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日産 西川廣人社長がカルロス・ゴーン会長らの不正行為について単独会見。「長年にわたるゴーン統治の負の側面」

2018年11月19日 開催

日産自動車株式会社 代表取締役 最高経営責任者 西川廣人氏

 日産自動車は11月19日、同社の代表取締役会長 カルロス・ゴーン氏、代表取締役 グレッグ・ケリー氏が長年にわたり不正行為を行なってきたことを発表。これについて代表取締役 最高経営責任者 西川廣人氏が説明する記者会見を開催した。

 なお、記者会見の内容はYouTubeの日産自動車公式チャンネルでライブ配信され、現在も会見の全編が視聴可能となっている。

2018年11月19日に実施された「日産自動車記者会見」(1時間31分24秒)

不正行為は「長年にわたるゴーン統治の負の側面と言わざるを得ません」と西川氏

 登壇した西川氏は、同日発表のゴーン氏の不正行為について、「開示される自らの報酬を少なくするため、実際の報酬額より減額した金額を有価証券報告書に記載していた不正行為」「目的を偽って、私的な目的で当社の投資資金を支出した不正行為」「私的な目的で当社の経費を支出するなどした不正行為」の3点が、本人の主導により行なわれていたとあらためて説明。内容についてはすでに検察による捜査が行なわれていることから細かく触れることはできないとしつつ、会社としては断じて容認できず、専門家からも解任するに足る重大な不正行為であると判断されたことから、11月22日に緊急の取締役会を招集。ゴーン氏の会長と取締役の任を解く提案を行なう予定であると語った。また、代表取締役を務めるケリー氏についても首謀者の1人と判断して、同じく代表権を解く予定とした。

 また、この不正行為に伴い、株主や関係者などに多大な心配をかけることになったことについて、西川氏は会社を代表して深くお詫びを申し上げたいと述べている。

 さらに西川氏は、1999年にゴーン氏が主導してスタートした「日産リバイバルプラン」以降、自身も日産のリカバリーに向けて全身で取り組んできて、経営会議のメンバーも力を合わせて全力で取り組んできたつもりでいたが、今回の不正行為の発覚を受け、「残念という言葉ではなく、強い憤りということ。私としては落胆ということを強く覚えています」と現時点の感情を表現している。

ゴーン氏の不正行為について説明し、今後などについて語る西川氏

 今後については、今年度からルノーから任命された取締役以外にも、2人の社外取締役が就任しており、この社外取締役と第三者の専門家を加えた委員会を早急に立ち上げ、今回の不正行為の背景や要因などを掘り下げて調査してもらい、ガバナンス(企業統治)についての問題提起、根本的な見直しに繋げたいとの考えを示した。

 このほか、ゴーン氏の逮捕・収監は重大な不正の除去が目的であり、ルノー、日産自動車、三菱自動車工業のアライアンスに何ら影響を与えるものではないと述べている。

 ガバナンスの観点からは、日産の株式の43%を保有するルノーのトップが日産のトップも兼任する状態は権力が1人に集中しすぎることが問題であると語り、これだけが原因ではないものの、要因の大きな1つになっていると分析した。

 最後に西川氏は、今回発覚したゴーン氏の不正行為は「長年にわたるゴーン統治の負の側面と言わざるを得ません」とコメント。一方で、日産における19年の期間には将来に向けた素晴らしい財産がたくさんあると解説。単純にゴーン氏のCEOとしての貢献だけではなく、この期間に多くの従業員が努力して積み上げてきたことの結果であり、1990年代に苦労をした時代を乗り越えてきたことで2000年代のリカバリーにつながったと説明。そんな努力の結果を、今回の不正行為で無にはしたくない、できないと語り、守るべきものは守り、育てていきたいとの考えを理解してもらいたいとした。

2005年にルノーと日産のCEOを兼務した時が権力集中の契機

質疑応答で記者からの質問に答える西川氏

 会見の後半では質疑応答を実施。ゴーン氏に権力が集中した要因や、なぜそれを防ぐことができなかったのかと問われた西川氏は「結果としてふり返ってみたり、第三者の人から指摘されてみれば、確かに権限が集中しすぎていたことはその通りと言わざるを得ません。なぜそうなったかについては非常に難しいですが、人が入れ替わりながら徐々にその形ができていったとも見えます。その中で、私自身がどういった立ち位置で何ができたかを反省してみる必要があると思います」。

「ふり返ると、2005年にルノーと日産のCEOを兼務することになり、その時に、われわれはごく当たり前のこととして、これまで日産を率いてくれていたゴーンさんがルノーの責任者になるんだから、それは日産にとっていいことだと、その結果として将来的に何が起きるのかということをあまり議論しませんでした。その段階が今にいたっている、契機、転機になっているのではないかと思います。その段階で、そうしたらどうなるかわれわれも十分に分かっていなかった。その中で権力が集中していったと言えるのではないかと思っています」と説明。13年前の時点に問題発生の契機があったのではないかとの見方を示した。

 この不正行為が起きたことに対しての西川氏の責任については「先ほども申し上げたように猛省すべきところもありますし、事態を沈静化させ、安定化させることもあります。1日も早く会社を正常な状態にして先に進ませるために、やることが山積しております。まずはそこを進めるということがとにかく私の仕事であると思っております。その中でガバナンスの体制、執行の体制についても変えるべきところは変えるということ。そして次世代につないでいくという意味では、さまざまなことをスピードを上げてやっていかなければならないと思っています。まずそれをやった上で、その先をどうするか、あらためて考えるときが来るとは思いますが、今の段階ではまずそこに集中したいと思っております」とコメントした。

 今回の不正発覚に至った内部通報については、日産内部にある仕組みから告発が行なわれ、内部調査がスタートしたことも説明された。このほか、捜査内容に関連して今回は明らかにできなかった部分については、追って詳細を報告する場を設けたいとしている。

【お詫びと訂正】記事初出時、数か所に誤字がありました。お詫びして訂正させていただきます。