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世界最高スペックのカーオーディオ、アルパイン「エフナンバーワン ステータス」のシステムを見る

アルパイン「エフナンバーワン ステータス」のヘッドユニット「HDS-7909」(左)と、デジタルオーディオプレイヤー「DAP-7909」(右)

3つのシンクロコンセプト

 アルプスアルパインが6月22日に発表したカーオーディオ「AlpineF#1Status(アルパイン エフナンバーワン ステータス)」。カーオーディオとして初めて384kHz/32bitハイレゾ音源の再生を実現した世界最高スペックの製品で、フルコンプリートカーで提供するトヨタ「アルファード Executive Lounge S」での搭載価格は約1200万円。その際の内訳は、システムのみの価格で250万円、クルマへのデッドニングを含むインストール代が150万円になっているという。アルファード以外の搭載も可能で、いずれも同社の専用販売店「アルパインスタイル」へのWeb受け付けで購入できる。

アルパインスタイル

https://www.alpine-style.jp/

 販売方法もこだわったものになっているが、それらはエフナンバーワン ステータスの性能を引き出すため。カーオーディオとして突き抜けた製品となっているエフナンバーワン ステータスの構成については、アルパインマーケティング エリア統括本部 関東圏エリアマネージャー 皆木睦海氏、アルプスアルパイン サウンド設計部 主任技師 中村清志氏より解説が行なわれた。

エフナンバーワン ステータスのシステム
エフナンバーワン ステータスのシステム構成図

 皆木氏は、エフナンバーワン ステータスが384kHz/32bitのフルスペックハイレゾ再生システムであることを強調。これは、ハイレゾ再生をうたうシステムであっても、実は簡易的に再生しているシステムもカーオーディオでは存在するためで、エフナンバーワン ステータスはリアルな再生システムであり、最高の音を再生するためにカーオーディオとしては異例の作りになっている。

 それが、「音楽信号データの伝送の時間軸をシンクロ」「音の到達タイミングをシンクロ」「4-Wayスピーカーの音色をシンクロ」という3つのシンクロコンセプト。384kHz/32bitのデータは音楽CD(CD-DA)で採用されている44.1kHz/16bitの17.4倍の音情報量となり、この膨大なデータをシンクロさせ高音質に処理するために、さまざまな工夫がこらしてある。

アルパインマーケティング エリア統括本部 関東圏エリアマネージャー 皆木睦海氏

0.9mmステップのタイムコレクションなど大容量データを高精度処理

「音楽信号データの伝送の時間軸をシンクロ」は、デジタルデータ処理で音質劣化の原因となる時間軸のゆらぎであるジッターを減らすこと。デジタルデータの処理は水晶発振子からの信号(クロック)を元にして行なわれているが、オーディオプロセッサを用いるようなシステムでは一般的に独立したクロックが用いられている。そのため、デジタルデータのやりとりに時間軸のゆらぎであるジッターが発生し、これが音質劣化の原因になる。

 エフナンバーワン ステータスでは、このジッターを低減するためにオーディオプロセッサ側に「OCXO DuCULoN」という水晶を2基搭載して精度を高めたクロックを搭載。このクロックをマスター信号として同期を図っている。これにより、ジッターが0.1%から0.00001%に低減。1万倍の精度で時間管理されている。デジタル信号をアナログ信号に変換するDACには「ES9038PRO」が用いられている。

エフナンバーワン ステータスの特徴
384kHz/32bitのデータ量について
ジッターについて
水晶を2個使用している

「音の到達タイミングをシンクロ」は、スピーカーからの音の到達タイミングを0.9mmステップで時間軸補正すること。車室内の音楽再生では、座る位置に制限があり、リビングルームなどと違い2つのスピーカーの中央に座ることはできないほか、複雑な反射音が発生してるため、音が人の耳に到達するときにずれてしまう環境にある。そのために、高級なカーステレオでは、その到達時間を調整する仕組みが取り入れられている。

 それがタイムアライメントやタイムコレクションとか呼ばれているもので、エフナンバーワン ステータスでもしっかり装備。さらにエフナンバーワン ステータスでは、従来の7.2mm単位から0.9mm単位での時間補正が可能となっている。この0.9mm単位にした理由について中村氏は「人間の耳はスピーカー位置の1度の違いを聞き分けることが可能」なため、その1度に相当する0.9mmにしたとのこと。

 384kHz/32bitハイレゾ音源という大容量データをロスなく処理するために、64bit@1GHzのDSP「Griffin UL」を4基搭載してデータ処理を行なっている。この処理能力は従来比10倍。なにもかも桁外れな物量が投入されている。

 また32bitハイレゾデータの理論上のダイナミックレンジは約192dB。微少な音から大音量まで再現できるデータとなっているが、そもそもカーオーディオの回路のダイナミックレンジが小さければ、楽曲データのよさが活かされてこない。エフナンバーワン ステータスでは、オペアンプもJRC(新日本無線)と新しいものを開発しており、JRCの高音質オペアンプ「MUSES(ミューズ)」のブランド名を持つ「MUSES05」を新開発。家庭用の高級オーディオでは1チップ2回路の「MUSES01」が使われていることもあるが、1チップ1回路の「MUSES05」を車載用に新開発し、オーディオプロセッサには40個投入されている。

「4-Wayスピーカーの音色をシンクロ」については、これまでウーファーやツィーターなど個別最適で作られていたスピーカーを、エフナンバーワン ステータスとして全体最適で製品化。サブウーファー、ウーファー、ミッドレンジ、ツィーターのスピーカーコーンはすべて炭素繊維強化樹脂「CFRP」で音色を統一。各スピーカーの再生周波数範囲のオーバーラップを広めに設計し、車種ごとのチューニングのしやすさに配慮している。このオーバーラップを増やせるのも、素座選びから音色の統一を図っているためだ。

アルプスアルパイン株式会社 サウンド設計部 主任技師 中村清志氏
タイムコレクションについて
Griffin UL
MUSES05

 音楽を送り出すデジタルオーディオプレイヤー「DAP-7909」は、Astell&Kernとの協業製品で、単体のDAPとしても使えるほか、ヘッドユニット「HDS-7909」との連携機能を追加している。このヘッドユニット「HDS-7909」からオーディオプロセッサ「HDP-H900」へアルパイン独自のデジタル伝送規格「A2DP」でデータ転送され、さまざまな処理をしてアナログ化。8ch 8Vのバランス伝送出力で2台のパワーアンプ「HDA-F900」に送り出している。コネクタはもちろんXLR端子。

 担当者によると、A2DPバス、XLR端子によるバランス伝送はいずれもアルパイン初となり、音質最優先で考えたものになるという。

オーディオプロセッサ「HDP-H900」
オーディオプロセッサ「HDP-H900」の内部
DSPと水晶クロック
パワーアンプ「HDA-F900」
ヘッドユニット「HDS-7909」。左側の6つのグリーンボタンは、かつてのアルパインデザインを踏襲している

 カーオーディオ用のハイエンドオーディオが深く狭くマニアックになる中で、アルパインという親しみやすいブランドで超ド級のシステムが出てきたことは、価格はともかく「とにかくいい音が手軽に楽しみたい」という人にとっては朗報だ。システムセットアップもメーカーのマイスターが1台1台行なってくれ、「いい音」を追い込むための基準を作ってくれるのもありがたいところ。アルパイン エフナンバーワン ステータスは、価格的にはもちろん、カーオーディオとしても突き抜けたシステムの登場となる。

デジタルオーディオプレイヤー「DAP-7909」、ヘッドユニット「HDS-7909」
オーディオプロセッサ「HDP-H900」
パワーアンプ「HDA-F900」
4Wayスピーカーシステム