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NEXCO東日本、UAV(無人飛行体)を使って高速道路の橋梁点検
全自動ロボット型空中俯瞰撮影システムを構築
(2013/11/20 13:13)
NEXCO東日本(東日本高速道路)は11月19日、UAV(無人飛行体)を使った「全自動ロボット型空中俯瞰撮影システム」のデモンストレーション飛行を、群馬県の関越自動車道 利根川橋で行った。
これは、UAVによって高速道路の橋梁点検を行うための実証実験。従来は、高速道路の橋梁点検では、車線規制を行った上で専用車両を使って人の目によって(目視で)行っていた。しかしこの方法では車線規制をする時間帯が限られる中、1日に300m程度の範囲しか点検できない。今回デモを行った利根川橋は全長約500mあるため、目視によって点検するとなると2日間にわたって車線規制を行う必要がある。UAVならば車線規制は必要なく、時間も大幅に短縮できる見込みという。
UAVによる橋梁点検業務はNEXCO東日本の「スマートメンテナンスハイウェイ」(SMH)構想の一環として実証実験が行われているものだ。SMHは昨年12月に発生した中央道笹子トンネル事故などを踏まえ、ICT技術や機械化などによって高速道路資産の老朽化に備え、長期的な道路インフラの安全性を確保することが目的だ。2020年に道路交通管制センターと連動して運用予定の「インフラ管理センター(仮称)」を導入し、各地の高速道路の状況をデータベース化し一括管理する予定。
今回使用されていたのはカナダAeryon製UAV「Scout」をベースとしたもので、4つのローターで垂直離陸するVTOLタイプだ。本体サイズが80×80×20cm(縦×横×高さ)で、探査時の重量は約1.2kg。小型で元々軍事用に開発されたものだが、東日本大震災で道路が被災し、土砂崩れなどが発生した際の教訓として、災害発生箇所を素早く確認するためにUAVを使えないか、ということで導入されたという。それを日常的に橋梁点検等でも利用できるのではないか、ということで実証実験が行われているのだ。
デモの会場となった利根川橋では、タブレット端末からの指示を受け取ると、UAVが自動的に離陸を開始。橋梁の状態を動画や静止画で撮影したり、地上の様子を撮影しての地図作成などが披露された。地図作成は撮影エリアを指定するだけで、自動的にUAVその範囲の撮影を行ってくれ、写真撮影時に位置情報なども保存されるため写真測量にも応用できる。
UAVは操縦桿などによって人間が直接操作するものなら数万円から購入できるものもあるが、この機体は半自動で制御されるもので価格は約1000万円。人間が操縦桿で右へ左へ操縦する必要はなく、操作用のタブレット端末に表示された地図上で移動地点や高度、カメラの方向などを指示するだけで、細かな飛行制御はUAVが自分で行う、いわばロボットだ。
上空で横風が発生していても指定地点で自動的にホバリングして撮影を行える。地上から見ると上空で静止しているように見えるが実際には常に横風や乱流に逆らって姿勢を維持しながら飛行しているのだ。運用可能な風速は通常時が13.8m/sで、突風には22.2m/sまで耐えられる。風速が許容範囲を超えると自動的にベースに帰還する機能もある。バッテリ駆動時間は20分ほどで最高高度は約500m。無線はIEEE 80.211b/gに対応。
現在の機材ではカメラは下方についているが、将来的には上方にもカメラを設置して、橋の下側を点検できるようにAeryonと協同開発中という。ただ、橋梁の下部に入るとGPSの精度が低くなるため、その対策として地上からガイダンスを送るなどの研究もしているという。また現在は動画用と静止画用のカメラユニットは別々で交換するためには着陸する必要があるが、これも将来的には1つのユニットで2系統の機能を持たせるよう研究中という。
NEXCO東日本では2014年度を目処にUAVによる橋梁点検を順次開始する予定。