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トヨタ、空気を使わない「エアレス塗装機」を開発。世界最高の塗着効率95%以上を実現

美容器具などで用いられている静電微粒化技術を車体塗装に応用

2020年3月12日 発表

トヨタ自動車が開発した新型塗装機「エアレス塗装機」。世界最高の塗着効率95%以上を実現させた

 トヨタ自動車は3月12日、静電気を活用して空気を使わない新型の塗装機「エアレス塗装機」を開発したと発表。世界初の新技術を採用することで、塗着効率を従来型の60%~70%程度から、世界最高の95%以上に向上させたとしている。

 同社が開発したエアレス塗装機は、車体塗装工程で従来から使用しているエアスプレー式の塗装機に代わるもので、塗装の際に噴霧した塗料に対して実際に車体に塗着する塗料の割合を向上させる新型塗装機となる。

 同社ではエアレス塗装機を導入することにより、トヨタグループの塗装工程におけるCO2排出量が7%程度削減できる見込みとし、加えて塗装ブース(塗料を吹き付けるエリア)の下部にある未塗着塗料の回収装置を小型化することができるため、今後は塗装ラインのコンパクト化が可能という。

  エアレス塗装機の開発は、トヨタが2015年に公表した「トヨタ環境チャレンジ2050」の1つとして、「工場CO2ゼロチャレンジ」の実現に向けた取り組みの一環。これまでに高岡工場と堤工場に導入を完了して、今後は他工場へ順次展開するとともに、トヨタグループ会社での導入やグループ外への技術供与も検討していく計画。

新型塗装機「エアレス塗装機」の特徴

従来型のエアスプレー式塗装機と新型のエアレス塗装機

 新型のエアレス塗装機は、電気で塗料を微粒化(静電微粒化)するとともに、静電気を帯びた粒子が車体に引き寄せられるように塗着(静電塗装)している。静電微粒化や静電塗装の技術により、微粒化された粒子の飛び散る量が大幅に減少し、高い塗着効率を達成させた。

トヨタ自動車が開発した新型塗装機「エアレス塗装機」。塗料を電気で微粒化した上、静電気で塗装するため、飛散する粒子が微量

 従来のエアスプレー式の塗装機では、主に空気の力で塗料を微粒化し、微粒化した粒子を空気で車体に塗着しているため、車体から跳ね返った空気によって塗料の粒子が吹き飛ばされることにより、塗着効率は60~70%程度と留まっていた。

従来型のエアスプレー式塗装機。エアを使って塗料の粒子を噴霧するため、跳ね返って飛散する粒子が多い

美容器具などで用いられている静電微粒化技術を車体塗装に応用

静電微粒化原理アニメーション

 エアレス塗装機では、世界初の技術として微粒化された塗料の粒子を静電気で車体に塗着させることに成功した。

塗料の吹き出し量を最適にした塗装機先端の円筒型回転ヘッド

 極少量の液体を吹き出す美容器具などで用いられている静電微粒化技術を、車体塗装に応用したもので、具体的には塗装機の先端にある塗料の吹き出し口を円筒型にして、その先端に約600本の特殊な溝を作るとともに、円筒型ヘッドの回転で生じる遠心力により、塗料を溝に流れ込ませた上で静電微粒化させている。

エアレス塗装機先端の円筒型回転ヘッド

円筒型ヘッドと車体の距離を約10cmに保つ高精度な電流制御

近接塗装を可能にした高精度な電流制御

 エアレス塗装機では、円筒型ヘッドと車体の距離を約10cmに保ちながら、一定の電流で静電微粒化と静電塗装ができるようにした。

 車体の凹凸により円筒型ヘッドと車体の距離が変動すると電流が不安定となってしまうところを、電流のばらつきを常時監視して電圧を自動に制御。これにより、塗料粒子の大きさのばらつきを回避することができ、高品質な塗装を実現した。