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富士通、車載器などで取得したビッグデータをクラウドで仮想的に統合管理・活用する新サービス「Digital Twin Collector」
2021年4月15日 15:21
- 2021年4月15日 発表
車両センサーの大量データをクラウドで管理・活用できる「Digital Twin Collector」
富士通は4月15日、車載器などのモビリティデバイスにある情報を、クラウドで仮想的に統合管理する新サービス「FUJITSU Future Mobility Accelerator Digital Twin Collector(以下、Digital Twin Collector)」を発表した。4月22日から損害保険会社や自動車メーカー、道路管理事業者、大手物流会社などを対象に販売を開始する。
価格は、Digital Twin Collector基本サービスは10万台からの契約が可能で、1台あたり月額2円~、従量費用が1データアクセスあたり0.2円となる。セットアップサービスは150万円~。また、要件定義支援サービス、サポートサービス、カスタマイズサービスは個別見積もりとなっている。
2021年6月には北米や欧州地域での提供も開始され、今後5年間で約20億円の売上げを目指す。
Digital Twin Collectorは、車両が持つ多種多様なセンサーの大量データを、必要な時に、必要な分だけ、センターサイドに複製および移動し、データ流通コストや蓄積コストを最適化することができるのが特徴だ。
車載カメラで撮影した映像データを、条件指定で自動的に取得。自動車メーカーや損保会社が、事故や障害発生時に多角的な視点から対応できたり、一般車両の映像データを活用しながら道路環境の変化を捉え、道路事業者が管理に活用したり、自動運転システム向けの高精度地図の作成にも活用できるという。
富士通 Mobility事業本部 FMアクセラレータ事業部 マネージャーの雨宮宏一郎氏は、「コネクテッドカーの増加や、ドライブレコーダーの普及によって、日本全国に留まらず、世界全体から車載カメラ映像の収集が可能になっている。これらの情報は、メンテナンスや事故解析、交通管制など、さまざまなモビリティサービスに活用することができる。だが、その一方で、映像データが増えるとともに、ビッグデータをクラウドに収集、蓄積するコストが増大するという課題が生まれている。データ収集や蓄積コストを抑えつつ、タイムリーにモビリティサービスへ映像データを提供することが求められており、それを解決するのがDigital Twin Collectorとなる。モビリティビッグデータの活用を促進し、新たなモビリティサービスの実現に貢献したい」と述べた。
Digital Twin Collectorでは、モビリティデバイスで記録した映像などの大量のデータをクラウドで保持せず、データIDや車両ID、場所、時刻、車速などの軽量なメタデータのみを管理することで、分散するデータを仮想的に統合。これにより、自動車メーカーや損害保険会社などのユーザーは、必要なデータのみにアクセスすることが可能となり、クラウドのデータ容量や通信量を大幅に低減。従来に比べて、50%のコスト削減を可能にするという。
また、事故発生などにより、自車や周辺の自動車から一斉に映像データを収集する必要がある場合には、一時的にクラウド側の負荷が急増し、輻輳が発生する可能性が高まるが、同社独自のトラフィックスケジューラ機能により、モビリティデバイスからのデータ複製要求をコントロール。大量通信を抑制し、安定的なデータアクセスを実現することで、結果としてデータの供給遅延などの課題を解消できる。
これにより、「データ複製タイミングの制御によって、過剰な負荷を抑止し、計算資源の無駄な消費を削減できる。また、データ供給遅延を確認しながら、負荷抑制レベルを段階的に緩和し、データの取りこぼしや異常なデータ遅延といったことがないようにできる」という。
また、データカバレッジ制御機能により、類似データの複製抑止と網羅的複製を両立。サービス品質を均質化できる点も特徴だ。
「たとえば、自動運転用学習データは、取得時のデータに偏りがあるとサービス品質に影響が生じる可能性がある。データカバレッジ制御機能は、大量のモビリティデバイスに対するデータアクセスの実現と、取得状況を横断的に分析することで、時刻や場所などが同一といった類似の映像データを対象に複製抑止を行なうとともに、取得データの網羅性を維持。これによって、データを使った分析や実現するサービスの品質の安定化や効率的なデータ収集に貢献できる」としている。
Digital Twin Collectorは、AWSのクラウド上で稼働。Digital Twin Collectorにデータをアップロードする車両向けシステム、Digital Twin Collectorに要求を出す各種サービスのシステムで構成する。富士通はセットアップサービスを提供するほか、認証機能や各種セキュリティなどの要件にもカスタマイズで対応する。
想定される事例の1つが、「損害保険業務の効率化、高度化」である。事故発生を検出した際に発生場所や時刻を指定するだけで、当該車輌に加えて周辺車両の事故発生前後にわたる映像を自動的に取得することができ、損害保険会社は多角的な視点から事故対応が可能な自動車保険サービスを提供できるという。
2つ目は「道路管理業務の高度化」。車両の挙動をもとに、渋滞や事故、障害物の落下、悪天候など、道路上で発生している事象に関連する映像をリアルタイムに取得。道路管理運営会社に対して詳細な状況を提供できるため、これをタイムリーに確認し、きめ細かな交通管制サービスを提供できるという。
さらに「車両故障分析」では、車両センサーで異常値を検出した際の周辺映像を収集することで、自動車メーカーは故障発生の原因推定および車両開発へのフィードバックに活用できるとした。
また、「地図作成用データ取得」では、一般車両の映像データを活用して、自動運転システム向けの高精度3D地図を作成。自動車メーカーと連携して、自動運転システムへの活用を行なう。幅広く走行する一般車両からデータを収集するため、定期的に、網羅的な映像データを取得することが可能になる。
富士通では、デジタルモビリティ領域において、ストリームデータ処理基盤の「Digital Twin Utilizer」、車載カメラ映像解析プラットフォーム「Digital Twin Analyzer」を製品化しており、今回の「Digital Twin Collector」が第3弾となる。
富士通 Mobility事業本部 FMアクセラレータ事業部 シニアディレクターの井上大悟氏は、「富士通は、モビリティの世界において、コネクテッドカーから集めたビッグデータと、それを活用したDXを行なう企業や業種サービスをつなぐ『モビリティサービスアクセラレーター』のポジションにある。モビリティデジタルツインの仕組みを提供し、モビリティ社会のデジタル化の実現に貢献したい」と述べた。
富士通では、モビリティデジタルツインを「実世界で発生するデータを収集し、データセンターの中にあるサイバー空間の中で、コネクテッドカーなどの状態を再現。写像化されたものを、常にアップロードされるデータを分析、加工することで、写像テータを拡張し、活用範囲を広げること」と定義している。