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トヨタ、新型「カムリ」向けのオプションに追加された「JBLプレミアムサウンドシステム」を試聴してみた

ナビゲーション・オーディオのオプションでワンランク上のサウンドに

2018年8月31日 実施

「カムリ WS」のナビゲーション・オーディオに「JBLプレミアムサウンドシステム」のオプションを付けると、モニター下部にJBLのロゴが入る

 トヨタ自動車は、8月1日から「カムリ」に新グレード「WS」を設定した。このカムリ WSに関しては別記事にて紹介しているが、これにより「WS“レザーパッケージ”」「WS」「G“レザーパッケージ”」「G」のナビゲーション・オーディオに「JBLプレミアムサウンドシステム」をオプション設定ができるようになった。8月31日にその試聴会が行なわれたのでレポートする。

「カムリ」に設定された新グレード「WS」
カムリ WSの車内。JBLプレミアムサウンドシステムのオプションが付いている
ナビゲーション・オーディオのコントロールパネル
オーディオを再生中の画面

 今回試聴したカムリのJBLプレミアムサウンドシステムは、ホーントゥイーターとサブウーファーを含めた9スピーカーと専用アンプで構成される、カムリ専用にサウンドチューニングが施されたシステムとなる。

 JBLは米国 カルフォルニアに本拠を置く1946年創業の老舗スピーカーメーカー。母体はハーマンインターナショナルで、多くのオーディオブランドを傘下に束ねている。トヨタとの連携は長く、プリウスをはじめとしたさまざまな車種にJBLプレミアムサウンドシステムの設定がある。同じハーマンインターナショナル傘下のハイエンドオーディオメーカーであるマークレビンソンは、レクサス向けのサウンドシステムオプションに採用されている。

 9つのスピーカー配置は、80mmミッドレンジがダッシュボード上面左右に、その上のAピラーには25mmホーントゥイーターが、フロントドアには200mm×230mmのミッドウーファーが、リアドアには150mmフルレンジが埋め込まれている。これに後席の後ろのトノカバー部分に265mmサブウーファーが1つ埋め込まれていて、重低音を補完している。

JBLプレミアムサウンドシステムのスピーカー配置図
圧縮音源を自動で補完する「CLARI-FI」の解説

 特徴的なのがAピラーに埋め込まれたホーントゥイーターで、このホーントゥイーターがJBLサウンドらしさを出している。高域再生用のトゥイーターは、ただでさえ指向性が強いものだが、出音部分をホーン形状にすることによりさらに鋭く感じられるようになる。これは、JBLの多くのラウドスピーカーに採用されている方式だ。Aピラーのトゥイーターは一見するとホーンには見えないが、すり鉢状に削られていて、それがホーンの役割を十分果たすとのこと。実際に後席にも高域がダイレクトによく届いていた。

 また、セダンタイプではよく使われる手法だが、トランク部分がサブウーファーのエンクロージャーとして機能していて、低域の鳴りがとてもリッチ。驚いたのはこのサブウーファーがとても軽量なこと。一般的に口径の大きなウーファーは後部に大きなマグネットやボイスコイルが付いているものだが、このサブウーファーの後部はとても小さく軽く薄い。それにもかかわらず、豊かな低音を再生可能にしている。このサブウーファーは、より強力な低音が出せるダブルボイスコイルであることも特徴だ。

 DSP機能を持つ8チャンネルの専用アンプは、助手席下に装着されている。これにはハーマンインターナショナル独自の「CLARI-FI」と呼ばれる、圧縮音源を補完し非圧縮のサウンドに近づける機能も内蔵されている。この機能は常時ONで、OFFにすることはできない。圧縮されていない音源はスルーされるとのこと。

Aピラーの25mmホーントゥイーター。JBLのロゴが入る
運転席位置から見たホーントゥイーター
ダッシュボード上面のワイドディスパージョン(サウンドに広がりがある)な80mmミッドレンジスピーカー
フロントドアの200mm×230mmミッドウーファー
リアドアには150mmフルレンジスピーカー
後席の後ろに265mmサブウーファー
サブウーファーをトランクから見たところ。むき出しなのはトランクをエンクロージャーとして機能させるため

 試聴を始めると、まず楽器音やボーカルのリアルな再現に驚く。イコライザ設定はフラットな状態だ。車載サウンドシステムにありがちな腰下に沈んで聞こえてしまうこともなく、演奏が眼前に広がってくる。しばらく聞き入っていると、楽器のステレオ定位が分かりやすいことに気付く。音のセンターはあくまでもクルマのセンターで、運転席前を中心としていない。これは、後部座席も含めて良質な音にするチューニングから、このようにしているとのこと。

 ホーントゥイーターであることから、高域のスイートスポットが限定されてしまうイメージがあるが、許容範囲はワリと広く後部座席でも楽しめる。強調されて突き刺さるような嫌な高域ではなく、楽器や声を忠実に再現するための高音域を自然に奏でている。

 ロックドラムのソロ演奏では、タイトでメリハリのあるバスドラム音が体を突き抜け、タムやシンバルを叩く位置の移動がよく分かる。打撃音に対する嫌な共振音などは皆無で、打面のヘッドが弾かれる鳴りが心地よく感じられるほどにリアル。そして、ほどよく残響が感じられる。女性ボーカルのブレスも艶めかしく、ビッグバンドジャズでは各楽器の分離がよく小気味よく楽しく聴ける。

 後席は前席に比べるとわずかに臨場感は薄れるが、籠もり感はない。サブウーファーがすぐ近くの後ろから響くので、ごくまれにシートが震えることがあるのだが、当然ながら低域が多すぎて気持ちわるくなるようなことはまったくない、バランスのとれたサウンドを楽しむことができる。

 少し気になったのは、低域がブーミーに感じられるシーンがあったことだ。バスドラがタイトに鳴っているので、決してぼわついたりしているわけではない。わずかに豊か過ぎる程度で、こういう低域の鳴りが好きな人も多いかも知れない。

 停車中の車内でエンジン音すらない状態での試聴だったため、実際の走行時にはロードノイズやエンジン音が低音をマスキングすることになる。このため、あえて少し低域を多めにチューニングしているということだった。走行時のリスニングでは、また違った印象を受けるだろう。いずれにしても、サブウーファーは十分過ぎる仕事をしていると言える。

 カムリの6スピーカー標準サウンドシステムとも比較試聴をする機会があったが、こちらもこれだけを初めて聞けば、多くの人は十分だと納得するかもしれない。一般的な標準車載サウンドよりはレベルは高い。ただ、JBLプレミアムサウンドシステムを聞いた後では、豊かな低音と目前に広がる音場が明らかに足りないと感じてしまう。こちらは音が下に固まって聞こえてしまうイメージだ。

JBLプレミアムサウンドシステムの試聴用に用意されたカムリ WSのデモカー
JBLプレミアムサウンドシステム構成パーツの展示
25mmホーントゥイーター
ホーントゥイーターのピラーパーツ
80mmミッドレンジスピーカー
200mm×230mmミッドウーファー
150mmフルレンジスピーカー
265mmサブウーファー
サブウーファーの背面。マグネットが小さく驚くほど軽い
8チャンネルアンプ

 オーディオレスとなるGとWSでは、メーカーオプションの「T-Connect SDナビゲーションシステム」とJBLプレミアムサウンドシステムを付けると41万3640円。付けない場合には6スピーカーシステムで33万4800円なので、差額7万8840円のアップグレードでこのサウンドが手に入ることとなる。この差額は、T-Connect SDナビゲーションシステムと6スピーカーシステムが標準装備となるG“レザーパッケージ”と、WS“レザーパッケージ”でも同額だ。サウンドプロショップでアップグレードを頼んでも、なかなかこの価格内で同レベルのサウンドを実現することは難しいだろう。音楽好きであれば、お買い得なオプションと思えるはずだ。

 このJBLプレミアムサウンドシステム、ジャンルに関係なく万能に鳴らしてくれるが、ハードなディストーションギターとヘビーなドラム、うねるシンセベースなどが入った、現代的なラウドサウンドをしっかりと鳴らしきってくれそうな予感がする。カムリのスポーツグレード「WS」でソロドライブのテンションを上げるのにもってこいだろう。もちろんドライブデート時(嫁含む)には、ボーカル物を選んでしっとり魅了させるようにしてほしい。このサウンドなら、雰囲気ぶち壊しになる心配は無用だと思うのだが……。

参考に展示されていた室内用オーディオシステム。スピーカーはJBL「S3900」、マークレビンソンのインテグレーテッドアンプ「No.585」とマルチオーディオプレーヤー「No.519」
これが典型的なホーントゥイーターの形状
最近のJBLは、スマートフォン用のBluetoothスピーカーやイヤホンにも力を入れている
JBLプレミアムサウンドシステムの解説をしてくれた、ハーマンインターナショナル株式会社 シニア・マネージャー コーポレート・コミュニケーションズ 大久保千弥氏