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独ポルシェ、クラシックモデルのパーツに3Dプリンタ活用

「959」など希少モデルのパーツも3Dプリンタで

2018年2月14日(現地時間) 発表

3Dプリンタで生産された樹脂製パーツのクランクアーム(ポルシェ964)

 独ポルシェAGのクラシックモデル専門部門 ポルシェ クラシックは、希少なクラシックカーの愛好家にとって問題となる「スペアパーツ入手不可」というパーツ供給問題への解決策として3Dプリンタを活用していることを明らかにした。

 現在、ポルシェ クラシックでは約5万2000点のパーツを揃えているが、何らかのスペアパーツの在庫が少なくなったり在庫切れになると、オリジナルのツールを使って複製しているという。

 また、需要が多いパーツに関しては新たなツールを作ることもあるが、非常に限られた数のみ必要とされるパーツの供給を確保することは、ポルシェ クラシックのエキスパートにとって大きな課題となっていた。

 こうしたスペアパーツの生産に3Dプリンタを導入するメリットは、生産するパーツの3次元デザインデータや3Dスキャンがあれば製造を開始できること。注文があり次第、必要に応じてコンポーネントを製造できるので、ツールと保管コストの節約にもなる。

生産台数292台「959」のクラッチリリースレバーを3Dプリンタで製造

 現在、入手不可能となっているポルシェ「959」のクラッチのリリースレバーは、非常に高い品質要件を満たす必要があるが、このスーパースポーツカーは292台しか生産されなかったため需要はほんのわずか。検討に値する唯一の製造方法として考えたのが「レーザー溶融法」。

 リリースレバーを製造するためには、まずコンピュータ処理によって厚さ0.1mm以下の粉末工具鋼の層で処理プレートを覆う。そして、不活性ガスの中で、高エネルギーのライトビームを用いて希望する場所で粉末を溶融させ、スチール層を作り出す。こうして、一層ずつ完全な3次元コンポーネントを製造する。

 プリントされたリリースレバーは、3t近い負荷をかけた圧力試験と、その後の内部欠陥を調べる断層撮影法による検査をクリア。最後に、テスト車両に取り付けられたレバーを用いた実地試験と徹底的な走行試験により、コンポーネントの完璧な品質と機能を確認したという。

金属パーツはレーザー溶融法、樹脂製パーツはレーザー焼結法で

樹脂製パーツのリアビューミラーのミラーベース(Porsche 911 Speedster)
樹脂製パーツの燃料キャップガスケット(Porsche 959)
金属製パーツの排気システム熱交換器ブラケット(Porsche 356 Bおよび356 C)

 このようにスチールや合金製のパーツについてはレーザー溶融法を用いて製造。一方、樹脂製コンポーネントについては、SLSプリンタを用いて製造される。「SLS」は「レーザー焼結法」の略といい、これは融点の直前まで材料を加熱し、残余エネルギーを用いレーザーで目的とする箇所の樹脂粉末を溶解するという方法。

 こうして再生産されたパーツは、実際にパーツを取り付けて試験することでサイズとフィット感の精度を確保、適用分野によっては樹脂製パーツは、オイル、燃料、酸、光への耐性を有する必要がある。全てのパーツは、最低でも元の製造期間の品質要件が課せられるが、さらに高い基準をクリアするという。

 ポルシェ クラシックでは、これまで一貫して肯定的な結果が得られてきたことを踏まえて、現在では3Dプリントを使って8つのパーツを製造中。さらに、20のコンポーネントの製造についても3Dプリントが適切であるかどうか試験している最中という。