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新型「ランドクルーザー」世界初公開、チーフエンジニアの横尾氏「ランクル80の持つ悪路走破性を超えたい」
2021年6月10日 12:12
- 2021年6月9日(現地時間) ワールドプレミア
トヨタ自動車は6月9日(現地時間)、新型「ランドクルーザー」をオンラインで世界初公開。オンラインワールドプレミアに出演したチーフエンジニアの横尾貴己氏は「ランクル80の持つ悪路走破性を超えたい」と新型ランドクルーザーの開発にかけた思いを話した。
70年にわたる伝統を持つトヨタの歴史を象徴するクルマ
オンラインイベントでは、ランドクルーザーは1951年8月、強力なエンジンを備えた4輪駆動車「TOYOTA BJ型」として誕生。以降70年にわたり、累計約1040万台、年間30万台以上のランドクルーザーが世界170の国と地域のユーザーに愛用されていることが紹介され、そうしたユーザーのためにランドクルーザーが守り続けている本質が「信頼性・耐久性・悪路走破性」であることが強調された。
新型ランドクルーザーの開発について、チーフエンジニアの横尾氏は「ランクルは世代が変わってもランクルであり続けなければならない。開発チームに対し常に訴え続けてきたのは、“このクルマはランクルなんだ”というシンプルな言葉です。信頼性、耐久性、悪路走破性という幹の部分は絶対に譲らない。そのためにフレームであることととランクルで80から続く黄金比とも言うべき伝統のホイールベース、これは絶対に変えない。実は強く意識したのがランクル80です。誕生から30年が経過した今もなお歴代ランクル最高の悪路走破性を持つと言われています。ランクル80の持つ悪路走破性を超えたい、エンジニアたちの熱意がこの300は詰まっています。開発の初期からいく度となく悪路を走り、壊しては直し、また壊してきました。実路からのフィードバックに勝るものはありません。ランクルを作るということは、私も含めて人作りそのものです。凄腕、匠、三浦ドライバー(トヨタ車体からダカールラリーに参戦する三浦昂氏)にも開発の初期から参加をいただき、総力を挙げて完成度を磨いてきました」と話した。
300シリーズへと進化したランドクルーザーのフラグシップ
今回フルモデルチェンジした新型ランドクルーザー(300シリーズ)は、2007年に登場した200シリーズの後継となるモデル。新型ランドクルーザー開発の狙いは「ランドクルーザーの本質である『信頼性・耐久性・悪路走破性』は、進化させつつ継承する」「世界中のどんな道でも運転しやすく、疲れにくい走りを実現する」に定められた。
現代のランドクルーザーに求められる使命について、横尾氏は「今日においてもランクルしか走れない道があります。どこへでも行き、生きて帰って来られる相棒であり続けること。これがランクルの使命と考えています。そのためには次世代に向けてランクル自身も生き残る必要があるのです。年を追うごとに厳しくなる燃費や排気規制の対応や、より一層の衝突先進安全性の確保には限界を迎えていたのが事実です。また安心安全の基本である運転のしやすさについても、改善のご要望をいただいておりました」と話した。
そして新型ランドクルーザーの開発に向けて、横尾氏は「世界の8割の道があるという豪州でランクル200を自らドライブし、大きな2つの気づきがありました。1つはランクルがいかに愛されているかということを知り得た感動、もう1つは予想に反し疲れるという事実でした。延々と続くコルゲーションやダート路面、果てしなく続くスチュアートハイウェイなど、クルマの挙動に逐一注意を払う必要があり、これを何とかしたいと思ったことがZJでのクルマ作りのスタートでした。今回の300開発にあたり、運転しやすい、疲れないことを目標に掲げたルーツがここにあります」と明かした。
そうしたことを念頭に、新型ランドクルーザーでは、ランドクルーザーの本質を守る礎であるフレーム構造は踏襲しながらも、TNGAに基づく新GA-Fプラットフォームを採用。さらに軽量化・低重心化、新パワートレーンの採用、内外装のデザインを含めて、長年にわたる技術の積み重ねと最新技術を融合することで、素性の刷新を図ったとしている。
V6エンジンにダウンサイジングされたパワートレーンについて、横尾氏は「ドライバーの意のままの加速、減速、そしてコントロールのしやすさを追求しました。200系のV8をはるかに凌ぐパワー、トルク、そして経済性を実現しています」と話し、また車両全体で200kgの軽量化を果たしたことに「体幹とも言うべきフレームには世界初の溶接技術を導入することで、余分な重ね合わせが不要となり、大幅な軽量化を実現できました。溶接技術の匠たちの力によって実現したこのフレームはトヨタのものづくりの象徴であると言っても過言ではありません。そのほか最新の設計技術によってトータルで200kgの軽量化を実現しました。こうした素性の刷新の積み重ねにより、世界中のどんな道でも運転しやすい疲れないランクル300の走りが形作られています」と強調した。
そのほかにも新型ランドクルーザーには、伝統の悪路走破性をさらに向上させるため、サスペンションの基本性能として、ホイールアーティキュレーション(タイヤの浮きづらさ)を向上、世界初のE-KDSS(Electronic Kinetic Dynamic Suspension System)の採用による接地性向上、ドライバー視点で障害物を直感的に可視化できる「マルチテレインモニター」、走行路面を判定して自動でモード選択する「マルチテレインセレクト」が採用された。
オンラインイベントに合わせて発表されたプレスリリースでは、代表グレード(海外仕様)のエンジン・トランスミッション諸元が公開され、最高出力305kW(415PS)、最大トルク650Nmを発生するV型6気筒 3.5リッターツインターボのガソリン車、最高出力227kW(309PS)、最大トルク700Nmを発生するV型6気筒 3.3リッターツインターボのディーゼル車を用意。両モデルともにトランスミッションは10速ATを採用。一部地域にはV型6気筒自然吸気ガソリンエンジンと6速AT仕様車も用意される。
今回のオンラインワールドプレミアでは、標準モデルに加えてGRモデルも公開されたが、GRモデルについての詳細については明らかにされなかった。今後新型ランドクルーザーは、ランドクルーザー生誕70周年となる2021年の夏以降に世界各地で発売予定であることがアナウンスされている。