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マツダとミズノ、人体工学に基づいたドライビングシューズを共同開発 Makuakeにて予約開始

2021年7月6日 予約開始

3万9600円

マツダ/ミズノ ドライビングシューズ

“クルマと通じ合う”をコンセプトに開発

 マツダは7月6日、ミズノと共同開発した新コンセプトのドライビングシューズ「マツダ/ミズノ ドライビングシューズ」を、クラウドファンディングサービス「Makuake(マクアケ)」で同日14時から予約を開始した。価格は3万9600円。Makuakeでは早期購入割り引きなどが用意される。サイズは24.5~28.0cm(EE相当)で、カラーはグレー×ブラックのみ。トップアスリート向けシューズを生産するミズノの国内工場で職人による手作業にて作られることもあり、配送予定は2022年3月末となっている。ソールの張り替えには対応していないとのこと。

Makuake「マツダ/ミズノ ドライビングシューズ」プロジェクトサイト

https://www.makuake.com/project/drivingshoes/

 このドライビングシューズは“クルマと通じ合う”という新しいコンセプトを目指して開発。従来のドライビングシューズにはない日常での快適な歩行とダイレクトなドライブフィールを両立するとともに、ペダル踏み込み量のコントロールのしやすさやペダル踏み替えのアシストを狙ったクルマを愛する人の生活に寄り添った一足となる。

 このコンセプトを実現するために、マツダは“人間中心のものづくり”という共通の思想を持つ総合スポーツメーカーのミズノと、両社のものづくりの知見を具現化するアイテムとして、スポーツと走りの間にあるドライビングシューズの共同開発に着手。「ドライバーを研究し、ドライバーをサポートするシューズを生み出す」をテーマに、「背屈サポート」「足裏情報伝達」「かかと支点の安定性」という3つの技術的特徴が盛り込まれた。

マツダ/ミズノ ドライビングシューズ
マツダ/ミズノ ドライビングシューズのコンセプト
3つの技術的特徴を採用

運転をサポートするとともに、日常でも使える技術を採用

 1つめの特徴的な技術となる背屈サポートについては、ミズノが競泳水着などの開発で培ったウエアによる姿勢制御技術を、マツダが考える理想の運転姿勢に対して大きな影響を与えるドライビングシューズに応用できないかという点に着目。

 ペダルを操作する際の「踏み込み」「引き上げ」という、足首を軸とした“底屈”と“背屈”という動作に注目し、すねの前脛骨筋という筋肉を収縮することでつま先を引き上げる“背屈”と呼ばれるより負担の大きい動作をシューズによってサポートすることで、ペダル操作性が改善できないかと検証。試作を行なったところ、背屈操作がしやすいだけでなく、踏み込み操作のコントロールもしやすくなるという発見につながったという。

 具体的には、背屈をサポートする技術として、足首まわりに伸縮性の高いストレッチ素材を採用。ストレッチ素材の戻る力(収縮力)がつま先を引き上げる動作をサポートすることで、アクセルペダルとブレーキペダルを踏みかえしやすくするとともに、踏み込み時にはストレッチ素材の伸びを抑える力が踏み込み加減の微調整をしやすくし、ドライバーのペダルコントロール性をより緻密にしている。

 また、ペダル踏み込み時のつま先を引き下げる動作の際に伸び縮みするアキレス腱部分には、ペダル操作時にシューズのアッパー部分の変形を吸収して変形を抑制するジャバラ構造メッシュを採用し、シューズのフィット感を維持すると同時にスムーズな動作を可能とした。

ミズノのウエアによる姿勢制御技術をドライビングシューズに応用し、背屈をサポート
ペダル踏み変え時の筋活動が低減

 2つめのポイントの足裏情報伝達では、従来のドライビングシューズの“薄くて硬いソールでなければダイレクトなペダル操作が不可能”という常識により、日常履きが少し困難であったという点を改善するため、歩行時のクッション性を確保したままダイレクトなペダルフィールを両立することに取り組んで開発を実施。

 それを実現するために、ミズノのトレーニングシューズで用いられている「MIZUNO COB(ミズノコブ)」という技術を採用。荷重状態を伝える際に複数の柔らかい突起が足に面圧を伝えることで、荷重の情報をソール面に逃がさずに的確に足裏に伝えられるようにした。その結果、ブレーキやクラッチペダルからのフィードバック情報がよりクリアに伝わり、クッション性のあるソール構造でもまるで薄いソールを履いているかのようにダイレクトなペダルフィールを実現している。

足裏の感度を高めるため「MIZUNO COB」を採用

 3つめのポイントは、床面への足の接地を安定させながら、スムーズなペダル踏み替え操作をサポートするラウンドソール形状で、マツダ/ミズノ ドライビングシューズのかかと部分には、クルマのフロアへの接地面積を増やすようなアウトソールを巻き上げたR形状を採用。また、ソール全体は足裏を模した3D形状で、ペダルを踏む際に適切なたわみとなるように剛性バランスをチューニングしている。加えて、土踏まずの部分をアーチ形状とすることで、ソール面のねじれ剛性を確保し、歩行時の路面ホールド性とグリップ向上にも寄与している。

かかとの接地面を安定させることでペダルフィールを向上

魂動デザインを生かしたシューズ作りに本気で取り組み、美しいフォルムと機能を融合

 事前に行なわれた商品説明会では、マツダ 車両開発本部の梅津大輔氏が商品が生まれるまでの経緯や採用技術について説明。「これまでマツダはクルマという商品を通じてお客さまに走る喜びをご提供してまいりました。今後はこの提供価値をライフスタイル全般へと拡大し、お客さまの人生にさらなる輝きを提供していくため、クルマだけにとらわれない新たな挑戦をしていきます」と抱負を語り、今後は魂動デザインの追求や人馬一体を追求するというブランドの考え方に基づいたマツダならではのデザインと技術で、人生を彩るさまざまなライフスタイルアイテムの導入を進めていくとした。

 また、マツダ デザイン本部の諌山慎一氏がシューズデザインについて紹介。カーデザインの知見を生かし、“魂動デザイン”の動き表現を生かそうと、躍動感あるスケッチに取り組むことから開発をスタート。次のステップでは、普段はクルマしか作らないマツダ社内の“匠”たちがクルマの開発で使用する粘土素材や制作手法で、見よう見まねでシューズのデザインを行なっていったという。

マツダの匠たちが“本気で美しいシューズ作り”に取り組んだ

 ドライビングシューズ開発はマツダでは初めての取り組みとしながらも、粘土ので作ったシューズの造形の上にステッチのラインまで忠実に再現する凝りようだったといい、それを見たミズノのデザイナーとパターンナーが熱意に共感。柔らかな素材で立体裁断や縫製により形を作って、それをまた修正していくというようなマツダにとって不慣れな領域をフォローすることで、クオリティが高められていったとのこと。

マツダの匠の熱意に共感したミズノの匠により、クオリティが高められた

 色や素材については、開発途中まで黒一色だったというが、どうしてもシャープさ、軽さが表現できなかったとして、ハイカットのシューズでも薄くてスマートに見えるような、上下で色分けするカラーブレイクを採用。無味無臭な印象になりがちなグレーという色味も、マツダ車で採用しているヌバック素材を用いることで、素材の温かみとブラックレザーとのコントラストを創出。諌山氏は「革のツヤやヌバックの色味の微妙な調整を行なうことで、商品の完成度を上げることができた」と語った。

色や素材にもこだわりが込められている

“Made in Japan”にこだわり、1つひとつ手作りで生産

 事前の商品説明会には、ミズノ グローバルフットウエアプロダクト本部の南場友規氏も出席。「ミズノは各種競技種目から日常向け生活商品まで多岐にわたる商品の開発を行なっておりますが、そこに共通してある思想というのが『人の動きを研究し、人と用具の調和を追求する』ということになります。このことは長年ミズノという会社がスポーツを通じて人と向き合い、そのパフォーマンスをいかに高めるかを考えていく上で原点としている考え方です。また、この部分でマツダさんと思いを同じとするところがあり、今回の開発が始まったという話になります」と、自社の紹介を踏まえつつ、ドライビングシューズ開発までの経緯を紹介した。

ミズノのブランドスローガン
ミズノは競技者のパフォーマンスを高めるようなプロダクトの開発だけでなく、働く人に向けたワークビジネス事業も展開。スポーツシーンで培ったノウハウを活かしたものづくりで、健康で快適な生活をサポートするカテゴリーも強化している
ミズノの商品開発に共通する思想

 南場氏は主にスポーツを中心にさまざまな商品を手がけたミズノにとっても今回の取り組みは新たなチャレンジだったと言い、「スポーツから見たクルマのペダル操作というのはとても繊細な動きで成り立っているということが分かりました。より意のままの運転を実現するためには、繊細な領域でのコントロール性が求められることが驚きで、そういった非常に細かい感覚をどのように表現するか、そのフィーリングを形にすることが今回われわれにとってもチャレンジでありました。例えば今回のシューズに搭載しているソールですが、そのプロトタイプは職人が削って作成しました。実際に運転してのフィードバックから、課題とされている剛性バランスをよくするために試行錯誤をし、今の形状を出していったという経緯があります」と開発の苦労を語った。

ミズノからみたペダル操作の繊細さ
コロナ禍でリモートワークとなりながらも、修正点や改善点を洗い出し、意見をぶつけ合いながら共同開発を行なっていった

 また、ドライバーのフィーリングをより忠実に伝える繊細な作りが求められるため“Made in Japan”にこだわり、国内の生産工場で1つひとつ丁寧に手作りでお届けすることにこだわったという。南場氏は「人間中心のものづくりという共通の開発思考を持つ両社だからこそ、生まれたシューズだと考えています。ミズノはこれまで各種スポーツで幅広い種目を支えてきた技術、それに加えてマツダさんの人馬一体というコンセプトや小さな違いを的確に捉えてフィードバックできること、また両社のデザインチームの細かいこだわりまで含めて今回のシューズが誕生しました」と、両社の思いが詰まったプロダクトであると話した。

繊細な操作を行なうためのシューズだからこそ、“Made in Japan”にこだわった

 なお、南場氏からはマーケティング戦略についても語られた。今回は両社にとっての新しいビジネスへの挑戦となることから、新たな手法であるMakuakeを活用。Makuakeは、まだ世の中にないものや、ストーリーあふれるチャレンジが集まる新しい物や体験の応援購入サービスで、このプラットフォーム上において両社の思いを込めたページを公開し、応援購入を募るという手法としたという。

マーケティング戦略については、“新たな挑戦”であることから“新たな手法”のMakuakeを活用

 最後に南場氏は「7月6日にMakuakeのプロジェクトページで公開し、予約受注を開始します。マツダとミズノの新しい取り組みとなります。クルマと通じ合う喜びという価値をより多くの方に届けていきたいと思っています。われわれの新たなチャレンジへの応援をよろしくお願いいたします」と呼びかけた。

気になる今後の展開は……?

 今回のドライビングシューズは“第1弾”ということだが、これから第2弾、第3弾と続くかどうかについては「どのくらいの購入数があるのかを判断した上で、今後どういった展開ができるかを検討していく」とのこと。各ディーラーでの販売についてもまだ不明とのことなので、今後、同じドライビングシューズは入手ができない可能性もある。マツダ/ミズノ ドライビングシューズによって高められた人馬一体の走りが気になる方、マツダとミズノの想いに共感した方は、この機会にMakuakeから応援してみてはいかがだろうか。