ニュース

自動車業界におけるBluetoothの市場動向や今後の活用法についてBluetooth SIGのシニア・ディレクターが解説

現時点で新車の87%がBluetooth搭載。2024年には世界中の自動車の3分の2にBluetoothが搭載される予測

2020年8月25日 開催

Bluetooth SIG, Inc. マーケットデベロップメント シニア・ディレクターのチャック・セイビン氏

 Bluetooth SIG(Bluetooth Special Interest Group)は8月25日、自動車業界におけるBluetoothの市場動向や、キーレスエントリーシステムをはじめとした位置情報システムの活用などについて会見を行なった。

 Bluetooth SIG マーケットデベロップメント シニア・ディレクターのチャック・セイビン氏は、「自動車業界がBluetoothを選択する理由は、消費者からの知名度と信頼性があり、共通技術として利用され、実装しやすく、ローコストだという点にある。また、自動車業界に向けて技術ロードマップを提供している点も、自動車のOEMメーカーからの信頼を得ている理由の1つである」などと述べた。

 Bluetooth SIGは、3万6000社以上の企業が参加するグローバルコミュニティであり、Bluetoothに関する新たな機能の仕様策定、相互運用性のためのツールと認証プロセスの提供、加盟企業と連携したプロモーションといった活動を行なっている。

 Bluetooth SIGが発表したBluetooth市場動向予測では、2020年には46億台のBluetoothデバイスの出荷が見込まれ、今後5年間は年平均成長率8%で市場が拡大。2024年には、年間に62億台のBluetoothデバイスが出荷されると見込まれている。

「オーディオストリーミング、データ転送、位置情報サービス、デバイスネットワークといった領域において、ソリューション指向型で市場を拡大させており、IoTデバイスの活用においても、Bluetoothがもっと普及している技術になっている」とする。

 一方、自動車業界におけるBluetoothの広がりについても、数値の面から示してみせる。

 ABI Researchによると、Bluetooth搭載自動車関連デバイスは、2024年には年間1億900万台が出荷され、世界中のすべての自動車の3分の2にBluetoothが搭載されると予測しているという。

 現時点でも、乗用車、トラック、SUVなどの新車の87%にBluetoothが搭載され、スマートフォンを活用したカーオーディオ接続にとどまらず、キーレスエントリーシステムでの採用や、IoTデバイス接続による運転手の健康状態の確認、タイヤの空気圧のモニタリングなど、活用範囲は多岐に渡っているという。

「2019年には全世界で7500万台の自動車が出荷されたが、Bluetoothは自動車業界向けに8900万台が出荷された。自動車の台数を上まわっている。将来的には新車の100%にBluetoothが標準採用される時がくるだろう」と予測した。

 2024年には、スマホをキーの代わりに利用するケースが増加し、キーフォブやアクセサリーで1300万台のBluetoothが利用されると見込まれており、今後はキーレスエントリーの標準規格になるとの見通しも出ている。

 また、自動車業界が積極的にBluetoothを採用している理由についても自ら分析してみせた。

「Bluetoothは、コンシューマ市場からの高い認知度があり、信頼性があるほか、さまざまなユースケースに対応できること、相互運用性を実現していること、単一ベンダーの技術ではなく、多くの企業がコラボレーションをしながら技術を進化させていること、日本のJASPARや欧州のCE4Aなど、さまざまな関連団体と連携していることなどが、自動車業界から高い評価を得ている理由である」とした。

 ここで挙げた相互運用性では、所有している1つのスマホを利用しながら、クルマを乗り換えても、さまざまなメーカーの自動車にキーレスエントリーができるという点などを指している。

 一方で、自動車業界において、位置情報サービスが注目を集めている点に言及しながら、「位置情報サービスは、Bluetoothのなかで最もスピーディーに成長している領域である。2024年には、5億3800万台の位置情報サービスのデバイスが出荷され、18億台のモバイル端末がBluetoothの位置情報サービスとやりとりしていることになるだろう」と前置き。「こうしたBluetoothが置かれた環境は、キーレスエントリーシステムやデジタルキーが使いやすいという環境が整っていることにつながる」と説明。

 また、「Bluetoothの位置情報サービスは、近接通信ソリューションと測位システムで構成し、探し物探索やPOI(Point Of Interface)、アクセス制御などの安全とセキュリティ、資産追跡、屋内測位などでも利用されている。キーレスエントリーシステムは、位置情報サービスにおける近接通信ソリューションの1つとして提供され、Bluetoothによって2台のデバイスの位置関係を相対的に把握して利用。クルマと人の位置を把握して、開錠するといったことができるようになる」とした。

 キーレスエントリーシステムでは、2017年にRSSI(受信信号強度)をベースとした技術を発表。スマホに自動車メーカーが提供するアプリを入れ、それによって開錠できる仕組みを提供できるようになったのに続き、2019年にはアンテナに搭載されているロケーターを利用した方向検知技術を追加。到達角度と発信角度を検知することでより精度を高め、ユーザービリティの向上にもつなげることができるという。「方向検知のアプローチについては、サプライヤーやOEMが、自動車業界向けに開発を進めているところである。2021年に向けては、安全高精度測長にも取り組んでいく。キーレスエントリーシステムの精度をより高く、よりセキュアな形で提供できる」と述べた。

 ここでは、キーレスエントリーシステムへの取り組みとして、2つの事例について示した。

 Imecでは、バンパーの4か所にセンサーを設置して、ユーザーが自動車に対してどのあたりにいるのかを認知。それによって、自動で自動車に乗ることができる技術を紹介。アルプスアルパインでは、スマホでアクセスして乗車でき、クルマから離れると施錠できるほか、車内と車外でスマホが異なる用途で利用できるようにした技術を紹介。また、自動車に近づいてくる人のスピードを認知して、自動車側が対応を図るといった技術も紹介した。