ニュース
クラレ、耐熱性や強度を活かして自動車分野での採用を拡大する「ジェネスタ」事業
「2026年までに6割近い自動車関連用途に伸ばしたい」
2018年9月11日 20:42
- 2018年9月11日 実施
クラレは9月11日、自動車部品への採用が進む耐熱性ポリアミド樹脂(PA9T)「ジェネスタ」について今後の展開を示す記者会見を実施した。
記者会見で挨拶を行なったクラレ 代表取締役社長 伊藤正明氏は折からの不安定な天候について触れた後、「事業はますます成長を目指して頑張っていきたいと思います。つきましては、タイのプロジェクトについても進んでまいりましたので、合わせてジェネスタについてもこの機会に改めて説明させていただきます」と述べた。
ジェネスタについては、クラレ 執行役員 ジェネスタ事業部長の髙井信彦氏が説明。ジェネスタは、クラレが独自に開発した-50℃~150℃という幅広い温度領域で、低吸水性、高耐熱性、高耐薬品性、寸法精度に優れた特長を持つ、炭素数9のポリアミド系エンジニアリング・プラスチック。現在は電気・電子部品分野で主に採用されている。
自動車部品では、クルマの高機能化・電子制御化に伴って増加するギヤ部品に用いられ、カーエアコン用ギヤやステアリング連動ヘッドライトのヘッドランプアクチュエーターギヤなどに採用。寸法安定性や強度を活かして小型化や樹脂化に伴う軽量化に貢献している。
また、燃料に触れても劣化しない特徴があるため、通常のプラスチックでは劣化してしまう燃料ホースや燃料チューブにも採用。振動に強い特性からXY方向に加えZ方向にも可動する世界初の車載コネクタとしても採用が拡大している。
さらに、優れた対高電圧性(耐トラッキング性)を持つため、バスバー(導体棒)の間を短くすることができ、EV(電気自動車)などの高電圧絶縁部品の小型化にも貢献している。
髙井氏は「自動車関連については、ジェネスタの持つ性能が評価され、より発揮できる分野だと考えております。現在は2割程度の実績ではございますが、2021年にタイの新工場が立ち上がったあと、2026年には車載電装を含めまして6割近い自動車用途でジェネスタを伸ばしていきたいと考えております」と今後の展開について語った。
また、クラレ 取締役 常務執行役員 イソプレンカンパニー長 兼 エラストマー事業部長の阿部憲一氏が、タイの新工場設立の概要について説明。工場設立の背景については、市場の拡大に伴い販売量も伸長しているため、2020年ごろには現在の生産設備はフル稼働になる見込みで、さらに海外の需要が増加するというグローバル供給体制の重要性が増大するといった予測から、成長が著しいASEAN諸国の中心地であり、自動車や化学産業が盛んでインフラが充実しているタイに新工場の設立を決めたという。
タイの新工場はラヨン県マプタプットに位置する石油化学コンプレックス内のヘマラ イースタン工業団地を候補地として、ジェネスタのほかに、広い温度範囲でゴムのような性質を示す高性能熱可塑性エラストマー「セプトン」、ウレタン樹脂の原料に使われる「MPD(メチルペンタンジオール)」といった製品を生産。2021年末に設備完工を予定しており、商業生産は2022年になる予定。
阿部氏はこのタイのプロジェクトを実現することにより、「2026年のクラレ100周年のころには(売り上げを)1000億円になんとかしたい」と今後の展開について示した。