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スバルのIT戦略本部長 臺氏が「Tableau」導入事例を紹介 デジタルで「カイゼン」のできる人材育成を目指す

2021年6月1日 開催

スバル 専務執行役員 CIOでIT戦略本部長 兼 経営企画本部副本部長の臺卓治氏

 スバルは6月1日、セールスフォース・ドットコムが開催するオンラインイベント「Salesforce Live: Japan」に参加。スバル 専務執行役員 CIOでIT戦略本部長 兼 経営企画本部副本部長の臺卓治氏がオンラインセッションに出演し、データ分析プラットフォーム「Tableau」を導入したスバルでの活用事例や狙いを紹介した。

 同セッションには、Tableau Software Country Manager 佐藤豊氏から「Tableau」が唱えるデータ活用のビジョンと「Customer 360」を通じた「Salesforce」との連携効果を紹介。臺氏からはスバルにおける「Tableau」の活用事例や導入の狙いが紹介された。

左からスバル 専務執行役員 CIOでIT戦略本部長 兼 経営企画本部副本部長の臺卓治氏、セールスフォース・ドットコム Tableau Software Country Manager 佐藤豊氏
スバルの事業環境を紹介するスライド

 臺氏はスバルではデータ・デジタル技術を活用して2つの取り組みを並行して実行していることを紹介。データ活用が可能なインフラ整備や人材育成によって組織の足下を強化する「カイゼン」に取り組むとともに、製品・サービス・ビジネルモデルを変革する将来的な「新たな価値の創出」を目指しているといい、2つの取り組みの共通のゴールとして「データ・デジタル技術を活用してスバルブランドとお客さまとの結びつきを強くする」を設定した。

データ・デジタル技術を活用して2つの取り組みを並行して共通のゴールを設定

 そうした中でスバルが導入したTableauは、異なるデータソースを一元的に統合・可視化し、すべての社員がデータに即した意思決定を行なうことができるというデータ分析プラットフォーム。スバルにおいては、2016年に導入を開始して2021年現在で、マーケティング、企画開発、品質、製造、販売という領域の526部署1400名で活用されているといい、臺氏からは製造領域、販売促進領域、品質領域という3つの事例が紹介された。

スバルでは「Tableau」を2016年に導入を開始して2021年現在で、マーケティング、企画開発、品質、製造、販売という領域の526部署1400名で活用されている

 その中で製造領域においては、Tableau導入以前は車両生産時の情報は紙に記録し手作業でPCに入力、結果の展開は翌日以降であったのに対して、Tableau導入後は、タブレットでの入力に統一しTableauを用いて集計してタイムリーに品質情報を共有、分析作業にフォーカスすることで分析の高度化を実現させたことなどが報告された。

製造領域での活用事例
販売促進領域での活用事例
品質領域での活用事例

 そうした取り組みを続ける中で感じたことについて、臺氏は、日本企業の強みは現場と一緒となった「カイゼン」にあると強調。臺氏は「個人的にはカイゼンが停滞気味かなと、やはり従業員のマインドも少し落ちているんじゃないかなと。その背景を考えると皆さん同じだと思うんですけど、とにかく業務の仕事量が増えてきていて時間的な余裕がなくなって、結果的にそのマインドも下がってきていたりとか、あと実際自分も仕事をしていて思うのは、いろんな仕事が積み上げ式に増えてきているんですけど、なかなか棚卸しができてないので、仕事の量だけ増えて、そこに逐次的にリソースを投入していくことで、やっている作業者は自分がやっている仕事の全体観が分からないだとか、この仕事の本質って何だというのが分からないので、なかなかカイゼンが進みにくい状況になっているのではないか」との感想を話した。

 そして、スバルがテータ・デジタル技術の活用に取り組む理由について、臺氏は「やはり、われわれの強みをもう一度取り戻すということで、ものづくりを強化していきたい。じゃカイゼンって何だったのだろうと考えると、その効率化で時間を生んで、課題を可視化してチームで共有して、分析から問題解決につなげる。で、その結果を通して人材を作っていくというのが、われわれが得意とするカイゼンのプロセスではないかと。そう考えると、やはり非常に業務が複雑になっている中で、デジタルというツールがわれわれにとって重要なんじゃないか、ここにTableauの活用領域があるじゃないかと考えました」と話した。

 最終的なゴール向けて、臺氏は「やはり狙いたいのは、もう一度そのカイゼンを社内の中でドライブをしていって、とにかく成功事例を積み上げて、もう一度その従業員にカイゼンのマインドを取り戻してもらいたい。それから、業務が非常に煩雑になっている中で、例えば業務を標準化して、より本質的な業務に取り組んでもらいたい。で、結果的にそれが職場の活性化につながって、従業員のモチベーションを上げて、エンゲージメントを向上していく。もう少し俯瞰(ふかん)的に申し上げると、やはりこういった活動を通しながらデータ活用できる人材を増やしていくことが基盤作りになって、もう1つ大事だと思っているのは、この結果を経営側が認知することによって、データ活用の有効性を認識していく、こういった取り組みにしたい」との思いを話した

 同セッションの締めくくりとして、臺氏は「この後スバルはどうするのかという考えなんですけど、1つはデータの定着化を図りたい。せっかくここまでみんながデータを使えるようになってきたのでこれをどんどん広げていきたいというのが1つですね。もう1つは、経営側との距離を詰めていきたい。なかなか経営から見るとデータ分析って何なんだっていうところが見えてこないんですけど、こういう活動の積み重ねで経営の認知も上がってきましたので、経営側との距離を詰めていきたい」と語り、並行して取り組む2つの取組みについて「ものづくりに関しては、とにかくその改善のスピードを上げながらデータ活用できる人材を作っていきたいと考えています。そこで人材ができることによって、例えばわれわれがこれから新しい価値を作っていく、そういうところに資する人材を作っていきたい。基本的にはブランドとしてお客さまとの結びつきを考えていきたいのですが、何とか新しい領域で事業化みたいな、まったく新しいチャレンジもしていきたい」との期待感を話した。