵が本当の意味で発揮されるのは、やはり「横浜環状北西線」も開通して東名高速道路までつながってからだろうが、横浜北線が開通してくれれば、今まではぐるっと横浜の中心部を経由しなければいけなかったところを大幅にショートカットできて、羽田空港をはじめ京浜湾岸部へのアクセス性が高まるのは言うまでもない。また、これまでの生麦JCTは大黒方面から東京方面には行けたのだが、横浜方面に行くことはできなかったところ、4方向に自由に行けるようになるのもありがたい。大きな進歩だと思う。

最新の防災設備を体感

トンネル内の各種防災設備を見学

 横浜北線では横羽線と第三京浜をつなぐ約8.2kmのうち、約7割はトンネル区間となる。となると、とりわけ火災が発生したときのことが心配なのだが、その対策となる防災設備を見学して、ここまでやっているのかと感心した。とにかく、いろいろ話をうかがうほどに、よく考えられているなと感心させられる。

非常口の扉はボタンを押すことで解放される

 トンネル内は上下2層構造になっていて、車道の下には万が一のときに避難するための安全空間(避難通路)が設けられていることにも驚いた。首都高では初めてというすべり台式の避難方法も実際に試すこともできた。ボタンを押すと非常口の扉が解放されてすべり台が現れる。煙が避難通路まで侵入するのを防ぐため、時間が経つと自動的に扉が閉じるようになっているそうだ。扉は電動ではなく金属製のおもりを用いており、例え停電していても開閉に支障をきたさないにようにしていることも初めて知った。

扉が開いてすべり台が登場。ここから2層構造で下にある安全空間(避難通路)に下りる
筆者も実際に滑ってみた
すべり台は階段などと比べて、足を怪我している人や足腰が弱ってきた高齢者でもスムーズに避難できるメリットがある。滑りきったら通路の指示に従って避難する

 非常電話は100m間隔、消火設備は50m間隔で設置されており、自動火災検知器や水噴霧設備もある。換気のためのジェットファンも火災発生時には空気の流れを変えて、煙の拡散を抑える機能もある。

泡消火栓のガンは非常に軽い

 消火設備では誰でも使えるようにと持ち運べる消火器も置かれているが、消火能力は壁面に設置された泡消火栓のほうがはるかに高いそうだ。その泡消火栓のガンは非常に軽いことも印象的で、これなら誰でも簡単に使えそう。いざというときに少しでも被害を小さく抑えられるよう、せっかく用意されたこうした設備を滞りなく使えるようにするため、できるだけ多くの人がある程度の知識を持っていたほうがよいと感じた。

 ただし、現場にいた職員によると、実際に火災があったときには、とにかくまずは命を守ることを優先してほしいとのことだったので、そこは念を押しておきたいと思う。

横浜港北JCTは乗り降りできない!?

横浜港北JCTの途中から。開通後には止まってゆっくり見ることはできない貴重な景色だ

 今回の事前公開では生麦方面から北上。新横浜のほど近くまで来るとトンネルを出て、上が生麦方面(上り)に、下が港北方面(下り)に向かう2階建て構造の「大熊川トラス橋」を通過して港北JCTに至る。橋を通り過ぎてからしばらくは、地上高のかなり高いところを進むことになる。

 取材当日はあいにく雪とみぞれが舞うような悪天候だったが、晴天時の眺望はなかなかのものらしい。いずれ走れる機会を楽しみにしたい。また、このあたりは地上の様子をよく知っているのだが、高い位置から眺めてどうなっているのかを見ることができたのも収穫だった。

 そして、最後に横浜港北JCTを見学。この2年ほどで第三京浜の「港北IC(インターチェンジ)」は大きく様変わりしていたのだが、こうして見ると、あたかも未来都市のようだ。

 ここで注意が必要なのは、横浜北線と港北ICは相互利用できない構造になっているということ。港北ICで一般道と接続しているのは、これまでと同じく第三京浜の玉川方面(上り)と保土ケ谷方面(下り)のみ。横浜北線の港北JCTまで来ると、第三京浜の上下方向に接続することはできても、一般道に対する乗り降りはできない。横浜北線の直接的な乗り降りは1つ手前の「新横浜出入口」で、そこから先は第三京浜の「都筑IC」、または「羽沢IC」となる。

 理想を言うと、アクセス性のよさからしてもこの場所で乗り降りできたほうが便利に違いなく、そんなことは設計者も重々承知していたはずだが、いろいろ事情もあったのだろう。ゆくゆくは乗り降りできるようになることを期待したい(編集部注:横浜港北JCTの出入り口整備は北西線工事と合わせて実施。将来的には北線、北西線の双方で乗り降り可能になる予定)。

 いずれにしても、横浜港北JCTはけっこう複雑な構造になる。使い慣れても合流には気を遣う必要がありそうだし、とくに初めて通過する人にとってはカーナビがあっても難易度が高そうだ。かといってほかに方法もないので、ひとまずは慣れるしかないだろう。

 ところで、個人的に願うのは、ぜひこの機会に制限速度を見直してほしいということだ。むろんこれは首都高サイドにお願いしても仕方がないのだが、この機に書かせてもらうと、とりわけ首都高の横浜方面は50km/h制限や60km/h制限という場所が多く、これはあまりに実態とかけ離れている。警察庁は一部の高規格の高速道路で規制速度の引き上げを検討し始めているそうだが、この流れをほかにもぜひ広げていただきたい。

 とにかく、多くの人にメリットをもたらす新しい道路がどんどん整備されていくのは実にありがたいことで、大歓迎である。横浜港北JCTでは今後を踏まえた各種工事が行なわれていて、見わたすと東名高速までつながる北西線の工事もすでに着手している様子がうかがえた。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催までにはすべてつながる予定らしいので、さらに便利になっていく。

 例えば筆者なら、箱根方面から羽田空港や、横浜方面から箱根方面に行き来することがしばしばあるのだが、このときに今なら保土ヶ谷バイパスを使うことが多い。保土ヶ谷バイパスは交通量が多く、渋滞していることもある。ところがこの道路が整備されれば、アクセス性は飛躍的に向上する。また、ルートが増えて交通量が分散すれば渋滞も減少して、渋滞による事故も減るはず。開通後の効果を大いに期待したいところだ。