ニュース
ブリヂストン、綾瀬はるかさん、宮里藍さん、スマイルジャパンが共演した「ブリザック 新CM」発表会
発泡ゴム開発は「ヘチマ」がヒント
2018年9月14日 00:00
- 2018年9月13日 開催
ブリヂストンは9月13日、乗用車用スタッドレスタイヤ「BLIZZAK(ブリザック)」シリーズをPRするTV-CMを制作。9月15日からのTV放映開始を前に、CMキャラクターの綾瀬はるかさんなどをゲストに招いた新CM発表会を都内で開催した。
なお、新CMは9月15日からのTV放映に先立ち、ブリヂストンのWebサイト内にある「CMライブラリ」や「公式YouTubeチャンネル」で配信が行なわれている。
発表会では2種類の新TV-CMが上映された後、ゲストとしてCMキャラクターの綾瀬さんが登壇。さらに「チームブリヂストン・アスリートアンバサダー」を務めている元プロゴルファーの宮里藍さん、アイスホッケー女子日本代表「スマイルジャパン」の久保英恵選手、床亜矢可選手、床秦留可選手が加わり、綾瀬さんからCM制作のエピソードなどが語られたほか、綾瀬さんが出題者となり、アスリートアンバサダーが回答する「備えあれば憂いなし! スタッドレスクイズ」が実施された。
最低気温3℃で路面が凍結するケースも
このほかに発表会では、ブリヂストンタイヤジャパン 常務執行役員 長島淳二氏から「新商品マーケティングプレゼンテーション」、ブリヂストン 常務執行役員 製品開発管掌 坂野真人氏から「新商品の技術プレゼンテーション」が行なわれた。
長島氏はスタッドレスタイヤを取り巻く環境の変化やユーザー分析の内容、2018年のプロモーション活動などについて紹介。昨今は高齢化などによってクルマの安全性が大きく注目されるようになり、衝突を回避する自動ブレーキやステアリング操作をアシストするレーンキープ技術などを自動車メーカーが市場投入しているが、ブリヂストンでもタイヤにさまざまな技術を与えてユーザーの安心・安全を足下から支えていると説明。今回のテーマとなる乗用車用のスタッドレスタイヤでは、定期的にスタッドレスタイヤを利用している降雪地域だけでなく、降雪の少ない地域に住んでいるユーザーにも「スタッドレスタイヤがなぜ大切なのか」を伝えていくことが、冬道の安心・安全につながるとの考えを示した。
道路環境の分析では、諸外国と比べて日本は冬季の昼夜で寒暖差が大きく、路面の雪が溶け出したり再凍結する0℃近辺を上下する機会も多い特殊な状況で、凍結した危険な状態になりやすいと解説。そんな凍結路でもしっかりと性能を発揮できるスタッドレスタイヤを使うようにしてもらいたいと述べた。
また、間近に発生した猛暑や豪雨、冬期の豪雪などについて触れ、日本各地で交通障害が発生したと語り、東京でも大雪による車両のスリップでレインボーブリッジが封鎖されたケースを取り上げ、通常はそれほど雪が降らない地域に住んでいる人でも万が一の大雪に備える必要があるとした。
また、路面の凍結については、気象庁などが発表している気温は路面から1.5mほどの位置で計測されているため、発表されている最低気温が3℃という場合でも、路面は氷点下になって凍結するケースがあることを指摘。都市部で降雪の少ない地域でも、冬期に最低気温が3℃以下になる日数が8割以上になると紹介し、路面凍結による予期せぬスリップが発生するリスクがあると説明。同社によるテストで、通常の夏用タイヤの制動距離はスタッドレスタイヤと比べて60%増加するというデータを示し、交差点などで万が一にも制動距離が伸びると大きなリスクになることから「雪があまり降らない地域だからこそ、大雪や凍結路面に備えてスタッドレスタイヤに履き替えておくことが重要と考えます」と語った。
こうした情勢を受け、近年はスタッドレスタイヤの保有率が上昇しており、購入理由も以前はウインターレジャーでの必要から購入していた人が半数以上だったが、近年では降雪や路面の凍結に対する備えとして購入するよう変化してきているとのデータを紹介。購入者の居住エリアを問わず、凍結路面でのブレーキ性能が大きく注目されており、さらにグリップ力の持続性も注目度が高いと解説。また、ドライ路面における静粛性や耐摩耗性も求められるようになっているという。
この分析からブリザックシリーズでは氷上性能を最優先に定め、さらに冬期のさまざまな路面に対応する総合性能も追求して開発を実施。販売中の「DM-V2」「VRX」「VRX2」の3製品を「最強ラインアップ」と表現し、中でもVRX2は氷雪路面に加えて一般路面での性能にも優れ、安全・安心で快適な運転を実現する「ブリザック史上最高性能のスタッドレスタイヤです」とアピールした。
2017年の発売以来、購入者から氷上性能に加えて日常的な利用シーンでも高く評価され、アンケート調査では92%の購入者が「次もブリヂストン製タイヤを購入したい」と回答していると紹介した。
発泡ゴム開発は「ヘチマ」がヒント
坂野氏はブリザックシリーズに続く30年にわたるブリヂストンのスタッドレス開発の歴史について解説。スタッドレスタイヤが誕生する以前の1960年代にはスパイクタイヤの急速な普及があったが、トレッド面に埋め込まれたピンが凍結路面などに食い込むスパイクタイヤは冬期も高いグリップ力を発揮する半面、通常のアスファルト路面では硬いピンと路面がぶつかる騒音に加え、アスファルトが削られた粉塵が社会問題化。これを解消する「スタッドレス」のタイヤ開発が喫緊の課題となった。
新たにピンなしで冬の路面に対応するタイヤを生み出すため、開発陣は凍結した路面でタイヤが滑る理由を溶けた氷による「水の膜」、低温でのゴムの硬化による「接地性低下」の2種類と分析。この対策として当初発売されたスタッドレスタイヤでは、柔らかさを高めたゴムと多数のサイプで水の膜を除去する構造となっていたが、ゴムが柔らかすぎることで走行面に不満が出たほか、低温でゴムの柔軟性が維持できず、経年劣化でも硬化していくことが技術課題となった。
この問題を解決するために生み出されたのが、断熱性が高く温度変化で硬さが変わることなく、経年劣化も防げる空気を利用するという発想。そこで、タイヤのゴムをスポンジのように気泡を持つ「発泡ゴム」が開発された。しかし、実際にテストしてみると思うような性能が発揮できず、開発陣は疑心暗鬼に駆られるようになったというが、開発陣の1人がたわしとして使われていたヘチマをヒントに、「新品のゴムは気泡が表面に出ていないことが原因ではないか」と着想。元は温度対策として生み出された発泡ゴムだが、表面を削って気泡が路面に触れるようにすれば、スポンジのように水を吸い込むようになるのではないかと発想を転換。試してみると急激な性能向上を実現して技術革新に至ったと解説した。
こうして生み出された発泡ゴムは歴代ブリザックシリーズで進化を遂げ、滑りやすい路面での性能を高めていったが、先代製品になるVRXからは新たなチャレンジを開始。降雪エリアでも装着車がドライ路面やウェット路面などを走行するシーンが多いことから、それまで氷雪上性能とトレードオフになって見過ごされてきた一般路での走行性能にもこだわり、どちらも同時に向上させる開発を実施している。
最新モデルとなるVRX2ではVRXから導入した親水性を発揮する「アクティブ発泡ゴム」が路面の水分を大きく除去できるようになったことを受け、これまで増やしてきたトレッドパターンのサイプを減らす方向に進化。ブロック剛性を高めることが可能になり、しっかりとした走行性能が発揮できるようになったほか、耐摩耗性も向上しているという。また、一般的なタイヤの切れ角となる15度~20度の範囲に合わせ、どのステアリング切れ角でもグルーブがひっかき効果でグリップ力を発揮できる「マルチアングルグルーブ」を新設。横溝はパターンノイズが発生する高周波を解析し、ピークとボトムの波長を合わせて打ち消し合うよう最適化して、高周波の騒音エネルギーをVRXから31%低減していると紹介した。