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GM、2020年第1四半期の売上高327億ドル、純利益3億ドル

発表を控えるラグジュアリーSUV「キャデラック リリック」「ハマーEV」は予定通り生産

2020年5月6日(現地時間)発表

好調だったライトデューティーピックアップトラック(画像はイメージ)

 GMは5月6日(現地時間)、2020年第1四半期の業績報告を発表した。売上高327億ドル(前年比6.2%)、純利益3億ドル(前年比86.7%)、調整後EBITは12億ドル(前年比45.9%)を計上。また、新型コロナウイルスのパンデミックが調整後EBITにもたらした影響は14億ドルであった。

 GMの会長兼CEOであるメアリー・バーラ氏は「GMの強みは、つねに人材です。GMが変革を続けながら、最高のスタッフとワンチームとして現在直面している困難に立ち向かえることを、私は誇りに思います。私たちには、当社の長期的な実行可能性を確保するとともに、すべてのステークホルダーに価値を創出するために、迅速かつ戦略的に厳しい決断を下してきたという実績があります」と述べている。

最優先事項は安全性

 新型コロナウイルスの世界的大流行に伴い、GMは従業員の安全性を確保するため、中国の春節にあたる1月に実施した操業停止を延長するとともに、北米および南米においても3月まで生産を停止。厳格な安全対策のもと、韓国では第1四半期まで生産を継続することができ、中国でも2月中旬から段階的に操業を再開した。

 現在は北米での操業再開に向けて、綿密な計画が進行。各種労働組合や政府関係者との対話や協力に基づき、GMは広範な安全対策のもと、米国とカナダにおける生産活動の大部分を5月18日に再開させることを目標にしているという。世界的に標準化されたこの安全対策は、中国、韓国、インディアナ州ココモ、テキサス州アーリントン、ミシガン州ウォーレンのGMの各種関連施設、同社のカスタマー・ケア・アンド・アフターセールス部門の業務運用に加えて、組合幹部やパートナーであるサプライヤーとの協力を通して得られた知見に基づいて決められている。これらの対策は、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)およびWHO(世界保健機関)が定めるガイドラインを満たすか、それを上回るレベルで、従業員が施設に到着してから施設を離れるまでの間、安全を確保しながら作業できるようになっている。

GMのウォーレン製造工場にてフェイスマスクを検査するオペレーター
強固な流動性ポジションを維持

 GMは操業停止とともに、直ぐに流動性を保持するための対応にも踏み出していて、GMではリボルビング・クレジット・ファシリティーによる融資額の約160億ドルを含め、期末の時点で334億ドルと堅調。さらに、GMは3年間のリボルビング・クレジット契約に基づいて融資枠をさらに36億ドル拡大したほか、GMファイナンシャルと期間を364日とする20億ドルのリボルビング契約を更新した。

 GMはキャッシュを確保して事業の継続的な実行可能性を維持するため、積極的な緊縮策を実施。この中には、世界各地の役員や一般従業員に対する報酬支払の繰延、緊急性の低いプログラムの実施時期を調整するといった内容が含まれる。

 また、GMでは、普通株に対する四半期配当を保留するほか、自社株買戻しプログラムを一時停止。これら以外にも、GMは過去数年間にわたって、事業の強化と景気の低迷に備えた強固な基盤づくりを目的とした数々の方策を講じてきている。

新型コロナウイルスの世界的大流行との闘い

 今回の危機では初期段階から、重要な医療機器の生産に関し、GMとしては早急迅速な支援を提供することが必要になると認識。4月にはベンテック・ライフ・システムズ社と協力し、インディアナ州ココモ工場で重症者用人工呼吸器の製造ならびに出荷を開始。わずか1か月足らずで、GMは連邦政府から3万台の受注を受け入れた。

 また別の取り組みとして、GMはウォーレン工場を一時的に個人用医療防護具の生産に転換し、100万枚の医療用マスクの寄贈を実施。中国の上汽通用五菱汽車とGMメキシコの両社も医療用マスクの生産を開始。GMは、カナダの工場でも同様の活動を進められるよう、現在準備中という。

2020年第1四半期のセグメント別業績(調整後EBIT、単位:10億ドル、継続事業の金額のみ表示)

・北米/2.2億ドル(2019年は1.9億ドル)
調整後EBITはライトデューティーピックアップトラックとフルサイズSUVの好調および企業変革に伴うコスト対策が主な要因となって上昇したが、生産の一時停止による販売台数の低下によって一部相殺。

・GMインターナショナル/0.6億ドル(2019年は0.0億ドル)
新型コロナウイルスによる影響が主な要因となって中国での持分株利益は前年比で5億ドル減少したものの、各種コスト対策によって一部相殺。

・GMクルーズ/0.2億ドル(2019年は0.2億ドル)
ドライバーが操作する以上の運転性能の実現への急速な進展に向けて、第2四半期もエンジニアの採用継続を予定。

・GMフィナンシャル(EBT)/0.2億ドル(2019年は0.4億ドル)
新型コロナウイルスに関連する貸倒引当準備金の増加が主な要因となり、調整後EBTが減少。第1四半期、GMファイナンシャルはGMに対して4億ドルにおよぶ配当金の支払いを実施。

※GMのCFOディビア・スリヤデバラ氏は「GMは前例のない事態の中での企業運営にあたり、流動性の維持に注力し、長期的に企業をより強く、より競争力を高めるための適切な対策を講じています」と述べている。

顧客への支援

 GMのカスタマー・ケア・アンド・アフターセールス(CCA)事業では、ユーザーのサービスやメンテナンスに必要な作業を継続的にサポート。各ディーラーは、オンライン販売ツール「ショップ・クリック・ドライブ」をさらに活用することで顧客との関係性を深めている。

 このツールを利用しているディーラーの9割は、顧客が車を安全に購入できるタッチレス形式のホームデリバリーを提案しており、また、サービス部門も許可された場所で営業。さらに、GMファイナンシャルは、支払いの延期や延滞料の免除など、顧客のためのソリューションを提供している。

第1四半期の販売

 米国におけるGMの販売は、新型コロナウイルスの世界的大流行の影響を受けて約7%低下。販売に対する影響が地域ごとに異なる中、多くのディーラーでは、フルサイズピックアップトラックの需要が堅調を維持した。GMのフルサイズピックアップトラックの販売台数は前年比で27%増加し、小売市場でのシェアを大きく伸ばす結果となった。ライトデューティーとヘビーデューティーのセグメントを合わせると、第1四半期の占有率は41%に達している(J.D.パワー調べ)。

 中国では、2月に過去にない大きな販売台数の打撃を受けたが、3月に入って月間販売台数の減少幅が縮小し、業界全体が回復基調を示し始めたとしている。

好調だったフルサイズSUV(画像はイメージ)
GMインターナショナルの事業再編

 2月にGMは、オーストラリアおよびニュージーランドにおけるエンジニアリング、車両販売(GMのスペシャル・ビークルを除く)、デザインの各業務の終了と、ホールデン・ブランドを2021年までに廃止することを発表。また、タイのラヨーン工場の長城汽車への売却についても合意している。これらの結果、第1四半期の税引後現金及び非現金化費用を、合計で7億ドル計上した。

全車電動化の未来に向けた取り組み

 新型コロナウイルスの世界的大流行のさなかでも、将来のEVやAVのラインアップに向けての開発作業は、急速なペースで進展中。さらに、デトロイト・ハムトラミック工場では、同施設をGM初のEV専用組立工場に移行させるための作業が進められている。

 3月になるとGMでは、今後のEV戦略を発表し、専門的知識、柔軟性、企業規模を武器にしていかに電気自動車(EV)の未来をリードし、迅速、効率的かつ十分な収益性を確保したうえで売上拡大を図っていくかを提示。この戦略には、モジュール式の駆動システムと、独自開発の「アルティウム」バッテリーシステムを搭載した柔軟性の高い第3世代のグローバルEVプラットフォームが含まれる。

新型バッテリー「アルティウム」を搭載するGMの次世代EVプラットフォーム

 2020年の初頭には、シェアリングサービス用の電気式自動運転車「クルーズ オリジン」をサンフランシスコで公開。また、今後発表される予定のラグジュアリーSUV「キャデラック リリック(Lyriq)」と「ハマーEV(GMC HUMMER EV)」については、予定通り生産を開始するという。いずれも「アルティウム」バッテリーシステムを搭載する。

 GMの多彩なEVモデルの航続距離は、フル充電で最大400マイルにおよぶと推定。直流(DC)急速充電に対応しており、10分間の充電で100マイル以上の走行を可能とする。次世代テクノロジーを採用し、従来のレベルをさらに上回る急速充電を実現している。また3月には、ホンダ向けの新型EVモデル2車種を共同開発することで合意を発表。2車種ともGMの新しいグローバルEVプラットフォームと「アルティウム」バッテリーシステムを採用する。ホンダは、このGMのプラットフォームを活用することでさらに生産規模を拡大するという。