ニュース

TOYOTA GAZOO Racing TS050 HYBRID 7号車がWECドライバーズチャンピオン獲得 ラストレースは1-2フィニッシュ

豊田章男社長「シャンパンの抜き方を忘れるなんてことのないクルマを用意するつもりです」

2020年11月15日 発表

TS050 HYBRID 7号車がWECの今季最終戦となる第8戦バーレーン8時間レースでポール・トゥ・ウィン。ドライバーズチャンピオンを獲得

 TOYOTA GAZOO Racing(トヨタ自動車)は、11月14日にバーレーン・インターナショナル・サーキットで行なわれたFIA世界耐久選手権(WEC)の今季最終戦となる第8戦バーレーン8時間レースで、TOYOTA GAZOO RacingのTS050 HYBRID 7号車がポール・トゥ・ウィンを遂げたことを発表。これにより、マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組のTS050 HYBRID 7号車が2019-2020年シーズンのWECドライバーズチャンピオンを獲得した。また、8号車は2位に入り、TS050 HYBRIDにとってのラストレースを1-2フィニッシュで締めくくった。

 WEC 第8戦バーレーン8時間レースでTOYOTA GAZOO RacingのTS050 HYBRID 7号車は、マイク・コンウェイ選手のドライブでスタート。首位を守りつつ小林可夢偉選手、ホセ・マリア・ロペス選手へとドライバーを交代しながら着実に後続を引き離していった。

 8号車はセバスチャン・ブエミ選手がスタートを担当し、ブレンドン・ハートレー選手、中嶋一貴選手とともに7号車を追いかけるも、サクセス・ハンディキャップの影響で厳しい戦いとなった。

 2台の差が75秒ほどに開いたレース中盤には、ピットレーン入口の破片除去のためにセーフティカーが導入されて差が一気に縮まり、中嶋選手、ブエミ選手が首位の7号車へプレッシャーをかけるも、7号車はロペス選手からコンウェイ選手へと繋ぎ、再びリードを拡大。レース残り2時間の時点で2台のタイム差は30秒ほどとなったものの、最後の1時間では1分に広がり、最終ドライバーを担当した小林選手が263周を走破してトップでフィニッシュラインを通過。7号車の3人が世界チャンピオンを勝ち取った。8号車は中嶋選手が2位でのチェッカーを受け、5ポイント差でランキング2位を獲得した。

 すでに2021年シーズンへ向けた準備は始まっており、チームは2021年3月19日に開催されるセブリング1000マイルレースでのデビューに向けて、新たなハイパーカー規定に則った車両での耐久テストを今後数か月間にわたって行なう予定となる。

トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 豊田章男氏のコメント

マイク、ホセ、可夢偉、最終戦の優勝そしてチャンピオン獲得おめでとう!
セブ、ブレンドン、一貴も、TS050 HYBRIDのラストレースを
無事に走りきり、ワンツーフィニッシュをしてくれてありがとう!

かつて、世界耐久選手権でのトヨタはシルバーコレクターと言われ続け
本当に悔しさの連続でした。
その悔しさを、なんとしても晴らしたいという想いで
2016年に走り始めたのがTS050 HYBRIDというクルマです。

しかし、その最初の年のル・マン。
優勝目前でこのクルマは止まってしまいました。
本当に悔しい想いをしました。
ドライバー達にもとんでもなく悔しい想いをさせてしまいました。

翌年、2017年。可夢偉がこのクルマの速さを証明してくれました。
今も残るル・マンの3分14秒791というサーキットレコードです。

しかし、決勝で完走できたのは3台中1台だけ……、
このクルマは速くは走れましたが、強くは走れませんでした。

2018年、やっとル・マンの道をトップで走りきることができました。
そして、2019年、2020年とル・マン3連覇を果たすことができました。

5年の月日をかけて、やっと、ドライバーたちに思い切って走ってもらえるようなクルマに
成長させることができました。

ただ、ル・マンを勝ったのは3回とも一貴やセブたちの乗る8号車でした。
ホセ、マイク、可夢偉の乗る7号車には、毎回なにかしらのトラブルを出してしまい
ずっと彼らに悔しい想いをさせてしまっていました。

正直に言って、ずっと、このことは気がかりでした。
今回、このクルマの最後のレースでは7号車が勝利を手にしました。
そして、最後の年のチャンピオンを7号車が獲ってくれました。
3人の笑顔を最後に見れたこと本当によかったです。ホッとしました。

これで安心して、このクルマを引退させることができます。
そして、ラストレースでのワンツーフィニッシュと
チャンピオンを獲ったドライバーたちの笑顔が、
次のクルマへの"良いタスキ"になりました。
気持ちよく次のクルマでの戦いに向かっていけます。

TS050 HYBRIDは34回のレースを戦い、16回のポールポジション、
15回のファステストラップ、そして19回の勝利を飾ることができました。

このクルマを走らせてくれたドライバーたち、エンジニア、メカニックのみんな、
サポートいただいた皆さま、そして、応援いただいたファンの皆さま、
本当にありがとうございました。

来シーズン、新しいクルマに変わります。

しかし、ドライバーたちに、
もっと安全に、もっと安心して、そして、もっと思いっきり走れる……、
そんな“もっといいクルマ”にしていきたいという気持ちは変わることはありません。

皆さま、引き続き、TOYOTA GAZOO Racingにご期待いただければと思います。
よろしくお願いいたします。

追伸

可夢偉へ

表彰台で1人だけシャンパンの栓が抜けず、かけられるだけになってましたね。
シャンパンの栓の抜き方を忘れちゃったのかと心配になりました(笑)。
来シーズンからは新しいクルマで走ってもらいます。
シャンパンの抜き方を忘れるなんてことのないクルマを用意するつもりです。
期待して待っていてください!

TOYOTA GAZOO Racing WECチーム代表 村田久武氏のコメント

 マイク、可夢偉、そしてホセ、世界チャンピオンおめでとう! 耐久レースはチームでの戦いであり、今季の彼らのパフォーマンスはチャンピオンにふさわしいものでしたし、彼らのチームスピリットとここまで戦い抜いた姿勢を誇らしく思います。また、新型コロナウイルス感染症で世界的に自粛制限などがある中、大変な努力でシーズンを全うしてくれたWECの主催者、関係の皆さま、そして応援し続けてくれたファンの皆さまに心より感謝しております。LMP1の時代とTS050 HYBRIDにとって最後のレースは、大変感慨深いものでした。この8シーズンの間、さまざまな想い出があり、興奮冷めやらぬレースや素晴らしいライバル、そして最高のクルマたちを思い出します。この期間、WECの一員として携われたことに改めて感謝するとともに、新たなハイパーカーの時代もファンの皆さまに素晴らしいレースを見せられるよう尽力いたしますので、引き続きご期待ください。

小林可夢偉選手(7号車)のコメント

 日本、そしてドイツのケルン(TGR-Europe拠点)からサポートしてくれた全ての人々に感謝します。振り返れば、2016年からTS050 HYBRIDの開発のために本当にハードワークを続けてくれました。簡単ではありませんでしたが、今となってはこの最高のクルマとともに素晴らしい想い出です。チームはル・マン3連覇し、われわれは7号車とともに世界チャンピオンを獲得しました。これ以上の結果は望めないでしょう。しかし、これはドライバーだけで成し遂げられた記録ではありません。メカニック、エンジニアやこのプロジェクトに携わった全ての皆さまのおかげです。本当にありがとうございました。

マイク・コンウェイ選手(7号車)のコメント

 タフでしたが素晴らしいシーズンを終え、今日、世界チャンピオンとして立つことができ、最高の気分です。ホセ、可夢偉と私にこのチャンピオン獲得のチャンスを与えてくれたチームに本当に感謝しています。7号車のドライバーおよび8号車のチームメイトはシーズンを通して素晴らしい戦いをし、本当に最高です。これがTS050 HYBRIDの最後のレースになるのは少し悲しいですが、われわれにとって有終の美を飾れたと思います。

ホセ・マリア・ロペス選手(7号車)のコメント

 レースで勝って世界チャンピオンになるというのは本当に格別な気分です。ドイツのケルン(TGR-Europe拠点)や東富士研究所で何年にもわたって最高のクルマを作り上げ、われわれを支えてくれた全てのスタッフに感謝します。信じられないようなシーズンでした。われわれは目標を達成するために懸命に努力を続け、可夢偉、マイクとともについに世界チャンピオンを獲得しました。私にとって2人は兄弟のような存在になりました。本当に最高の気分です。

中嶋一貴選手(8号車)のコメント

 7号車のみんな、チャンピオン獲得おめでとう。彼らはシーズンを通して素晴らしい走りを見せ、タイトルにふさわしい戦いぶりでした。われわれもル・マンで勝ちましたし、良いシーズンでしたが、この最終戦バーレーンではサクセス・ハンディキャップに苦戦しました。一時は接近して面白いレースにもなりましたし、いい戦いでした。また、シーズンを通して素晴らしい仕事をしてくれたメカニックやエンジニアにも感謝します。今はハイパーカーを初ドライブするのが楽しみです。

セバスチャン・ブエミ選手(8号車)のコメント

 7号車とミス無くレースを戦いきったチームに祝福を送ります。われわれ8号車は全力を尽くして戦いました。サクセス・ハンディキャップは思いのほか厳しかったですが、レースの結果には満足しています。われわれも完璧なレースを戦いましたが、勝つチャンスはありませんでした。これも人生です。勝つこともあれば、負けることもあります。TS050 HYBRIDとは、これで最後だと感慨深く、自分の最終ラップまで楽しんで走りました。

ブレンドン・ハートレー選手(8号車)のコメント

 われわれは8号車でいいレースを戦えたと思います。サクセス・ハンディキャップにより、1周あたりコンマ5秒以上の差があることは分かっており、それでも全てを出し切りました。周回ペースはわるくなかったのですが、サクセス・ハンディキャップを跳ね返すまでには至りませんでした。ミス無くレースを戦い抜いた7号車を祝福します。彼らは世界チャンピオンに値する仕事を成し遂げました。