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アトランティックカーズ、独占輸入販売する855kg&400PSのダラーラ「ストラダーレ」公開

フルオープンモデルからタルガトップ、クーペにカスタム可能

2019年4月23日 開催

2256万5000円から

ダラーラ「ストラダーレ」の発表会に出席した株式会社アトランティックカーズ代表取締役CEOの野澤隆之氏(右)、ダラーラCEOのアンドレア・ポントレモリ氏(左)

 アトランティックカーズは4月23日、イタリアのレーシングカーコンストラクターであり、各メーカーのレースカーや高性能ロードカーの開発に関する専門的コンサルティングサービスを提供するダラーラと契約し、日本でダラーラ「ストラダーレ」を独占輸入販売すると発表した。価格は2256万5000円から。4月24日より販売を開始し、完全受注生産。納期は10か月ほどとなる予定だ。

軽量モデルが大馬力モデルを“やっつける”ロマン

ダラーラ ストラダーレのアンベール

 4月23日の発表会で登壇したアトランティックカーズ代表取締役CEOの野澤隆之氏は、「私のパッションを傾けるに値する素晴らしいモデルに出会いました。それがダラーラ ストラダーレです」とコメント。アトランティックカーズは過去、ロータスの輸入元を経て、アストンマーティンを20数年間、合計700台を超える台数を輸入したという。そして「第3章としてダラーラに携わります。子供のころに憧れたロータスで覚えた言葉はパワーウェイトレシオでした。非常に軽量なクルマがより大馬力のクルマを“やっつける”ところにロマンを強く感じたものでした」と振り返る。

 そのことを踏まえてダラーラのスペックを見ると、「確かに軽く(855kg)、同じような馬力のあるクルマ(400PS)はほかにも存在するでしょう。しかしダラーラ ストラダーレは強烈なダウンフォースがそこに加わります。クルマの速さを決める大きな要素は3つ。よくそのクルマが何馬力なのかという話を聞きますが、実は馬力は速さを決める要素の15%しかないのです。その次はライトウェイト、軽さが35%。残りの大きなファクターはダウンフォースだとダラーラCEOのアンドレア・ポントレモリ氏は話してくれました」と述べる。

 ダラーラ ストラダーレのダウンフォースは280km/hの最高速時に820kg。これによるメリットは非常に大きく、ブレーキングポイントがより先になり、コーナリング時の速度もはるかに上がる。この未知の体験こそが「ダラーラの世界観」だという。

 もう1つ、ダラーラ ストラダーレはレーシングコンストラクターらしい魅力も備わっている。それはカーボンコンポジットによる安全性だ。野澤氏は「フォーミュラ・ワンやインディカーにも採用されているカーボンコンポジットは、軽量化や剛性とともに人の命を守るためのものでもあります。コクピットに入り、きちんと4点式シートベルトを締めてさえいれば人の命を失わずに済むのです」と述べる。軽量化といえばパイプフレームで軽く作ったりするものだが、その発想とはまったく違うことを強調した。つまり、ダラーラの創設者であるジャン・パオロ・ダラーラの考えは、「人が亡くならないようなクルマを作る、それも究極の戦いの中で命を守ることなのです。これがベースにあるという会社の凄みを非常に感じています」と野澤氏はいう。

 このほかにもダラーラ ストラダーレは、「(スポーツカーの)一般的な常識がほぼ通用しません」とも。具体的には、一般道での走行中でもダウンフォースが発生していることから、車高が下がることが想定されるので、フェンダーとタイヤのクリアランスは大きめに取られている。さらに、サーキットよりも一般道の方が凸凹があることから、サスペンションの動きで吸収しなければならないこともある。軽量であることからブレーキローターも小径化して軽くでき、その結果、バネ下重量を軽減させることができる。ダラーラ ストラダーレではしっかりとサスペンションストロークが確保され、乗り心地も非常によいという。

 野澤氏は「話を聞けば聞くほど引きずり込まれるクルマであり、われわれのパッションを傾けて、このブランドをしっかりと日本で育てていきます。われわれは単に物を売るという発想はまったくありません。そのフィロソフィを日本でしっかり翻訳して、このようなクルマを作る世界で唯一のブランドだということをしっかりと伝えていきたい」と意気込みを語った。

ダラーラ ストラダーレのエクステリア。OZレーシングのホイールにピレリ「P ZERO」(フロント205/40ZR18、リア255/30ZR19)を組み合わせる
2シーター仕様のインテリア

ディーラーではなくアンバサダー

ダラーラCEOのアンドレア・ポントレモリ氏

 また、同じく発表会に出席したダラーラCEOのアンドレア・ポントレモリ氏は、日本の正規代理店を選定するにあたって数社のアプローチがあったことを明かす。最終的にアトランティックカーズを選んだ理由は、「イタリア文化について非常に深い知識と造形を備えているからです」という。アトランティックカーズの親会社である安田造船所は、イタリアの家具メーカーB&Bや、クルーザーのアジムットといったブランドを扱っていることからその判断を下したとのことだ。

 さらに「イタリア文化への深い知識とともに、クルマに対しての情熱、パッションを持っているからです。この組み合わせがあるからこそ、アトランティックカーズを選んだといえます。われわれが求めていたのはディーラーではなく、アンバサダーです。ジャン・パオロ・ダラーラという人物が情熱を傾けてきたビジネスを、日本でも伝えていきたかった。決してお金を儲けるためだけのビジネスをするためではないのです」とその思いを語った。

 そしてダラーラ ストラダーレについて、アンドレア氏は「われわれがレースの世界で50年かけて学んできたことの集大成」と位置付ける。2017年11月16日、第1号車が納車された。そのクルマはジャン・パオロ・ダラーラ自身のもので、実際に自らの運転で工場からラインアウトしたという。「自分の夢を実現して、かつそれをドライブすることができる人はなかなか珍しい」とアンドレア氏。

アトランティックカーズを日本の正規代理店に選定した理由について、「イタリア文化への深い知識とともに、クルマに対しての情熱、パッションを持っているから」と語るポントレモリ氏

 このクルマの開発のスタートについてアンドレア氏は、「ジャン・パオロ・ダラーラが私のオフィスに来て『私には夢がある』と話し始めたのです。これまで市販車に向けては7回ほどプロジェクトとしてスタートさせましたが、さまざまな理由で、特にその他の案件にエンジニアをまわさなければならなかったので、一度も実現しませんでした。現在、私(ジャン・パオロ・ダラーラ)は78歳なので、ぜひこの夢を見たいと。そこで私は彼に約束しました。あなたの80歳の誕生日、2016年11月16日にその夢を実現したクルマに乗れるようにします。その約束は実際に果たされたわけですが、18か月の開発期間をかけて完成しました」とエピソードを披露してくれた。

 また、このダラーラ ストラダーレにはダラーラが誇るエアロダイナミクスに関するすべての知見とともに、「シャシーやボディワークに関するあらゆるところにカーボンファイバーのテクノロジーを駆使することで軽量化を実現。また東レが炭素繊維の供給をしているので、日本のテクノロジーも活かされています」と話す。

 ボディに関しては多岐多様なオプションが備わっている。ベース車両はバルケッタと呼ばれ、フロントスクリーンもないフルオープンモデルだ。そこからフロントスクリーンやTフレームと呼ばれるタルガトップ、そしてガルウイングドアを取り付けたクーペまであり、アンドレア氏はそのいずれもが「ガレージで、数分間のうちに一方から一方へのコンバージョンが可能です」と説明した。フロントスクリーンはポリカーボネート製で、市販車では世界でこれ1台とのこと。認証も取れるようになっているという。

ボディスタイルはフルオープンモデルをベースに、タルガトップ、クーペまでラインアップ

 トランスミッションは6速MTが標準だが、オプションでロボタイズドパドルシフトも選択可能。搭載されるエンジンは2.3リッター4気筒16バルブツインスクロールターボで、最高出力は400PS、最大トルクは500Nmを発生する。最高速は280km/h、0-100Km/h加速は3.25秒、80-120Km/h加速は3.49秒(5速ギヤにて)、100-200Km/h加速8.5秒(5速ギヤにて)、100-0Km/hは31m。最大横加速度は2Gを記録している。

最高出力400PS、最大トルク500Nmを発生する2.3リッター4気筒16バルブツインスクロールターボエンジン

もうすぐ試乗車も

 ダラーラ ストラダーレは合計600台を生産する予定で、現在の生産ペースは1週間に1台だ。しかし、アンドレア氏によるとこの4月からそのペースを1週間に2台程度に引き上げ、約5年でこの600台の生産を終える予定だという。

 アトランティックカーズからもほぼ購入決定のユーザーが複数いるとのこと。これらすべてのメンテナンスは同社が行ない、これまでアストンマーティンを扱ってきた工場で行なわれる。

 販売はアトランティックカーズが運営しているショールームで実施され、東京港区麻布台のショールームと福島県いわき市にあるいわきFCパークにあるショールームで行なわれる。実車の展示については、国内に車両が1台しかないことから当面は麻布台に展示される予定。6月末から7月中旬までにはもう1台、試乗ができるような車両も配備する予定だという。