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住友ゴム、2019年12月期 第2四半期決算。売上高0.9%増の4292億7900万円、純利益55.5%減の63億2200万円で増収減益

新たな中期計画の詳細を2020年2月に発表

2019年8月7日 開催

3月に住友ゴム工業の代表取締役 社長に就任した山本悟氏

 住友ゴム工業は8月7日、2019年12月期 第2四半期(2019年1月1日~6月30日)の決算内容について解説する決算説明会を開催。合わせて「中長期計画の振り返りと新中期計画の考え方」と題したプレゼンテーションを行なった。

 第128期となる2019年上期の連結業績(IFRS)は、売上収益が前年同期比0.9%増の4292億7900万円、事業利益が同38.7%減の164億8200万円、営業利益が同39.2%減の164億5700万円、親会社株主に帰属する当期利益が同55.5%減の63億2200万円となった。

2019年12月期 第2四半期(2019年1月1日~6月30日)の住友ゴム工業連結業績(IFRS)

 この連結業績について、住友ゴム工業 代表取締役社長 山本悟氏が説明を実施。世界経済は引き続き米国と中国の通商問題の動向によって影響を受けているが、米国では着実な景気の拡大が継続し、欧州でも景気回復の動きがゆるやかながら持続。世界経済全体としてはゆるやかに回復していると分析しつつ、これまで比較的高い経済成長率を維持してきた中国で景気に減速感が生じており、中近東地域や一部の新興国で景気の低迷が継続ているなど、先行きについて不透明感が増してきているという。

 日本国内については雇用環境が着実に改善して、個人消費の持ち直しや企業収益の改善、設備投資の増加が見られるなど、景気がゆるやかに回復。同社グループでは、天然ゴムの価格相場が安定していたものの、販売環境では一部新興国の通貨下落による市場環境の悪化、競合他社との競争が海外市場で激化するなど厳しい状況で推移していると説明した。

 セグメント別では、同社事業の主力となっているタイヤ事業について、国内新車用タイヤで納入車種の増加によるシェア拡大、低燃費タイヤを中心とした高付加価値商品の拡販を推し進めたが、冬期に降雪量が少なかったことから年初のスタッドレスタイヤ販売が前年同期を下まわり、売上収益も前年同期比で減少する結果となっている。

 海外新車用タイヤは、北米や欧州のほか、新興国市場で納入拡大を実現。売上収益が前年同期を上まわった。海外市販用タイヤは、アジア・大洋州地域で中国の景気減速の影響を受けたが、欧州・アフリカ地域では欧州を中心に「ファルケン」ブランドの販売が好調。北米では4WD・SUV用タイヤ「WILDPEAK(ワイルドピーク)」が好調に推移するなど、ファルケンブランドで販売を拡大。売上収益は前年同期を上まわっている。

 これらの結果、タイヤ事業全体で売上収益は前期比1.8%増の3672億7700万円となったが、為替レートでユーロ円が132円から124円と円高になり、海外生産の拡大に向けた固定費の増加などもあって、事業利益は前期比39.5%減の125億400万円を計上している。

「タイヤ」「スポーツ」「産業品他」といったセグメント別の連結業績
事業利益増減要因イメージ

 2019年12月期通期の業績予想は年初予想から変更なく、売上収益が前年同期比2.9%増の9200億円、事業利益が同7.7%減の560億円、営業利益が同5.5%減の540億円、親会社株主に帰属する当期利益が同6.2%減の340億円。しかし、山本社長は今後の世界経済の見通しでは米国で着実な景気回復が続き、欧州市場も引き続きゆるやかに成長していくと見られているものの、中国の景気減速が続くと予想され、米国と中国の通商問題、英国のEU離脱などのグローバル市場に対する影響、為替の変動など不透明な要素も存在。景気の不確実性に留意が必要だとの考えを示した。

 また、日本国内でも消費税の引き上げによる景気に対する影響、消費マインドの改善につながる財政不安の解消、賃上げ動向などに不透明感があり、景気は回復傾向にあるものの予断を許さない状況だと解説し、引き続き販売環境の変化に柔軟に対応しながら、利益の最大化に努めていくとした。

2019年12月期の連結業績予想は年初予想から変更なし
2019年12月期のセグメント別連結業績予想
2019年12月期の事業利益増減要因イメージ
海外工場でのタイヤ生産能力をさらに拡充し、設備稼働率も高めていく計画

現状を反映した「新中期計画」の詳細を2020年2月に発表

 決算説明に続けて行なわれたプレゼンテーションでは、山本社長が2012年に同社が掲げた長期ビジョン「VISION 2020」の紹介と、これまでに実現した具体的な成果などが解説された。また、長期ビジョン策定の2012年以降に事業環境が大きく変化したことを受け、2018年には2022年を目標年度とする中期計画を発表。現在は長期ビジョンと中期計画の双方に沿って事業を進めているものの、2018年以降にも事業環境が変化を続けており、計画達成は厳しい状況になっていると説明。現状を反映した2020年~2025年を計画年度とする新中期計画の策定を進めていることを紹介した。

 2020年2月に詳細な発表を予定しているという新中期計画では、「グローバルでの経済状況」「自動車をはじめとする産業構造の変化」「デジタル化の進展」「消費者志向の変化」の4点を検討すべき外部環境の変化として設定。グループの体質強化やコストの改善、ブランドのバリューアップなどによって「経済的価値」向上の取り組みを行ない、住友グループが受け継いできた「住友事業精神」による持続的成長の達成やESG(環境、社会、ガバナンス)推進などで「社会的価値」を向上させていくという。

 また、デジタル化ではIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といった技術の革新的進化による市場変化を事業機会として捉え、技術開発コンセプトの「SMART TYRE CONCEPT」にデジタルツールを使うことで得られるさまざまなデータを利用する「新たなソリューションサービス」を追加。既存の「セーフティ」「エナセーブ」といった技術領域と合わせてビジネスを拡張していく。さらに「CRANTS(群馬大学 研究・産学連携推進機構 次世代モビリティ社会実装研究センター)」と共同研究している自動運転 レベル4に対応するタイヤ周辺サービス、IoT開発企業とソリューションシステム構築などを進めており、今後もさらにデジタル化の取り組みを推進していくとした。

 このほか、新たな中期計画の策定に向け、山本社長は入社以来、自身が長く販売などビジネスの現場に携わってきた経歴を紹介し、取引先との付き合いなどを通じて市場環境やビジネスの変化を肌で感じてきたとコメント。この経験を事業運営にも生かしていきたいとの意気込みを語っている。

2018年に策定した中期計画は、事業環境の変化で達成が厳しいと判断。現状を反映した新たな中期計画を策定することになった
新中期計画ではデジタルイノベーションを推進していく
ダイバーシティや働き方改革にも取り組んでいく
「VISION 2020」で進めてきた体質強化と収益基盤の確立を背景に、グローバルでの堅実な成長基盤を確かなものにしていく
VISION 2020では成長を見込める海外市場に注力し、現地生産を行なうための生産施設拡充、販売強化などを実施。さらに市場に合った取り組みを柔軟に行なえるよう、グローバル3極体制に移行している
中国事業の拡大施策と成果
欧州事業の拡大施策と成果
米国事業の拡大施策と成果
欧州と米国にタイヤテクニカルセンターを開設。現地ニーズに合った製品開発を開始している
2017年10月に発表された「SMART TYRE CONCEPT」
タイヤ事業以外でも各種取り組みを進めている
スポーツ事業ではダンロップブランドをグローバル展開
質疑応答で山本社長は、SMART TYRE CONCEPTで開発に取り組んでいる新製品の開発状況なども紹介

 説明会の後半に行なわれた質疑応答では、事業利益の減益要因になった固定費の増加がどのような理由から起きているのかを問われ、山本社長は「この数年、弊社グループはグローバルでの成長基盤を構築するため、ブラジル、トルコに工場を立ち上げ、さらに南アフリカで工場を買収、米国ではグッドイヤーとのアライアンス解消を機に工場を手に入れまして、それぞれで体質強化を進めております。今は先行投資を進めているところで、まだ販売で先行投資の固定費をカバーできていない状況で減益要因となっています。工場の体質強化、生産性のアップ、コスト削減などに向けてそれぞれの工場で本部からの支援も含めて進めています。とくに買収した工場については、私ども住友ゴムの製造の考え方といったものを取り入れ、市場に合ったよりよい製品、品質の高い製品、コストの削減、生産性の向上などに向けて支援を行なっています」。

「ブラジルや南アフリカの工場ではトラック用タイヤの生産にプラスして、生産財の市場にも打って出る体勢を整えてきています。アメリカについては、市場ではSUVに代表される4WD車が販売を伸ばしていて、これに『地産地消』する高インチのSUV向けタイヤを現地生産し、販売に寄与する体制を構築するための増産・設備投資を進めています。さらにアメリカ工場ではタイ工場からの生産移管や新製品の開発などを行なっていて、これまではスタンダードなタイヤを主に生産していたのですが、SUV向けの高インチタイヤの生産数を高め、アメリカの市場ニーズに現地生産で対応する体勢にシフトしていっています」と回答した。

 また、新たな中期計画でも注力されると説明されたSMART TYRE CONCEPTの進捗状況などについても質問され、これについて山本社長は、100年に1度の大変革を迎えていると言われる自動車業界において、まずは製品自体の安全、環境といったテクノロジーを各種技術で進化させつつ、新たな中期計画では新サービスを検討していくとあらためて説明。

 CASEへの対応も見据え、路面状況を推定、察知していく「センシングコア」に注力しており、空気の注入が不要な「エアレスタイヤ」も早期の製品化に向けて取り組んでいると説明。センシングコアについてはいくつかの企業と共同研究を行なっており、自社の技術との相乗効果、さらなる開発のスピードアップを図り、まだ世の中にない新しい技術をユーザーに届けたいと考えているとした。また、「性能持続技術」については技術を確立しており、2020年に量産を開始すると説明。同じく2020年には、「LCA(Life Cycle Assessment)」の分野で開発した新素材により、商品のライフサイクル全体で環境性能をより高めたコンセプトタイヤを発表するとのこと。

 これに加え、トレッドゴムの性質を温度などによって変化させることで「雨に強いトレッドパターンに変化する」といった特徴を与える「アクティブトレッド」を採用するコンセプトタイヤを2023年に発表。SMART TYRE CONCEPTの全技術を採用した「まったく新しいタイヤ」を2020年代後半までに完成させて公開するとの計画を明らかにした。