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室屋義秀選手の2019年シーズンレビューが行なわれたブライトリング新作発表会
最後のエアレース千葉大会で敗者復活からの劇的な逆転優勝を振り返る
2019年10月3日 19:17
- 2019年10月2日 開催
レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップの2019年シーズン最終戦 千葉大会は9月8日に決勝が行なわれ、室屋義秀選手が敗者復活から劇的な逆転にて優勝を遂げたことは、こちらの記事などですでに詳しくお伝えしている。年間チャンピオンはわずか1点差で逃してしまったが、大活躍したシーズンとなった。
10月2日、室屋選手の2019年シーズンを振り返るレビューが、ブライトリングの新製品紹介と共に都内で開催された。
ブライトリングは、1884年の創業以降、「スイス製COSC(スイス公認クロノメーター検査協会)認定クロノメーター」を自社製造ムーブメントにこだわって提供し続けている高級ウォッチメーカー。室屋選手はエアレースで注目されているが、ブライトリングのパイロットでもある。ブライトリングは長くエアレースをサポートしてきた。なお、残念ながらレッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップは今季で終了することが発表されている。
室屋選手の2019年シーズンレビュー
──あらためて千葉戦の優勝おめでとうございます。台風が来たため、レースを早めた未経験の午前の予選でしたね。
室屋選手:午前中のレースは初めてでした。コンディション作りは難しかったです。通常ルーティンに2時間とっているのですが、コンディションを整える時間がない中でのレースでしたが、どの選手も同じだったんじゃないかと思います。
──Round of 14(※)の最初の対戦は好調なベン・マーフィー選手でした。
※すべて2選手での対戦で争われ、Round of 14→Round of 8→Final 4と進む。敗者復活として、Round of 14で負けた7名で最速の選手がファステスト・ルーザーとしてRound of 8に進出できる。
室屋選手:ベン・マーフィー選手はまだ2年目なのですが、イギリスのレッドアローというフォーメーションチームのリーダーでした。彼の機体は僕の使っていた機体だったので、部品などをあげなきゃよかった……、などと後悔してたりもします(笑)。彼が飛んだ後に無線で聞いたタイムなら、1秒くらい余裕があって大丈夫だなと思っていました。ガンガン押してもいけたんですが、ペナルティをもらうリスクもありますし、0.5秒以上前に出られるだろうという感触でフライトして……。
──0.015秒差で届きませんでした。
室屋選手:やっちまった~。という感じでしたね。自分のコントロールしたとおりのフライトができていたので、まったくわるくはなかったのですが、ちょっと失敗しました。かなり厳しいなと思っていました。マーフィーのフライトはスゴくよくて、おそらくベストフライトなんじゃないかと。Round of 14最終にカービー・チャンブリス選手とフアン・ベラルデ選手が対戦して、この2人より自分のタイムが上まわればよかったのですが、前日最下位だったチャンブリス選手がほぼトップタイム。おいおい何だよって思いました。最後は、皆さんの思いのエネルギーがベラルデ選手に向いたのか、タイムが伸びず。ファステスト・ルーザー(敗者中で最速の選手が1人だけ次のRound of 8に進める)になれました。
──室屋選手がRound of 14で負けてしまってから、ファステスト・ルーザーになることを期待して観客がほとんど動かず祈っていたそうですよ。ポイントリーダーだったマルティン・ソンカ選手がペナルティでRound of 14敗退も劇的でした。
室屋選手:あらっ! どうしたのって感じでしたね。ソンカ選手が消えると、チャンピオンシップ争いはマット・ホールと一騎打ちだなと。
──Round of 8に進めました。
室屋選手:Round of 14を勝ち上がれたのは奇跡でした。これでもう“奇跡パワー”は使い切ってしまったので、完璧にこなすしかなかったです。Round of 8ではトップタイムだったと思いますが、全開でいってフライトは文句なしでした。これなら負けないだろうというフライトができました。
──Final 4に進んだのは、マット・ホール選手、カービー・チャンブリス選手、ピート・マクロード選手、室屋選手でした。
室屋選手:Round of 8が終わって、マット・ホール選手とはお互い意識していました。ここまでで僕が1位、マットが4位でした。とにかくトップタイムを出すしかない(Final 4は4名でタイムを争う)。最初に飛んだピートがパイロンヒット(3秒ペナルティ)して、僕が2番目。マットとガチンコ勝負になりました。最後のフライトは、とても満足のいくものでした。いわゆるゾーンに入った状態でした。ビリビリしびれる楽しい状況でした。
──マット・ホール選手はどう感じてたのでしょうかね。
室屋選手:ピートがパイロンヒットしたので、とにかくヒットしないように慎重に流す感じだったのではないかと思います。僕の期待としては、マットが僕との争いにヒートアップしてこいと思ってたのですが、そうはならず。流したな、というフライトでしたね。
──結果は、室屋選手が優勝し、年間チャンピオンはマット・ホール選手が取りました。室屋選手は2019年の4戦中3勝してるんですが、悔しくないですか。
室屋選手:インタビューでは、よく世界平和のためにとか答えているんですが(笑)。今年からのポイント制で、予選ポイントが重要になっているのです。1ポイント届かなかったですね。マット・ホール選手は実力が高く、最後までもつれて2位ということも3回あるので、最後に年間チャンピオン取れておめでとうと思います。彼とは第3戦のハンガリーのRound of 14で直接対決しているんです。その時、風がフライトの直前で変わって、自分は対応できなかったんですが、彼はキッチリ対応してラインを変えてきた。ハンガリーではマットが優勝したんです。そこですでに決まっていたような気がします。能力的に完全に負けていた。
──レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップは終わってしまうわけですが、残念ですよね。
室屋選手:残念ですが、1つ終われば新しいことが始まりますし、それを待ちつつできることは、トレーニングを続けてコンディションをキープすることです。日本で人気が出たのは、2015年から千葉大会が開催されてきたことが大きいです。
──室屋選手は、千葉大会で2016年、2017年、そして最後の2019年と3回優勝しています。
室屋選手:すごい勝率ですよね。ホーム戦では、よいわるい両方の面があります。トレーニングがしやすいメリットがありますが、ホーム戦ならではのプレッシャーがあります。時間のコントロールが難しくなるんですね。応援もパワフルですし。ビーチに10万人待ってますからね。去年は7秒でレースが終わってしまったのですが、10万人分の視線が突き刺さって死にそうでしたから(笑)。そういうのをうまくコントロールできないと、ホーム戦は難しいです。
──初優勝、最後の優勝も千葉大会!
室屋選手:ほんとにイイところをいただきました。
──これまでさまざまな方々からサポートもありました。
室屋選手:今日はブライトリングの発表会ということもありますが、ブライトリングはエアレースでサポートしていただいていて、2016年まではオフィシャル・タイム・キーパーでもありました。エアレースのチームも持っています。そのファミリーに入れてもらって、エアレースだけでなく、エアーショーでの機体も含めて長くサポートしてもらっています。
──本日はブライトリングのアベンジャーシリーズが発表になっています。
室屋選手:現在「アベンジャー クロノグラフ 43」を付けています。「クロノマット JSP」も持っているのですが、それに比べて軽くなったかなと勘違いするほどフィット感がよいです。コクピットではよく動くので、かなりキツくしてるのですが、付け心地がよいです。グローブをしていても竜頭が回しやすい。パイロットにとって信頼性は大事です。ブライトリングの時計は安心感があります。
──今後について、少し教えてください。
室屋選手:飛行機に興味を持ってくれる子供たちが増えてきていることもあり、「空ラボ」という航空をテーマとした教室を、今年の5月から始めて全5回開催しました。航空をテーマにしてますが、まずは何も決めずにスタートします。やりたいことを書き出してもらって、そこから1つの課題に決めていきます。最終的に成果を発表することを目標に、自分たちで計画して何を行なったらよいのか決めていくわけです。みんなでできることを、コミュニケーションをしながら、合意形成を含めやりたいことをやっていく。目標が達成できたら、さらにその先の人生に生かしてもらうというのが骨子です。
──継続して開催していくのですか?
室屋選手:来春も募集して開催していこうと思っています。
──室屋選手はブライトリングの「ジャパン・レーサーズ・スクワッド」にも参加されていますが、こちらは今後どうなりますか。
室屋選手:ブライトリングには、「空ラボ」にも協力していただいています。「ジャパン・レーサーズ・スクワッド」は、インディカー・シリーズに参戦する佐藤琢磨選手、MotoGPに参戦する中上貴晶選手、そして僕の3人で結成しています。レースが終わって12月ごろに、子供たち向けのイベントを何かやろうということで進めています。期待していてください。
──今後も活躍を期待しています。
室屋選手:ありがとうございます。
ブライトリングのパイロットウォッチ「アベンジャー」シリーズが刷新
ブライトリングの新製品発表会では、ブライトリング CCO ナッサー・ベナイサ(Nasr Benaissa)氏も登壇し、「AIR」「SEA」「LAND」「PROFESSIONAL」と網羅した、幅広いコレクションラインアップがあることを紹介。3月に開催されたバーゼルワールドで発表された新作「スーパーオーシャン」シリーズのヒットの報告と、ブライトリング初の復刻「ナビタイマー REF.806 1959 リ・エディション」は、1959本すべてが予約完売したことの報告もあった。
今回の発表では、機能性を重視した無骨な現代的パイロットウォッチ「アベンジャー」シリーズが14種に刷新され、「コルト」シリーズも取り込み、さらにモダンに進化している。また、1940年代に活躍した英国の航空機「デ・ハビランド・モスキート」をモチーフとした「アビエーター 8 B01 クロノグラフ 43 モスキート」も発表された。
ブライトリング製オンボードクロノグラフが計器として航空機のコクピットパネルに装着されていたという歴史もあり、パイロットウォッチは同社を代表するコレクションとなっている。特に回転計算尺(※)を備えた「ナビタイマー」シリーズは、パイロットも憧れるコレクションとしてご存じの読者も多いだろう。これが現代版パイロットウォッチ「アベンジャー」シリーズに色濃く反映されている。これからも、航空機やエアラインをモチーフにしたパイロットウォッチを見せてくれるはずだ。
※ 電卓がなかった時代、数値の書かれた目盛りを移動させることで、簡単に計算結果を得られたのが計算尺。長い計算尺はコクピットでは邪魔になる。そこで考え出されたのが、腕時計のインナーベゼル部に回転式の計算尺を備えることだった。
【お詫びと訂正】記事初出時、モデル名の表記で一部誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。