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Intel、フェラーリと協力して北米のフェラーリ・チャレンジのレース中継にAIを活用

レース中継の未来を変える自動タグ付け機能をAIで実現

2018年5月23日~24日(現地時間)開催

 半導体メーカーのIntelは、同社の半導体を利用してAI(Artificial Intelligence、人工知能)開発を行なっている開発者向けのイベント「AIDC(AI DevCon)」を、5月23日~5月24日(現地時間)に米国カリフォルニア州サンフランシスコのThe Palace of Fine Artsで開催した。

 本イベントではIntelのAI向け半導体のソリューションが紹介されるなどして大きな注目を集めた(そちらに関しては僚誌PC Watchの記事をご参照いただきたい)。

 この中でIntelは、フェラーリが行なっているワンメイクレース「フェラーリ・チャレンジ」の北米シリーズに同社のAI技術を適用していくと発表し、そのデモを行なった。

北米のフェラーリ・チャレンジに利用されているレーシングカーのフェラーリ「488 チャレンジ」

フェラーリ・チャレンジの映像にAIが自動でタグを付け、レース中継の未来を変える

 Intel 取締役 兼 AI製品事業本部 本部長 ナビーン・ラオ氏は、5月23日の午前中(現地時間)にAIDCの基調講演に登壇し、同社のAI向け半導体ソリューションのアップデートなどについて説明した。その後半にラオ氏は、同社が2018年1月のCESで提携を発表した北米のフェラーリ・チャレンジにおけるAIの活用に関して説明した。

Intel株式会社 取締役 兼 AI製品事業本部 本部長 ナビーン・ラオ氏(右)と同社 AIデータサイエンティスト アンディ・ケラー氏(左)

 フェラーリ・チャレンジとはフェラーリがグローバルに行なっているワンメイクレースで、欧州、アジア太平洋地域、北米などで開催されている。北米ではデイトナやオースティンなど世界的にも知られたレーシングコースなどを利用して全6戦が行なわれ、上位ランカーが11月にイタリアのモンツアサーキットで行なわれるファイナルレースに出場するという仕組みになっている。利用されている車両はレース専用車両になるフェラーリ「488 チャレンジ」で、ピレリのワンメイクタイヤを利用してレースが行なわれる。Intelは2018年1月に、この北米フェラーリ・チャレンジと提携することを明らかにしており、今回その実際のデモを行なった。

フェラーリ・チャレンジに使われているフェラーリ 488 チャレンジ

 ラオ氏とIntel AIデータサイエンティスト アンディ・ケラー氏が行なったデモでは、先日オースティンのCOTA(Circuit of The Americas)で行なわれたレースのドローンが撮影した映像に、AIが車両を判別してカーナンバーやドライバーなどのタグを画面上に付けていった。現在そうした映像にドライバーやタイムなどを表示していく作業は、人間が映像を見ながら行なっている。例えば、F1の中継などで画面の下の方に今映っている車両の情報(カーナンバーやドライバーなど)が表示されるが、あれはテレビ中継のクルーがマニュアルで入れている情報になる。そのため若干ずれたり、もうその車両はいないのに表示が出たりということがよくある。

Intelが提供しているAIの半導体を利用してディープラーニングの学習が行なわれる
複数の写真をAIに読み込ませて学習させる
AIが車両を判別しているところ。あたり前だが、全部フェラーリだ

 それに対して今回Intelがデモしたのは、ドローンが撮影した映像にAIが自動でカーナンバーやドライバーの情報をタグとして付け、そのタグもクルマが移動すると同時に移動していく。ケラー氏によれば、出場車両の情報(外観の写真など)をあらかじめAIに学習させておき、それを元にAIがリアルタイムに判別している形になる。このため、動いている車両に追随して情報を提示し続けることが可能になり、これまでのレース中継では見たことがないような、まるで3Dゲームのような中継映像が作成可能になる。

AIが判別して車両にタグを付けているところ。ドライバー名やカーナンバーなどが表示されている。3Dゲームの映像のように見えるが、すべてホンモノのレース映像だ

 Intelによれば、現時点ではフェラーリ・チャレンジの中継に適用はしていないそうだが、将来的に完成度が増せば、フェラーリ・チャレンジの中継映像にこの技術が適用されることになる予定だということだ。完成度を高めていけば、他のレースの中継や映像にも適用できると考えられるので、今後の発展に期待したいところだ。