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NEXCO中日本、金属腐食を抑制する「プロピオン酸ナトリウム」を活用した新たな凍結防止剤を開発

塩害が抑制されて橋梁などの構造物を長寿命化

2017年12月20日 発表

 NEXCO中日本(中日本高速道路)は12月20日、プロピオン酸ナトリウムを活用した新たな凍結防止剤を開発したと発表した。

 高速道路などでは冬期の走行における安全性を確保するため、以前から凍結防止剤として「塩化ナトリウム」を使用してきたが、1993年ごろからスパイクタイヤの使用が大幅に制限されたことなどを受け、塩化ナトリウムの使用量が増加。これに伴って橋梁の内部にある鉄筋などが塩害によって腐食するケースが増え、道路の劣化を抑制する凍結防止剤の検討が進められてきたという。

 富山県立大学、土木研究所寒地土木研究所と共同で開発を実施してきた新しい凍結防止剤では、塩化ナトリウムよりも金属腐食抑制効果に優れるプロピオン酸ナトリウムを採用。2015年度から現場での適用性を検討してきた。

 開発では経済性を考慮して、プロピオン酸ナトリウムを塩化ナトリウムと混合して使用する前提としてきたが、金属腐食性試験では比較試料として蒸留水、塩化ナトリウム、塩化カルシウムを使い、プロピオン酸ナトリウムと腐食減少量(mdd)を比較。蒸留水は8.6、塩化ナトリウムは22.5、塩化カルシウムは27.5、プロピオン酸ナトリウムは0.3という数値で、ほとんど金属腐食しないという結果が出た。また、プロピオン酸ナトリウムと塩化ナトリウムを混合した場合でも、重量比が2:8~1:9の間で蒸留水と同等という結果となり、金属腐食の進行を大幅に抑えられると結論づけられている。

 また、濃度20%の水溶液で実施した凝固点測定では、塩化ナトリウムの凝固点が-19.8℃、プロピオン酸ナトリウムが-17.0℃となり、プロピオン酸ナトリウムと塩化ナトリウム混合物(重量比8:2)は-18.9℃と、塩化ナトリウムの凝固点に近いことが分かった。

 このほかに作業性では、雪氷作業基地で市場に流通している粉末状のプロピオン酸ナトリウムを使用して水溶液を作製した結果、プロピオン酸ナトリウムが全体に飛散して作業性が著しく悪化。このため、プロピオン酸ナトリウムの形状を粉末状から1mm程度の顆粒状に変更して材料飛散の課題を解決したという。

 このような室内試験や雪氷作業基地における事前検討の結果から、塩化ナトリウムの一部をプロピオン酸ナトリウムに置き換えることで費用対効果の高い凍結防止剤として適用できる可能性が見出され、プロピオン酸ナトリウムを活用した新しい凍結防止剤を使うことで、橋梁などの塩害を抑制。構造物の長寿命化によってLCC(ライフサイクルコスト)の低減が期待されるとしている。

 今後は本線での試行散布を実施して、現場での課題への対応や効果の検証を行なう予定となっている。

 なお、プロピオン酸ナトリウム(分子式:CH3CH2COONa)は細菌や真菌の増殖を抑制する効果を持ち、主に食品保存料として使用されているプロピオン酸のナトリウム塩。国内における年間使用量は約36t。