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ヤフー、日産・神戸市などとAIを活用したビッグデータ連係の実証実験開始
2019年に事業化を計画。日産は販売台数の予測やユーザーニーズの調査に活用
2018年2月6日 21:20
- 2018年2月6日 発表
Yahoo! Japanのブランドでインターネットサービスを提供するヤフーは、東京都内で記者会見を開催し同社が”DataForest”(データフォレスト)と呼んでいる企業間ビッグデータ連係の実証実験を2月6日より本格的に開始したことを明らかにした。
現在IT業界では、ビッグデータと呼ばれる巨大なデータを活用して、マシンラーニング/ディープラーニングなどのAIを活用した計算手法を利用してデータを解析することで、ユーザーの趣向を調査したり、未来の市場動向を研究するということが一般的に行なわれるようになっている。日本最大のWebサービスであるYahoo! Japanを提供するヤフーでも、その蓄積されたデータを元に様々な解析を行なっており、これまではそうしたデータを同社の顧客になる広告主などに提供してきた。
今回の発表は、そこからヤフーとパートナー企業、そしてパートナー企業同士がデータを解析したことで得られる成果を持ち寄り、企業や地方自治体などが抱えている課題を解決していこうという壮大な取り組みになる。
ヤフーによれば、2019年に事業化を計画しており、日産自動車、江崎グリコ、Jリーグ(日本サッカーリーグ)、神戸市、福岡市などの企業、団体、地方自治体などと実証実験を2月6日より開始していくとのことだ。
ビッグデータを活用することで、ユーザーによりよいサービスを提供していける
冒頭で挨拶に立ったヤフー 副社長執行役員 最高執行責任者 コマースグループ長 川邊健太郎氏は「現在ではデータは米や原油に例えられるほど重要なものだとされている。それを活用することで、人間の医師以上の精度で腫瘍を検出したりと様々な使い方が想定されている。Yahoo! Japanにとってもデータは重要で700億以上の月間ページビューから来るデータを活用して、ユーザー1人ひとりに適したサービスを提供することなどを可能にしている」と述べ、企業や団体などが様々なサービスを提供していく中で生成される巨大なデータ(ビッグデータ)を活用して、ユーザーなどによりよいサービスを提供していくことが重要になっていると指摘した。
その上で「データをYahoo! Japanだけで使うというのはもったいない。そうしたビッグデータとAIを活用することで研究機関をサポートすることができるし、他の企業と協業していくことで業績を改善したり、地方自治体であればよりよい公共サービスを提供できるようになる。そうしたYahoo! Japanと他社との組み合わせで驚きのサービスが提供できるようになる」と述べ、Yahoo! Japanが持つそうしたビッグデータと他の企業が持つデータを組み合わせて活用していくことで、新しいサービスや製品展開などが可能になるはずだと説明した。
川邊氏によれば、活用されるデータはユーザーの個人情報に関するデータを省いたもので、プライバシーに配慮して行なわれているという。将来的に、ユーザーの個人情報を利活用した方が結果的にユーザーのメリットにもなると判断したときには、そうする可能性を排除していないそうだが、仮にそうする場合には、法に沿ってユーザーの同意を得てから行なうなどすると説明した。
ヤフーだけでなくパートナー企業と協力して新しい形のビッグデータ利用を訴求
次いで説明に立ったのはヤフー 執行役員 データ&サイエンスソリューション統括本部長 チーフデータオフィサー 佐々木潔氏。佐々木氏は「ヤフーはデータカンパニーに変革しようとしている。このため、自社で抱えているデータサイエンス人材を合計すると500人程度になっており、保持しているビッグデータは日本で有数だし、その分析に利用するHadoopは国内最大規模。また、ビッグデータ利活用の論文も多数だしているなど、成果がでている。具体的な例としては、スマートフォン向けのトップページにディープラーニングを活用した分析機能を追加することで、初めてサイトに来る人にも最適なコンテンツが表示できるようになっているなどして、滞在時間を増やしている」と述べ、ヤフーが従来のインターネットのサービスを提供する企業からデータを利活用する企業へと変貌を遂げようとしていると強調した。
そしてそうしたデータを活用した新しいビジネスの形として、佐々木氏によればヤフーのデータ活用というのは従来マーケティングに主に活用されてきた。例えば、従来そうしたヤフーの分析データは同社の顧客になる広告主などに提供されてきたが、今後はその上流にある「企画・開発」「生産」「物流」といった分野にも適応させていきたいという。
例えば、清涼飲料水の例だと、年間3000もの新製品が発売されているが、定番として残っていくのは2つぐらいしかないという。それをデータを利活用することで、より消費者に受け入れられる製品を企画段階で可能にするなどを想定している。
その時に重要になってくるのが、ヤフーが持っていないデータをもっている他社との協業になるという。そこで、ヤフーとそれらの企業、あるいはそれらの企業同士がつながる仕組みが重要になってくると佐々木氏は説明した。
日産ではヤフーとの実証実験で販売台数の予測、長期的なニーズの変化、ブランドイメージの訴求を目指す
そこで、今回ヤフーと協業して、そうしたビッグデータの利活用の実証実験を行なっていくパートナーとして、日産、江崎グリコ、J・リーグ、神戸市、福岡市という企業、公益法人、地方自治体が紹介された。ヤフーによれば、今回発表されていないが他にも参加している企業はあるとのことで、十数社・団体で実証実験が行なわれていくという。
日産の事例では日産自動車 コーポレート市場情報統括本部 エキスパートリーダー 高橋直樹氏により説明が行なわれた。高橋氏によれば日産のコーポレート市場情報統括本部は市場調査を担当する部署で、役員などが戦略を立てるのに必要な情報などを世界各地の拠点から吸い上げて、調査分析する役割を果たしているという。
高橋氏は「ビッグデータがでてきて、消費者のニーズをつかめるようになりつつある。SNS、比較サイトの情報、そして将来的にはコネクテッドカーの情報を活用して、消費者のデータを持っているヤフーと協業していきたい」と述べ、ヤフーとの実証実験では販売台数の予測、長期的なニーズの変化を捉えること、ブランドイメージの把握などを行なっていくと説明した。
このほか、J・リーグのOpenIDの取り組みを活用した事例、神戸市の事例などが紹介されたほか、江崎グリコや福岡市の取り組みなどがビデオで紹介された。ヤフーによればこのほかにも交通事業者との取り組み、テーマパーク事業者との取り組みなどが行なわれているという。
2018年に実証実験を行ない、2019年にビジネスとして事業化を目指す
ヤフーの佐々木氏はこうしたヤフーの企業間ビッグデータ連係サービスを「DataForest」(データフォレスト)とよび、2018年に実証実験を行ない、2019年にビジネスとして事業化していきたいと説明した。事業開始時にはヤフーと事業者だけでなく、事業者(企業、自治体など)同士の連携も視野にいれていると説明した。現在実証実験を一緒に行なう事業者を募集中とのことで、同社のWebサイトから申し込むことができる。