ニュース

パナソニック、子育てモデル電動アシスト自転車「ギュット・クルーム」の受注数が発売1か月で1万台達成

今後はIoT自転車やシェアサイクルにも注力

2019年1月31日 発表

(左から)パナソニック サイクルテック株式会社 野中達行副社長、アンジャッシュ 渡部建さん、パナソニック サイクルテック株式会社 片山栄一社長

 パナソニック サイクルテックは、ベビー用品を手掛ける「コンビ」と共同開発した子育てモデル電動アシスト自転車「ギュット・クルーム」を2018年12月3日に発売。発売1か月で受注数が1万台に達したと発表した。このほど、ギュット・クルームによる安心の自転車ライフなどを広く発信することを目的に、「安心をギュット」アンバサダーを制定。お笑い芸人であるアンジャッシュの渡部建さんが就任することも発表した。

 また、スマートロックを搭載したIoT電動アシスト自転車を開発。4月から国内数か所でシェアリングサービスの実証実験を開始することも明らかにした。

ベビー用品大手のコンビと共同開発した子育てモデル電動アシスト自転車「ギュット・クルーム」

 ギュット・クルームは、子供の安全性と快適性を実現した自転車で、新設計のチャイルドシート「クルームシート」を搭載。コンビが独自開発した衝撃吸収素材「エッグショック」を採用したクッションを頭部両サイドに内蔵。子供の頭を包み込むようにしっかり守り、「まるでお母さんの腕の中にいるような状況を作ることができる」という。エッグショックの名称は、「卵すら傷つけない」という開発コンセプトから名付けられたという。

新設計のチャイルドシート「クルームシート」はコンビとの共同開発によるもの

 柔軟性のある素材を採用したグリップバー「ソフトグリップ」は、振動やうたた寝で子供が頭や歯をぶつけてしまった時の衝撃を和らげることができるという。また、立体的に持ち上がった肩ベルト「ウェルカムベルト」によって、手を通しやすく、子供の乗せ降ろしが簡単にできる。

 さらに、アクセサリーもコンビと共同開発。日差しや突然の雨から子供を守る「日よけ&レインカバー」、寒い日でも足下の冷気をガードして体の冷えを防ぐ「フットカバー」など4点を用意した。

 また、こぎ出しのアシスト力の制御機能を向上させ、よりスムーズな発進を実現。坂道や荷物がある時はよりパワフルに、平地や荷物がない時はアシスト力を抑えることで安心した発進ができるという。そのほか、コンパクト設計の採用により、ふらつきにくく駐輪時の安定感を実現。フレームの地上高を抑え、足抜き空間を約8%広げたことで跨ぎやすくなり、乗り降りもスムーズにできるという。

 価格は、ギュット・クルーム・EXは16万5800円(税別)、ギュット・クルーム・DXは14万9800円(税別)。

 なお、発売を記念して、ギュット・クルーム・EXの1000台限定カラーモデル「マットファインオレンジ」も発売した。コンビのコーポレートカラーであるオレンジ色につや消しの塗装を施したという。

 パナソニック サイクルテックの片山栄一社長は「子供とお母さんだけでなく、お父さんにも寄り添う自転車を目指した」と話した。

パナソニック サイクルテック株式会社 社長 片山栄一氏

 安心をギュットアンバサダーは、多くのママやパパに、ギュット・クルームによる安心の自転車ライフと、充実した家族の時間について広く発信することを目的にしたもの。安心をギュットアンバサダーに就任したアンジャッシュの渡部建さんは2018年に第1子が誕生したばかりであり、「新米パパの僕にとっても心強い相棒で、安心をギュット詰め込んだ自転車。妻(タレントの佐々木希さん)にも帰ってから教えたい」と話した。

 渡部さんは、TVや舞台で見せる巧みな話術を使って、流ちょうにギュット・クルームの特徴を詳細に説明。パナソニック関係者を驚かせていた。

「安心をギュット」アンバサダーに就任したアンジャッシュの渡部建さん
安心をギュットアンバサダーに任命されてたすきをかけられる
サプライズで渡部さんにギュット・クルームがプレゼントされる一幕も

今後も自転車のIoT化を促進

 一方、スマートロック(電子錠)を搭載したIoT電動アシスト自転車は、通信機能を搭載してインターネットに接続。スマートフォンでQRコードをスキャンすることで、スマートロックの解錠や利用料金の決済が行なえるほか、走行データの記録や小型ディスプレイを使った電池残量情報の提供、GPSを活用した防犯性および追尾性を実現し、駐輪位置情報も管理できるという。

 まずはスポーツモデルを先行して開発。ショッピングモデル、子育てモデルなどにもIoT電動自転車のラインアップを拡大する。

スマートロックを搭載したIoT電動アシスト自転車
スマートロックの部分
ディスプレイには各種情報が表示される

 4月から国内数か所で開始するシェアリングサービスの実証実験では、パナソニック サイクルテックが主体となって専用の駐輪場を設置し、サービスに登録した近隣の住人が利用可能になる。蓄積した走行時間や距離などの自転車データを分析して、実用性やつながる自転車の可能性を検証。ローコストオペレーションによる効率的なシェアリングサービスを実現することを目指す。

 パナソニック サイクルテックの片山社長は、「海外では自転車のシェアリングサービスがうまくいっていないことは理解している」と前置きしながらも、「実証実験は、街づくりの中で自転車のシェアリングサービスをどう生かすことができるかという観点と、自動車のIoT化が進む一方で、同時に自転車のIoT化を進め、自動車と自転車の親和性を高めることが不可欠であるという2つの狙いがある」とした。

 2月1日からパナソニック サイクルテックの社長に就任する野中達行副社長は、今後の事業方針について説明。「片山社長の路線を踏襲し、自転車のIoT化を促進する。とくに、国内の電動アシスト自転車の販売を伸ばし、引き続き成長路線を推進する。電動アシスト自転車の普及率は約10%であり、これが2030年には約15%に拡大すると予測されているが、われわれが自ら仕掛けることで、普及率を25%程度まで引き上げ、そこでシェアを獲得することで成長を遂げたい」とした。

パナソニック サイクルテック株式会社 副社長 野中達行氏

 現在、パナソニック サイテクルテックの電動アシスト自転車の国内シェアは40%台で推移。2019年に発売した製品も堅調な売れ行きを示しているという。2018年12月3日に発売したギュット・クルームも、発売1か月で受注数が1万台に達しており、「前年比212%という高い成長を記録している。通常の販売スピードの2倍の勢いになっている」という。

 国内においては、IoTを活用したコネクテッドバイクの開発を推進。「今後はEB(電動アシスト自転車)メーカーとしてさまざまな車種展開を検討していく」とした。

パナソニック サイテクルテックの電動アシスト自転車の国内シェアは40%台で推移している
シェアサイクルについて

 自転車の国内総需要は前年比4%減の750万台となり、過去6年間でも年率4%減で市場が縮小している。だが、電動アシスト自転車は2017年には前年比12%増の64万台となり、過去6年間でも年率8%増で成長している。とくに子乗せモデルは、パナソニック サイクルテックの実績でも過去6年間で年率約20%の成長を遂げているという。「都市圏を中心に、子乗せ電動アシスト自転車が文化として定着していることが背景にある」という。

過去6年間の国内の電動アシスト自転車市場の推移
過去6年間の子乗せモデルの出荷台数推移

 パナソニックではこうした需要動向を捉えながら、子育てモデルを強化。「家族の移動という観点での提案ではなく、育児の質を向上するというコンセプトで提案していく」という。同社はコンビとの協業は継続的に進めており、協業による新たな製品開発の検討も続けているという。

コンビとのアライアンスについて
ギュット・クルームの受注数が1万台を突破した
コンセプトは「家族の移動から、育児の質を向上する!」

 また、海外向けには、北米の大手自転車製造企業であるKENTとの協業でモビリティバイク市場に参入。1月に米ラスベガスで開催したCES 2019では完成車を披露しており、「スポーツEBは米国ではあまり進んでいないが、KENTは積極的なメーカーであり、2019年中には製品を発売することになる。パナソニックはそこに対して、モーターユニットの供給で参入していくことになる」とした。

海外でのモビリティバイク展開について

 現社長の片山氏は証券アナリスト出身で、2016年にパナソニックに入社して話題を集めた。2月1日からはパナソニックのCSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー)に着任する。

「今後はパナソニックの全体戦略の中で、自転車事業を支えていきたい」とし、「直近2年間は自転車事業と介護事業を担当してきた。この経験を通じて、どの事業も取り組み方次第で大きく改善できることを実感できた。本社に戻って、パナソニックをどの人から見ても分かりやすい会社に変え、成長できる会社であることを示し、自力のある会社であるということを知ってもらいたい。経営企画担当として、この3つの要素を、社内外に分かってもらうことが仕事である」とした。