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富士通、自動車ビッグデータの活用を加速する車載カメラ映像解析プラットフォーム「Digital Twin Analyzer」を販売開始

2020年9月10日 発表

自車両と相手車両の位置を映像から測定することができる富士通のDigital Twin Analyzer

 富士通は9月10日に記者説明会をデジタルで開催し、同社と同社の関連会社である富士通研究所が開発した「Digital Twin Analyzer(デジタルツインアナライザー)」の販売を開始したことを明らかにした。サービスの提供開始時期は9月25日から。

 富士通によればDigital Twin Analyzerは、車載カメラやドライブレコーダーなどにより録画された動画データなどの映像解析を行なうことで、車両とその周辺にあるオブジェクトの3次元位置・軌跡などを推定することを可能にする。それにより、例えば保険会社が契約者のドライブレコーダーに残された映像から、事故の状況を把握するためのデータなどを作成することが可能になる。

Digital Twin UtilizerとDigital Twin Analyzerという2つのサービスをモビリティ向けに提供

富士通株式会社 Mobilityソリューション事業本部 プラットフォーム事業部 シニアディレクター 井上大悟氏

 富士通 Mobilityソリューション事業本部 プラットフォーム事業部 シニアディレクター 井上大悟氏は、富士通のモビリティ向けクラウドサービスのツールに関して説明した。井上氏によれば「富士通はモビリティサービスアクセラレータとしての事業を検討している」と述べ、顧客がモビリティサービスを提供する上でより容易に導入できるシステムの提供を計画していると説明した。なお、記事中の資料画像は富士通提供によるものとなる。

モビリティの進化
富士通が目指すモビリティ世界

 井上氏によれば「すでにStream Data Utilizerという車両や道路の状況をバーチャル世界にリタルタイムに再現して分析、予測するサービスを提供してきた。今回そのサービス名を新しいサービスにあわせてDigital Twin Utilizerという名称に変更することを発表した。そして今回発表する新しいサービスがDigital Twin Analyzerとなる」と述べ、今回の新サービス開始にあわせて従来のサービスを改名することを明らかにした。

Digital Twin UtilizerとDigital Twin Analyzer
Digital Twin Analyzer

 井上氏によればDigital Twin Analyzerはドライブレコーダーなどの映像から、オブジェクト(他の車両や人など)を検出し、画像認識技術などを利用して物体認識を行ない、周囲の情報を解析する仕組みになっているという。そしてそのデータを活用して、例えば事故が起きた時の映像を解析して事故時の状況を推定する、そうした用途に利用すると説明した。

ドラレコが撮影した映像からAIで位置情報や速度などを高精度で解析

コネクテッドカーの増加とドライブレコーダーの普及

 富士通 Mobilityソリューション事業本部 プラットフォーム事業部 マネージャ 大下朋也氏はDigital Twin Analyzerの詳細を説明した。大下氏によれば「コネクテッドカーとドライブレコーダーの普及で、車載映像を収集するのが容易になってきて、それをデータとして活用しようという取り組みが始まっている。例えば事故が起きたときの解析や交通管制などに利用する動きが出てきている」と述べ、セルラー(携帯電話)回線などを利用して自動車が常時インターネットにつながるようになり、ドライブレコーダーなどのカメラも標準装備になったりオプションとして売れ筋になったりという状況の中で、撮影された映像を単に後で見るだけでなく、マシンラーニングを利用した画像認識の機能などを活用して高精度な位置情報を画像から推定するなどの取り組みが始まっていると説明した。

Digital Twin Analyzerの仕組み
Digital Twin Analyzerの特徴

 大下氏によれば富士通が提供するDigital Twin Analyzerのサービスでは、車両が走行している位置や速度、信号の色などを映像から3次元データと一緒に測定することでデータ化する。そのデータ化には富士通と富士通研究所が開発したAI画像認識技術と高精度三次元位置測定技術が活用されているという。

映像の解析にはAI画像認識を活用
高精度三次元位置測定技術

 具体的には車両の種別、白線の種別(横断歩道か、センターラインかなど)、信号色を映像からAIの画像認識技術を利用して推定する。そして、カメラも特別な測定用のカメラだけでなく、一般的なドライブレコーダーで撮影した映像も利用できるように、カメラの位置や向き、高さなどを自動的に推定し、AI画像認識技術と組み合わせて周囲の位置との比較で三角測量の原理で三次元に位置を測定することが可能になる。

ユースケース

 大下氏によれば「あいおいニッセイ同和損保が今月から実際のサービスとしてDigital Twin Analyzerを利用している。契約者のドライブレコーダーの映像から事故が発生した時の自車両、事故相手車両の運転挙動、走行位置や速度などを推定できるようになっている」と述べ、保険会社などが事故の状況を客観的に把握する材料としてDigital Twin Analyzerの解析データを利用している事例を紹介した。

Digital Twin Analyzerの仕組み

 大下氏によれば「Digital Twin Analyzerはサービスとして提供し、必要に応じてオプションも提供していく。顧客企業は何らかの形でドライブレコーダーのデータをメッセージキューと呼ばれる口になる部分に入力する環境をオンプレミスないしはクラウドで整えていただく」と述べ、顧客が導入しやすいように、トライアルサービスからセットアップまでさまざまなパッケージの形で提供していくと説明した。

提供形態

 富士通によればDigital Twin Analyzerの基本サービスは月額費用500万円~で従量費用は別途見積もりという形になり、カスタマイズする場合なども別料金(個別見積もり)になるという。