ニュース

小泉環境大臣、自工会豊田会長の発信も受け「再エネと電動車がセットになった補助金」導入と紹介

2021年4月21日 発表

再生エネルギー電力導入を目指す環境省

「ゼロカーボン・ドライブ」キャンペーンのロゴを紹介する小泉進次郎環境大臣(中央左)と、笹川博義環境副大臣(中央右)

 4月21日、環境省は同省の駐車場において「ゼロカーボン・ドライブ」キャンペーンを多くの国民に知ってもらうためのミニイベントを開催した。このイベントに、環境対応車を発売する自動車メーカー13社が集まった。

 ゼロカーボン・ドライブ、略称ゼロドラは、自宅や工場の電力を再生可能エネルギー由来ものにすることとセットで電動化車両を購入した場合、EV(電気自動車)であれば従来の補助金最大40万円が、最大80万円に引き上がるというもの。例えば、BMWのEVである「i3」であれば、従来40万円だったものが80万円の補助となっている。EVやPHV、FCVなど電動化車両の種類ごとに最大額が異なり、さらにその車両についても細かく分かれている。

 詳細は、一般社団法人次世代自動車振興センターのWebサイトに掲載されているが、環境省としては「再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボンライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業」、経産省としては「災害時にも活用可能なクリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」という事業として行なわれる。

R2第3次補正_CEV補助金の申請(次世代自動車振興センター)

http://www.cev-pc.or.jp/hojo/r02hosei-cev.html

(令和2年度補正)銘柄ごとの車両分の補助金交付額(PDF、次世代自動車振興センター)

http://www.cev-pc.or.jp/hojo/pdf/r02ho/r02ho_meigaragotojougen.pdf

 再生エネルギー導入を目指す環境省の施策、災害時活用電力普及を目指す経産省の施策で最大補助金額が異なっている車両もあり、どちらかの補助金しか利用できないため、補助金を利用する場合は注意が必要だろう。また、電動化車両の種類によっては、国の補助金以外に地方自治体からの補助金もあるため、詳細はディーラーなど最寄りの販売店に確認するのがお勧めだ。

 この環境省のミニイベントに参加した自動車メーカーは、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、マツダ、三菱自動車工業、FOMM、アウディジャパン、ジャガー・ランドローバー・ジャパン、テスラモーターズジャパン、ビー・エム・ダブリュー、Groupe PSA Japan、メルセデス・ベンツ日本、ボルボ・カー・ジャパンの13社。各社はEVやPHV、FCVといった電動化車両を持ち寄り展示を行なった。

 イベントの冒頭、小泉進次郎環境大臣は「ゼロカーボン・ドライブ」に対する思いを語った。

小泉進次郎環境大臣

 今、環境省としては「2035年以降のクルマの販売はすべて100%電動車にする」という総理からの方針発表があったことを受けて、社会を変えていくためには起爆剤となるようなものが必要だと。その起爆剤となる環境省の政策が、再生可能エネルギーと電動車を購入することをセットにして補助金を最大で80万円、今までの40万円から倍増させるという取り組みです。

 電動車の課題というのは「なかなかバラエティーがない」、そういったことも言われます。しかし、今日見ていただいたとおり、13社のみなさんがこれだけ多種多様な電動車をラインアップとして揃え始めました。これから毎年、間違いなく増えていきます。

 今、日本の中で電動車の普及率は世界の先進国から見ても大変遅れていて1%もありません。しかし、長い目で見ればこの1%が将来はマジョリティ、多数派になります。

 この脱ガソリン車の流れ、いくら日本が今までそこに強みがあったとはいえ、世界でガソリン車のマーケットが縮んでいくことは間違いありません。だとしたら、縮んでいくマーケットにしがみつくことばかり考えるのではなく、広がっていくマーケットを見る、そういった方向を我々としても後押しをして、新たな雇用、新たな産業を産まなければいけないということを考えています。

 自工会(日本自動車工業会)の豊田会長からは、もしも再生可能エネルギー導入が進まなければ、日本の100万人の雇用が失われかねないというような発信もあります。こういった発信を受けて、我々として単純に自動車の販売を後押しするのではなくて、それとセットになる再生可能エネルギーの普及をしていかなければいけないというのが、今回の環境省の再エネと電動車がセットになった補助金の最大のポイントです。

 今日、集まりいただいた13社のみなさんとともに、この補助金を徹底的に世の中に活用いただいて、目指せプラス1万台。今までだいたい4万台ぐらい毎年(電動車が)売れているのですが、今年はこの補助金の活用を通じて5万台販売されることを我々の目標にしてがんばっていきたいと思います。

 ちなみに環境省としても自ら変わらなければいけないいうことで、この4月から、今まで私も菅内閣の閣僚で唯一EVを持っていますが、環境省としてもEVを2台追加しました。

 この補助金については「ゼロカーボン・ドライブ」という名前をつけて、新たなロゴマークを作ってキャンペーンをやっていきます。自動車という身近なところから脱炭素って参加できるんだということを多くの方に知っていただきたいということで、「あなたのドライブから脱炭素の未来へ」という標語も作りました。

 実はこれを考えてくれたのは、我々私と笹川副大臣でもなく、環境省の職員が自らロゴも作成をしてくれました。今日はせっかくの機会ですので、どんな思いでこのロゴとか作ったとか、鎌倉さんから、ぜひお話いただければと思います。

ロゴは環境省職員がデザイン

 ロゴについては、小泉大臣から紹介のあった水・大気環境局の鎌倉氏から説明が行なわれた。「僭越ながらご紹介させていただきます。私たちの日々の暮らしは本当にクルマに支えられています。だからこそ、私が、あなたが、みなさんが『再エネを活用した移動に取り組んでいけたら日本の未来は明るくなる』、そんな思いを込めてこのロゴを作成しました」とデザイン意図を説明。小泉環境大臣、笹川博義環境副大臣からそのロゴが披露された。

 その後、小泉環境大臣は13社の環境対応車について、それぞれの社の担当者から1台ずつ説明を受けた。このような場合、各社からの説明を聞くのみということが多いのだが、小泉環境大臣は積極的に各社担当者に質問。例えば日産では次世代車である「アリア」について確認したり、アウディでは説明を受ける前に「e-tronですよね」と自ら語りかけたり、マツダではボディカラーの「ソウルレッドクリスタルメタリック」について深く語り合ったりと、自身がEVに乗っているだけあり、豊富な知識を持っていることが印象的だった。

記念写真撮影後、各社担当者と電動化車両について会話する小泉大臣
三菱自動車は「エクリプス クロスPHEV」を展示し、ラゲッジルームにV2Hの模型を作り込んでいた

 日本の場合、家庭から出るCO2排出量は年間で約5000万tとなり、これは日本の総排出量の4.5%になる。実は最大は「電気」で、2位が「自動車」。単に電動化車両を購入するだけでは、充電などの際の電気のCO2排出量が増えるということになりかねない。そのため、環境省では「再生エネルギー由来の電気」の導入とセットでという条件を付帯して後押ししている。

 EV車両である「MAZDA MX-30 EV」を展示していたマツダ 執行役員 広報・渉外・首都圏事業担当 滝村典之氏に聞いたところ、電動化車両の普及につながるこのような施策を歓迎したいとした上で、「すべてがいきなりEVになるのではなく、幅広い選択肢を用意するのが大切」と言う。実際マツダではガソリン車、クリーンディーゼル車、EVなどを取りそろえているほか、ガソリン車については燃費のよい超希薄燃焼を行なうSKYACTIV-Xまでも用意している。

マツダ株式会社 執行役員 広報・渉外・首都圏事業担当 滝村典之氏
マツダの「ソウルレッドクリスタルメタリック」は目立つようで、笹川副大臣も「いい赤だねぇ~」と撮影待ち時間に注目
MAZDA MX-30 EVに貼られていたゼロドラのロゴマーク

 日本では先進地域と比べて発電の脱炭素がそれほど進んでいないため、単に電動車に切り替えればよいと言うものでもなく、ガソリン車やディーゼル車の燃費をハイブリッド化などで改善しつつ、PHV化そしてEV化などが発電の脱炭素とともに進んでいくのが理想的。しかしながら、世界の脱炭素へ向けての流れは加速しており、日本でも総理が2035年までに新車販売で電動化車両100%を実現することを表明した。

 今回の環境省の施策はそうした流れを後押しするものであり、クルマを購入する側としては、補助金の活用などを検討しつつ、多様なパワートレーンが存在するクルマ選びを楽しめる時代にあることを歓迎したい。