西日本高速道路メンテナンス九州の「ロボコーン」。三角コーンを自動的に路面に設置・回収する特殊車両だ 高速道路調査会は、東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で高速道路関連の新技術や新工法などを紹介する展示会「ハイウェイテクノフェア2014」を11月20日~21日に開催している。このイベントではさまざまな展示が行われたが、そのなかから特殊車両などをピックアップして紹介する。
普段はあまり目にすることのない特殊車両が勢揃い
まず、会場内で注目を集めていたのは西日本高速道路メンテナンス九州の作業車「ロボコーン」。高速道路では車線規制を行うときに三角コーンを設置するが、これを自動的に設置・回収してくれる特殊車両で、15km/h前後で走行しつつ、車両後方に備えたアームで排出するコーンを掴み、等間隔で設置できる。回収時は設置時とは逆の手順となり、バック走行してコーンを回収していく。また上部のキャリアに標識を搭載し、作業員が標識を設置しやすいようにアシストする。
排出されたコーンは右側のアームで自動的に路面に設置される 西日本高速道路エンジニアリング九州はこのほかに、トンネル覆工点検システム撮影車「eQドクターT」も展示。この車両はボディーの後方とルーフ上にあるスリットからトンネルの片側車線全面を赤外線撮影し、トンネル壁面の傷み具合をチェックできる車両。同様の車両は従来から存在しているが、展示されていた車両では、従来より20km/h速い100km/hで走行しても検査ができるため、交通の支障になるとなく検査できる。また、検査解像度も向上し、0.2mmまでのキズやひび割れを自動的に検出できる。
ボディーの後方とルーフ上のスリットから赤外線を照射して、トンネル内のひび割れはどをチェックする 車両後方のハッチを開くと、助手席側に大型の撮影機材が見える 撮影機材は半円状のトンネル壁面を1度にカバーできるよう、角度を変えて4台設置されていた ダイナミックな装置が目を引いたのは、西日本高速道路エンジニアリング中国のブラストシステム。これは古くなって錆びたガードレールを自動的に研磨・塗装するシステム。トラックの荷台に研磨ユニットと塗装ユニットをそれぞれ搭載し、200mm~500mm/h前後で走行しながらガードレールのリニューアルが行える。すでに延長70kmほどで施工された実績があり、塗装の質にもよるが、再施工して10年前後は状態が保てるという。
西日本高速道路エンジニアリング中国のブラストシステム。専用の車両を使う必要がなく、一般的な8tトラックなどに搭載して運用できることもポイント 写真の左側が施工前の錆びた状態。中央のブラストシステムを挟んで右側が研磨と塗装を行ったあと。ブラストシステムをガードレールに吸着させ、移動しながら作業していく 荷台には、ガードレールから落とした錆の回収と研磨材の供給を行う操作を設置 研磨材には石を使用し、エアーポンプで吹き付けて研磨する 特装車などの製造を行っているトノックスは、路面性状計測装置を搭載した「TX-Road System」を展示。ルーフの車両後方側から張り出したアームに設置したレーザーラインプロジェクターにより、路面のひび割れやわだち掘れが測定できる。
トノックスの路面性状計測車「TX-Road System」 車両後方に伸びるアームに路面状況を測定するレーザー計測装置を設置。非使用時は屋根のドーム内に格納できる 車内には路面状況をリアルタイムにチェックするためのデスクとPC2台が搭載されていた NEXCO東日本(東日本高速道路)は、気象状態を測定できるシステムを展示。ルーフ部分に搭載された風向風速計や路温計、視界の距離を測定する視程計のほか、フェンダー内部には振動加速度計も取り付けられている。この車両を走らせることで、降雪や濃霧などのときにピンポイントで正確に状況を把握できる。また、防風柵の効果測定にも利用できる、冬期に融雪剤を散布するときには散布車両とデータ連係させ、必要な場所にだけ適切に散布が行えるようにできる。
電気自動車(EV)のリーフを利用した気象状態を測定できる車両 ルーフ上に風向風速計、視界の距離を測定する視程計などを搭載 フェンダー内に設置された振動加速度計。ブリヂストンと連携して路面状況のデータ測定などに活用される予定 各センサーからの情報は車内のモニターでチェックできる 高所作業車のメーカーであるワイケーは、トンネル内に設置したジェットファンをメンテナンスできる荷台昇降式運搬車「YX50TGL(仮名)」を展示。昇降式の荷台を伸ばしてジェットファンを左右からメンテナンスできる特殊車両。巨大な荷台が昇降する姿は圧巻だった。なお、車体を固定するジャッキを車体幅内に抑え、左右に出っ張らないようにしているのがポイントとのこと。
ワイケーの荷台昇降式運搬車「YX50TGL(仮名)」 車体を固定するジャッキが左右に出っ張らないように工夫しているとのこと ジェットファンを左右両側から同時にメンテナンスできる車両だ 無人ヘリやロボットカーなどで高速道路の状態を検査
特殊車両以外で会場で目立っていたのは、UAV(無線操縦の無人ヘリ)や小型のロボットカーなどを使った路面や橋脚の状態を把握するシステム。どの企業もまだ開発段階ではあるものの、2~3年先にはこのような機器が高速道路で活躍しそうだ。
首都高速道路が開発したロボットカーの「やもりん」。タイヤに内蔵する磁石で橋脚に張り付き、状態をカメラで撮影できる 同じく首都高速道路によって開発されたロボットカー。右側は狭い場所をキャタピラで走行し、左側は張られたワイヤーに沿って動くタイプ NEXCO東日本が開発中の全自動ロボット型空中俯瞰撮影システム。自動的に飛行して道路の状況や災害時の被災状況などを調査できる。自己診断機能を搭載し、強風などで飛行が困難だと判断したときには飛行を中止する こちらもNEXCO東日本が開発中の球体型スキャニングロボット。球体型ながら空を飛んで移動する自動操縦ヘリ。高所の狭小部に入り、周囲を囲んでいる籠のようなショックアブソーバーを使って対象に接触しながら移動して撮影を行う NEXCO西日本(西日本高速道路)もヘリによる空中撮影と状況把握システムを開発中 自走ロボットではないが、面白い展示だったのがニチレキの「床版キャッチャー」。レーダーを搭載した台車を使い、アスファルトの下にあるコンクリートのダメージがチェックできる。アスファルトを剥がずに状態が把握できる非破壊検査がポイント 「床版キャッチャー」のレーダーでチェックすると、床版のダメージが画像として表示される。赤くなっているのがダメージのある部分 そのほか会場で気になった展示
そのほかでは、ダイヘンのブースで展示されていた電気自動車を無接触で充電できるシステムや、黄色いボトルの木工用ボンドでおなじみのコニシが展開する高速道路用の接着剤、工事現場などで見かけることが増えた“キャラクターを支柱に使う単管バリケード”を作っている仙台銘板など、会場では多彩なジャンルの道路関連製品が展示されている。
ダイヘンの電気自動車を無接触で充電するシステム。駐車場に電気自動車を停止させるだけで充電可能で、駐車位置が少しずれても充電できるのが特徴。一般道を走る車両に搭載するというより、工場などで利用される専用車両などへの普及が期待されている 充電用のスタンド。電磁誘導には13.56MHzという低めの周波数を使っており、人体や電子機器などに対する影響は少ないとのこと。標準で3.3kW、急速充電で7kWで充電できる コンクリートの剥離を防ぐために木工用ボンドでおなじみのコニシが開発したシート。すでに10年前後の耐久性の実績がある 建物や橋脚のひび割れを接着する専用ボンドもリリースしている よく見かけるようになったキャラクターを支柱にデザインした単管バリケードは、仙台銘板などのメーカーが作っている。なお、仙台銘板に申し込めば一般ユーザーでも購入できるとのこと。1個の価格は3000円前後 くまモンバージョンも展示。上部に設置されたLEDライトは電波時計で点滅をコントロールしており、並べると点滅が自動的に同期するとのこと