ニュース
アルピーヌ、トヨタとル・マンで戦う「Alpine A480」正式発表 1978年以来のル・マン24時間制覇を目指す
2021年3月17日 07:09
- 2021年3月16日(現地時間) 発表
Alpine A480
グループ・ルノーの傘下のスポーツカー/レーシングブランドと位置づけられているアルピーヌ(Alpine)は、3月16日15時(欧州中央時間、日本時間3月16日23時)からオンライン記者会見を開催し、同社が今シーズンのWEC(世界耐久選手権)/ル・マン24時間レースのトップカテゴリーとなるハイパーカー(従来のLMP1)カテゴリーに参戦する「Alpine A480(アルピーヌ エーフォーエイティ)」を発表した。
Alpine A480は2020年までフランスのコンストラクター「オレカ」がデザインし、Rebellion R13としてレベリオンから参戦していたLMP1車両がベースになっており、Gibson TechnologiesのV型8気筒 4.5リッター エンジンを搭載した車両になる。
WEC/ル・マン24時間のハイパーカーカテゴリーにはすでに発表されているToyota Gazoo Racingの「Toyota GR010-Hybrid」、そしてイギリスのグリッケンハウス・レーシングの「Glickenhaus 007 LMH」の2台がエントリーしており、ル・マン24時間レースの総合優勝を争うことになる。
Signatech Alpineチームがアルピーヌのワークスチームに
グループ・ルノーは2021年よりモータースポーツ活動のブランドをアルピーヌに集約することを明らかにしており、ルノーF1チームとして活動してきたF1チームも、今シーズンよりアルピーヌF1チームとしてリブランドして活動開始している。
そうしたアルピーヌのモータースポーツ活動のもう1つの柱が、FIA WECおよびそのシリーズ戦で最も重要な伝統のル・マン24時間レースへの参戦だ。しかも、2020年までアルピーヌが参戦してきたLMP2クラスではなく、トップカテゴリーとなるハイパーカーカテゴリーへの参戦となる。
アルピーヌは、近年ル・マン24時間レース、そしてWECに参戦してきた。といっても、トップカテゴリーであるLMP1(2021年からハイパーカーに改変)に参戦するのではなく、プロトタイプのセカンドクラスとなるLMP2への参戦だった。
ル・マン24時間レースでは2016年、2018年、そして2019年と3度のLMP2クラス優勝を果たしており、WECのシリーズでは2016年シーズン、2018年~2019年シーズンでLMP2クラスのタイトルを獲得するなど、LMP2ではトップチームの1つとして活動を行なってきた。
2020年まではフランスのレーシングチームであるシグナテック(Signatech)にアルピーヌがスポンサーとして参画するという形になっており、チーム名も「Signatech Alpine」として参戦していた。2021年シーズンからアルピーヌのファクトリーチームに格上げされ、ワークスチームとして参戦することになった。そのためチーム名も「Alpine Elf Matmut Endurance Team」という名称に変更された。しかし、チームの運営は引き続きシグナテックが担うことになっており、チーム代表もシグナテックの創始者であるフィリップ・シノー氏が務めることになる。
ドライバーはSignatech Alpine時代にドライバーだったニコラス・ラピエール選手、2020年もチームに所属していたアンドレ・ネグラオ選手に加えて、新しくマシュー・バクシヴィエール選手が加わることになる。
ラピエール選手は、2012年~2014年にWECでトヨタのワークスドライバーを務めており、2017年にもトヨタ TS050-HYBRIDをル・マン24時間レースでドライブしているベテランドライバー。2018年~2019年のスーパーシーズンでSignatech AlpineがWECのタイトルを、そして2018年と2019年のル・マン24時間のLMP2クラスで優勝した時のドライバーでもある。
アンドレ・ネグラオ選手は2020年のSignatech Alpine時代にもチームに所属していたブラジル出身のドライバー。チームにとってはなじみ深い選手である。意外なことにこれまでブラジル人がル・マン24時間レースで総合優勝したことはなく、トップカテゴリーのハイパーカーへの参戦でブラジル人初の優勝を目指す。
マシュー・バクシヴィエール選手は2011年のフランスF4王者で、近年はスポーツカーレースへの参戦が多くなっていたが、WEC/ル・マン24時間レースのトップカテゴリーへの参戦は今回が初めてとなる。
ハイパーカーのノンハイブリッドクラスに参戦するAlpine A480
アルピーヌが今回WEC/ル・マン24時間レースのトップカテゴリーへ参戦する車両はAlpine A480。ベースとなっているのは、2020年までレベリオン・レーシングがWEC/ル・マン24時間レースへの参戦に利用していたRebellion R13で、フランスのコンストラクターであるオレカが設計、製造したシャシーとなる。全長4645mm、全幅1995mm、全高1045mmで、約900gの重量となっている。完全に新設計のシャシーではないが、その分実績もあり耐久レースで最も重要な信頼性などが強みとなる。
エンジンはGibson TechnologiesのV型8気筒の4.5リッター自然吸気エンジン(Gibson GL-458)で、8400rpmで最大出力625馬力をたたき出す。ギヤボックスはXtracの6速トランスミッションが採用されている。
2021年のハイパーカー規定では、ハイブリッドとノンハイブリッドの2つのクラスが用意されており、ハイブリッドクラスにはToyota Gazoo Racing「Toyota GR010-Hybrid」の2台が参戦し、ノンハイブリッドクラスはイギリスのグリッケンハウス・レーシングの「Glickenhaus 007 LMH」とAlpine A480が参戦する。もちろん性能には差があるので、BOP(Blance of Performance、性能調整)が行なわれる見通しで、BOPによっては十分ノンハブリッド勢にも勝機があると考えられている。
記者会見にビデオ参加した、グループ・ルノー CEO ルカ・デ・メオ氏は「我々の新しいレーシングカーであるAlpine A480が新しいハイパーカーカテゴリーに参戦することを誇らしく思っている。この新しい挑戦は、我々の新しい野望を示すものだ。近年では2013年にこのシリーズに戻ってきたが、シーズンを重ねるごとに成績は向上していった。かつてこのカテゴリーで我々が輝いたのは1978年(筆者注:ルノーは1978年のル・マン24時間レースで優勝しており、アルピーヌA442Bで戦った)だが、A480がその成功を繰り返すことができると確信している」と述べ、グループ・ルノーとしても力を入れてWEC/ル・マン24時間レースに取り組むとした。