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三菱自動車、ゴーン氏が「アライアンスは対等なパートナーシップの精神」と力説した「第49回定時株主総会」。ルノー、日産、三菱自動車の経営統合を否定

「ルノーによる子会社化の可能性はゼロ」とゴーン氏

2018年6月22日 開催

三菱自動車工業株式会社 代表取締役会長 カルロス・ゴーン氏

 三菱自動車工業は6月22日、同社 代表取締役会長 カルロス・ゴーン氏と代表取締役CEOの益子修氏らが出席する「第49回定時株主総会」を開催。ルノー、日産自動車、三菱自動車、3社のアライアンスに関する株主からの質問に、ゴーン氏は「ルノーによる子会社化の可能性はゼロ」と、経営統合の可能性を否定した。

 総会では、2017年度の事業報告と2018年度の事業方針、三菱自動車がルノー・日産アライアンスに加わったことによるアライアンスのシナジー効果について説明がなされた。また、総会では、監査報告と4つの議案(剰余金の処分、定款の一部変更、取締役8名の選任、監査役2名の選任)の決議が行なわれた。4つの決議案は賛成多数で可決されている。

燃費不正問題の再発防止に向けた取り組みなどを報告
新任の監査役として白地浩三氏が承認された
新任の社外取締役として幸田真音氏(左)、江上節子氏(右)の2名が承認された
株主からの質問事項の割合

 会場で行なわれた質疑応答では、新型軽自動車の販売戦略、デジタルマーケティング、国内販売店舗の老朽化や販売体制に対する質問などがあった。ルノー、日産自動車、三菱自動車、3社によるアライアンスの将来については、複数の株主から質問が出された。

 以下に3社によるアライアンスに関する質疑応答の様子をお伝えする。


株主:(事業報告で)アライアンスのメリットばかり紹介しているが、三菱車に乗って50年、株主になって40数年、古い三菱自動車のファンからすれば三菱自動車が乗っ取られたという感想を持っている。それについて思うことがあれば一言ほしい。

ゴーン氏:日産が三菱自動車に35%出資しましたが、この出資は友好的なことによるもの。そして(株主総会で)アライアンスについて話をしているのは、皆さまにおなじみのものでないからで理解を深めていただきたいからです。アライアンスでは強制はなく、アライアンスでの決断はお互いの利益になることだけを決定しています。

 三菱自動車の長年のご愛顧ありがとうございます。ご安心ください、引き続き三菱自動車は三菱自動車のままです。三菱自動車のDNAはもちろんもっと近代化されますが、三菱自動車がルノーや日産と混同することは決してありません。

 先ほど日産が三菱自動車を乗っ取ったみたいだとおっしゃいましたが、会社を乗っ取るのであれば、全部の株式を買い取ります。日産には2兆円のキャッシュがあり、乗っ取るのであれば全ての株式を買い占めています。それをしなかったのは、買収ではうまくいかないからです。対等なパートナーシップこそが成功には必要で、これがアライアンスの本質で、これがアライアンスがほかの提携とは違うところなのです。

 三菱自動車には長い歴史があり、ダイムラー・クライスラー三菱の時代がありましたが、その当時に現場にいた人に聞いていただきたい。過去のダイムラー・クライスラーのやり方と、日産のやり方が違うことが分かると思います。(買収というやり方)それは避けたいことなんです。日産、三菱自動車の会長として注意を払っているのは、誰も一線を越えないこと、それぞれが自主性を持ち、将来の責任を負い、バランスの取れた協力体制を実現することです。

 19年前にも日産の株主から“日産はルノーの子会社になるんだね”と言われました。19年後、そうではなかったことが証明されたと思います。日産は独自のパーソナリティを持って成長していて、株主としての権力を酷使したことはありません。19年にわたる成果を持って判断していただきたい。アライアンスは対等なパートナーシップの精神です。

 どの会社も、それぞれの会社がそれぞれの実力に基づいて行動を起こします。出身は関係ありません、独自の優秀な人材で、意欲のある人材が、それぞれの会社の財産になることを目指しています。そして人材は全ての会社で交流して、全ての会社のメリットになります。

 昨年の株主総会で“どうして益子さんをそのまま置いておくのか?”と問われました。私は大株主として、益子を信頼しているから、三菱自動車は引き続き三菱自動車であり続けてほしいと申し上げました。例えば社長を日産出身者に据えたら、これは子会社になってしまったと思われてしまいます。あれから1年経った事実を見てください、三菱自動車は三菱自動車のまま独立性、自主性をもって、業績の責任を負っています。それを当初から求めています。

 アライアンスは三菱自動車を支援すること、三菱自動車の改革は三菱自動車自身が行なっているもので、日産とアライアンスはサポートをするだけに過ぎません。将来的にこの言葉だけでなく事実になることで、信頼をいただけると思います。

三菱自動車工業株式会社 代表取締役CEO 益子修氏

益子氏:日産との業務資本提携は、2016年の燃費不正問題がきっかけでしたが、いまの自動車産業が置かれている状況を見ますと、三菱自動車の規模では全ての新しい技術を開発して競争を勝ち抜いていくのは現実的に無理だと思っています。したがって、アライアンスは時代の要請であった、変化の時代を生き抜くための知恵であったと理解しています。非常に多くの自動車メーカーが、形は違えど何らかの提携をする時代になっています。

 これまで自動車会社だけの競争だったものが、テスラやダイソンといった、全く新しい挑戦者が現れる。いままでの自動車の開発、生産、自動車のコンセプトそのものも変えていく挑戦をしていくには、やはり規模が必要なのは現実であります。「アライアンスはあくまでも成長のターボチャージャー」と話していますが、われわれはアライアンスで得られるものがあれば、それを得て企業価値の向上と持続的成長に結びつけていくことが必要と考えています。

 また、ゴーン会長からよく言われるのは、三菱自動車にとってもっともよいと思われることを選択しなさいと。ルノーや日産のことを考えるより、三菱自動車のことを第1に考えなさいとよく言われます。自主経営、自主ブランド、自主マーケティングをやっているわれわれにとっては、大変ありがたく、最終的に三菱自動車にとってよいことが担保されるのは、これは心強いこと。

 アライアンスについては、われわれはメリットを享受するだけでなく、アライアンスに貢献していきたいと考えています。アライアンスに貢献できるということは、三菱自動車に力があることの証明、われわれの力を日産とルノーに活用してもらえる。これが三菱自動車にとって力の源泉と思っています。

三菱自動車工業株式会社 代表取締役会長 カルロス・ゴーン氏

株主:ルノーが日産と三菱自動車を完全子会社することをフランス政府から要望され、それをゴーン会長が断ったとの報道があったが?

ゴーン会長:誰から要望であっても、ルノーが子会社化をすることはありません。この19年間やってこなかったことで、今日変える理由はありません。これは効率性と人々の意欲、各社の成長に関わるもの。

 先ほど三菱自動車はアライアンスでパートナーであることを話しました。ルノー、日産、三菱自動車が対等なパートナーシップとしているのは、パートナーであれば意欲が出る、自分の会社のため、株主のため、あるいは自分の地域社会やアライアンスのために頑張れるわけです。完全に対等なパートナーシップは、誰かの子会社でないことは基本中の基本、そこがアライアンスとほかの提携関係との違いです。

 先ほど話した、ダイムラー・クライスラーと三菱自動車の提携、それとルノー、日産、三菱自動車のアライアンスの違いを比べてみてください。1社がほかの2社を支配するのはうまくいかないのです。多くの会社で忘れてしまった、これはシンプルな事実。競争力を持ち続けるには自社の社員の意欲がないといけない、その意欲を持つにはそのブランドに対する誇り、会社に対する誇り、自国に対する誇りを持たなければならない。どうしても避けなければならないのは、3社を融合して一部の方がやる気を無くすということ。

 これは私がプロとしての経験から信じていること。19年以上繰り返して言い続けること。なにを要望されても3社を融合することは絶対にありません。YES、NOではなく、基本的な信念なんです。これが会社の競争力を担保するもの、会社が弱くなることは決してしない。

 ルノー、日産、三菱自動車3社の経営陣、株主で合意しているのは、アライアンスは将来的な持続可能性を担保してほしいということ。アライアンスが一部の人間に頼るものでなく持続していくこと、ルノー、日産、三菱自動車が力を合わせて、仕組みを導入すること。アライアンスでうまくいっている方法を、将来的にリーダーが誰になっても持続していく仕組みを考えること。

 3社は好調で、われわれは世界で最大の自動車メーカーのグループです。この勢いを持続させたい。私達はリソースの使い方は厳格に決めていて、3社独自の戦略を持ち、各社の多様性があるのは強みで、その違いを持続したい。

 課題は1つだけ。アライアンスについて、アライアンスのリーダーが誰であれ、各社のリーダーが誰であれ、どうやったら皆さんが自信をもって持続可能であると言えるかということ。アライアンスの5年後、10年後、20年後の持続可能性を担保しなければならない。ここにいる執行役員が退任して、新しい執行役員が就任したあと、どうやってお互いを尊重する精神を持ちながら、リソースを共有して、各社の自由を許すのかは課題です。それにはアライアンスとしての解決策の仕組みが必要です、アライアンスはほかにはない体制ですから。

 ご安心ください。何が起こっても、全ては三菱自動車の利益を考えた上で判断して行動を起こします。それは保証します。皆さまにアライアンスの将来に信頼を得るための解決策はこれから検討していきます。

 みながこのアライアンスを応援していて、3社ともに、そしてフランス政府、日本政府も応援しています。このアライアンスは長年にわたり成果を出してきました。これを継続していくための仕組み、解決策を考えていきます。