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アクティオ、建設現場の安全訓練に向けたスーパーリアルな5K新VRシステム「Safety Training System VR of AKTIO」

座学では実感が薄い作業場の不安全行動や危険について学ぶ課題をVRで解決

2018年4月20日 実施

 建設機械レンタル大手のアクティオは4月20日、建設現場において人命を守るために重要な安全教育や安全訓練のために開発した新VRシステム「Safety Training System VR of AKTIO」を公開した。

 建設業界では作業場の不安全行動や危険については座学で学ぶことがほとんどだったが、座学では実感が薄いという課題があり、その課題を解決するために業界初となる5K解像度のスーパーリアル映像で、安全に危険な状態を体感することができるVRシステムとシナリオを開発し、7月2日よりサービスを開始する。このシステムにより作業員の人命を守るために効率的で効果的な安全教育を提供できるとしている。

 このシステムの企画原案、VRコンテンツ開発とレンタルをアクティオが、クラウド連携やVRコンテンツなどのシステムインテグレーションはACCESSが、高精細CGによるVRコンテンツ開発をビーライズが行ない、VR機器はStarVR Corporationが担当している。

 4月20日、アクティオ本社にて報道関係者を対象とした新VRシステムの発表会を開催したので、その模様をレポートする。

日々現場でヒアリングをしている専門スタッフが語る開発経緯

 アクティオは、あらゆる建設現場に必要なレンタル品の提供を可能にするためにラインアップの充実と豊富な保有台数、全国に約400カ所の支店・営業所・サービス工場を設置した整備体制を整えているが、単に建設機械のレンタルにとどまらず、提案のある建設機械レンタル「レンサルティング」を提唱している。昨今のICT(情報通信技術)活用による生産性向上や安全性向上「i-Construction」に関しても注力しているが、従事者の安全確保が第一と考え新VRシステムを開発した。

藤澤氏によるプレゼンテーションの模様。建設業における死亡災害種類

 作業場の不安全行動を疑似体験させることで安全に対する啓蒙活動を推進するVRシステムの開発経緯について、アクティオ レンサルティング本部 IoT事業推進部 課長の藤澤剛氏は「建設業の労働災害における死亡者数はここ数年減少傾向でしたが、若手が増えてきたことやベテランの減少で安全管理に対して伝える方が減ってきていることで2017年は増加に転じるなど、まだまだ事故は絶えません。事故の種類としては墜落(39%)、飛来落下(12%)などが主な原因となっています。しかし、安全について座学で勉強したり先輩に聞いたりしても、実際に自分で体験していないから身に付かないのが現状問題としてあります。そこでVRの技術を使って不安全行動を体験していただくことによって、どこに危険カ所があるのか、どのような行動をとるとどんな結果を招くのかを疑似体験することで、安全意識の高揚に繋げたいと考えています」と語り、「アクティオとしては現場からの事故を無くしたいとの願いから、安全であったり安心であったり、今までもこれからもサービスの提供を行なう中の1つとして、このVRを使えればと考えています」ともコメントしていた。

 また、藤澤氏は「今回は高所作業。まずは死亡事故の多いところから始めますが、労働災害としてみればもっと違うものもありますので、もっとコンテンツを増やしていきたいと思います」と、農業や林業分野での利用も考えていると話し、建機メーカーのシステム連携などの協業については「VRを利用した機材の遠隔操作なども想定しています。建設現場でのニーズがあるもので、技術で賄えるものであればどんどん進めていきたい」と、今後の展開についても話した。

ICTやIoT化について、現場のニーズを満たせるような展開をしていきたいとのこと

まさにリアル、5K映像で「危険」を疑似体験

 使用する機材については、専用のVRヘッドマウント、ヘッドフォン、PC、専用カメラ2台と三脚で1セット。藤澤氏は「今回はStarVRのディスプレイを採用しています。これまでのVRですと視野角が110度レベルから150度が主でしたが、今回のシステムでは水平210度の視野角があるので横眼で観ても画像が確認でき、高い没入感を実現しています。5Kの有機ELディスプレイなので今までにない美しさとリアルさ、実際の目視と変わらないレベルの美しさを映し出すことで没入感を高めています。また、ヘッドフォンを使い周囲の音を遮断することによってVRの世界に没頭できるので、安全に不安全行動が体験できるようになっています」と機材構成について説明。また「墜落の事故が多いことから、焦点を高所作業車に当て、転落や転倒などのコンテンツを協力パートナーと作成しています」とも話していた。

ヘッドマウント仕様

発表会場に用意されていた機材。5K映像によるリアルさが最大の特徴

ディスプレイ:5.1インチ AMOLED ディスプレイ
解像度:5120(片眼2560)× 1440ドット
リフレッシュレート:60~90Hz
視野角:水平210度、垂直120度
サイズ:259×144×91mm
重量:530g

 実際の新VRシステム体験に用意されたシナリオは「高所作業中の事故」。高所作業車上で照明の点検を行なっている際に倒れるというものであるが、発表会に訪れていた記者たちも実際に体験し、転倒シーンで倒れそうになるなど、映像のリアルさに驚いていた。アクティオ 広報課 課長である進浩氏は「今回の発表会では高所作業における不安全行動シナリオを用意していますが、今後は開発数を増やして行き、バックホー(オペレータ向きにバケットが装着されたショベル)や大型重機での事故も視野に入れて拡充をしていきたいと思っています」ともコメントしていた。

アクティオ社員によるデモンストレーション。VRによる転倒で体のバランスを崩していたが、社員による「やらせ」ではない
こちらは発表会に来ていた記者による体験シーン。バランスを崩して倒れこみそうになる人がほとんどなので、サポートするスタッフが側近についている
こちらがアクティオ提供のCG。この精細に描き込まれている映像が動くのだから、被験者が倒れるのも理解できる
体験シーンの動画。
こちらも体験シーンの動画。被験者の誰もが体のバランスを崩すほどのリアルな映像は、体験後に皆が「すげぇ」とひと言つぶやくほど

 このVRを利用した新システムは、建設事業者での安全大会、従業員研修、中途採用研修などの教育の場での使用を想定し、教育用レンタル費用は30万円/3日間。1年間の契約目標は50社とのことだったが、シナリオの拡充によって、さらに多くの利用を見込んでいるようだ。今後の展開に大きく期待したい。

【お詫びと訂正】記事初出時、アクティオ 広報課 課長 進浩氏の名前の表記に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。