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ルノーF1からアルピーヌF1へ、新型F1マシン「アルピーヌ A521」正式発表 フランス国旗「トリコロール」をベースとしたカラーリング

2021年3月2日(現地時間) 発表

アルピーヌF1の2021年型F1マシン「アルピーヌ A521」

「アルピーヌ A521」

 2020年までルノーF1として参加していたチームは、2021年から「アルピーヌF1チーム」に名称変更して臨むことをすでに発表している。アルピーヌ(Alpine)はグループ・ルノー傘下のスポーツカーブランドで、今後ルノーのモータースポーツ活動はアルピーヌとして行なわれる計画になっており、F1もシャシーの名称をアルピーヌに、パワーユニットの名称はルノーとして参戦することになる。

 3月2日15時(中央欧州時間、日本時間3月3日0時)に行なわれた新型車発表会では、そのアルピーヌF1チームの2021年型F1マシン「Alpine A521(アルピーヌ A521)」が発表され、フランス国旗「トリコロール」(三色旗)をベースにした新しいカラーリングが発表された。ハイブリッドパワーユニットはルノーの「Renault E-Tech 20B」が搭載されている。

 記者会見にはグループ・ルノーのCEO ルカ・デ・メオ氏、アルピーヌ CEO ローレント・ロッシ氏、2020年シーズンまではスズキのMoto GPチームのチームマネージャを務めていてスズキのタイトル獲得に貢献し、今シーズンからチームに加わったダビデ・ブリビオ氏、さらには今シーズンの正ドライバーのうちエステバン・オコン選手などが参加して行なわれた。

 なお、もう一人の正ドライバーで、今シーズンからF1に復帰するフェルナンド・アロンソ選手は2月の自転車事故による療養中につき欠席となった。しかしアルピーヌ CEOのロッシ氏によればアロンソ選手は3月12日~14日にバーレーンで行なわれる予定のプレシーズンテストには参加すると明らかにされた。

1977年の初参戦以来、休止を挟んで45年近くF1に参戦し続けているルノー、2021年シーズンからアルピーヌF1に

アルピーヌの創業者 ジャン・レデレ氏が1956年に設立

 ルノーF1の歴史は、ターボエンジンを初めて開発して参戦した1977年に始まった。その当時はフォードが出資してコスワースが設計、製造していたDFV(自然吸気の3リッター、V型8気筒)の全盛期で、ターボなどはモノにならないと思われていた。そうした中でも徐々に技術を熟成していき、1979年のフランスGPで初優勝、その後1983年にアラン・プロスト氏がシリーズ・ランキング2位になったのを最高成績としたが、遂に王座には手が届かず1986年に一時撤退をした。

 ターボが禁止された1989年にウイリアムズと組んでエンジンサプライヤーとしてF1に復帰すると、1992年にナイジェル・マンセル氏がドライバー、ウイリアムズがコンストラクターズで王者となる成績を収めた。その後も1994年にドライバー選手権を落としたのを除き、1997年まで両タイトルを独占して1997年末を持って一時F1から撤退した。

 その後2001年にベネトンF1チームを買収してフルコンストラクターとしてF1に復帰し、2005年と2006年にフェルナンド・アロンソ選手が2年連続王者となり、コンストラクターズ選手権でも2年連続で王者に輝いた。その後、2009年末にチームは投資会社に売却され、2010年こそルノーF1として参戦を続けたものの、再びF1から撤退した。その後はレッドブル・レーシングにエンジンを供給して、2010年~2013年には4年連続で両タイトルを獲得した。

 紆余曲折を経てロータスF1となっていたチームを再び買い戻してルノーF1として再度参戦を開始したのは2016年。そこから4年を経て、2020年はコンストラクターズ選手権こそ前年同様の5位だったが、特に後半戦では3度の表彰台を獲得するなど躍進しており、上り調子の中で2021年シーズンを迎えることになる。

発表会で紹介されたアルピーヌの歴史
A106
A110
ラリーでの活躍
A442B、ル・マン24時間レースなどで活躍

 そして、2021年はチームのブランド名を、ルノーF1からアルピーヌF1へと変更し、新生アルピーヌF1として参戦することになる。アルピーヌは、元々フランスベースの独立メーカーとして活動していたが、1973年にルノーに売却され、その後はルノー傘下で活動してきた。近年ではルノーのスポーツカーブランドという位置づけが強くなっており、A110シリーズ(A110、A110Sなど)などスポーツカーを販売している。

 2020年にグループ・ルノーのCEOに就任したルカ・デ・メオ氏は、このアルピーヌをグループ・ルノーのモータースポーツブランドとすることを決め、ルノーF1チームも今回アルピーヌF1チームとして生まれ変わることになった、それが昨年までの経緯だ。

アルピーヌF1初のシャシーは「アルピーヌ A521」

アルピーヌ A521、フランス国旗をイメージしたカラーになっている

 そのアルピーヌF1チームは、3月2日に新型車発表会をオンラインで行ない新型車両「アルピーヌ A521」を発表した。このアルピーヌ A521は、昨年のルノーF1の「R.S.20」を発展させたシャシーで、その意匠をかなり受け継いだもの。設計、製造はルノーF1チームのシャシー開発部門が置かれていたエンストンのファクトリーで行なわれている。

 2021年のF1は多くの部分で開発が凍結されており、マシンの骨格にあたる部分はそのまま使う必要がある。変更できるのは2021年シーズンの規定(例えばフロアの空力規定などが変わっている)に合わせる部分と、チームがF1に申請して使える改良権(トークンと呼ばれる)を駆使する部分になっている。このため、どこのチームでも昨年型に近いものとなっている。

アルピーヌ A521

 そのカラーリングはフランスの国旗であるトリコロールをイメージした白、青、赤の3色を大胆に配置しており、アルピーヌのコーポレートカラーであるブルーが主要な色となっている。

 ハイブリッドパワーユニットはルノーがエンジン部門を置いてきたベリ・シャテオンで開発されたもので、Renault E-Tech 20Bという名称が付けられている。1.6リッターのV型6気筒ターボエンジンにMGU-K/Hなどのハイブリッドユニットを組み合わせてものになっている。

 2021年シーズンの正ドライバーは、2020年シーズンからチームに加入してサヒールGPで2位表彰台を獲得したセバスチャン・オコン選手に加えて、2005年と2006年にF1世界チャンピオンを獲得したフェルナンド・アロンソ選手。ベテランと若手の組み合わせになっている。

エステバン・オコン選手
フェルナンド・アロンソ選手

 なお、チームのリザーブドライバーは、昨年までアルファタウリ・ホンダの正ドライバーだったダニール・クビアト選手が就任することが明らかにされた。昨年は3度ほど正ドライバーがCOVID-19に感染して走れなかったことを考えると、リザーブドライバーにもチャンスが回ってくる可能性は高く、その意味でもアルファタウリのシートを失ったクビアト選手にとって次善の選択といえるだろう。

ダニール・クビアト選手

グループ・ルノーのデ・メオCEOは毎レースで表彰台を争うのが目標と語る

アルピーヌ A521を前にして語る グループ・ルノー CEO ルカ・デ・メオ氏

 会見に参加したグループ・ルノー CEOのルカ・デ・メオ氏は「我々は強力なドライバーラインアップを持っており、そしてエンストンとベリ・シャテオンには素晴らしいエンジニアがそろっており将来的に成功するのは間違いないと思っている。しかし、現実的に考えれば2021年シーズンに優勝するというのは難しいだろう。だから現実的な目標としては全てのレースで表彰台を目標としていくことだ」と述べ、昨シーズンよりも多くのレースで表彰台を獲得するのが目的だとした。

 また、今シーズンからレーシング・ダイレクターに就任したのが昨シーズンまではスズキのMoto GPチームのチームマネージャを務め、スズキのタイトル獲得に貢献したダビデ・ブリビオ氏。ブリビオ氏は、スズキのMoto GPチームを世界チャンピオンにした手腕を買われてアルピーヌF1に招かれた。

アルピーヌF1 レーシング・ダイレクター ダビデ・ブリビオ氏。
アルピーヌ CEOのローレント・ロッシ氏

 そのブリビオ氏は「フェルナンドは2度の世界王者という経験がありエステバンの若さやハングリーさからいい影響を受けるだろう。そしてエステバンには若くハングリーでありフェルナンドの経験から学ぶことが多いだろう。F1もMoto GPも同じくチームスポーツである。Moto GPではそれを現実にすることができたので王座を獲得することができた。F1でもやることは同じだ」と述べ、Moto GPでの成功をF1でも再現できると説明した。

アロンソ選手はこのサムアップ動画でだけ出演

 なお、今回の会見には、2月に自転車で事故を起こして手術をしたことにより療養中のフェルナンド・アロンソ選手は欠席したが、アルピーヌ CEOのローレント・ロッシ氏は「フェルナンドはバーレーンのテストには必ず参加する」と述べた。今回の会見にはビデオでちょっと出ただけのアロンソ選手は、3月12日~14日にバーレーンで行なわれる予定のプレシーズンテストには参加すると強調して、アロンソ選手の怪我からの復帰には何も問題がないと強調した。