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トヨタ、レクサス販売店の不正車検発覚後の総点検結果と今後の取り組みに関する記者会見 「今後は結果だけでなく、プロセスも確認していく」と佐藤国内販売部本部長
2021年9月29日 19:22
- 2021年9月29日 実施
再発防止のための取り組みを報告
トヨタ自動車とトヨタモビリティ東京は9月29日、トヨタモビリティ東京が運営する「レクサス高輪」における不正車検の処分内容と今後の取り組みに加えて、販売店とメーカーが共同で行なったという全国4852店舗総点検の結果報告と今後の取り組みについて記者会見を実施した。
会見はオンラインで行なわれ、トヨタモビリティ東京 代表取締役社長 関島誠一氏と、トヨタ自動車 国内販売事業本部 本部長 佐藤康彦氏が出席した。
まず、トヨタモビリティ東京の関島社長は、一連の不正車検について改めて謝罪を述べたうえで、レクサス高輪の「指定自動車整備事業の指定の取り消し」「検査員4名の解任」という処分内容に加え、さらに社内懲罰規定に基づき自身を含めた役員および関係者の処分も実施したと報告した。
レクサス高輪における不正車検該当車両517台については、10月中に無償再検査を完了する見込みであるとしたが、レクサス高輪は本日から2年間は指定自動車整備事業の再認定は取得できないという。また、総点検では別途、江戸川瑞江店で「スピードメーター精度検査の未実施」が5台判明したことも公表。こちらの正式処分については後日報告するとした。
続けて、前回の記者会見で挙げていた課題「決められた時間内に車検を終わらせることが目的となってしまっていた」点について関島社長は、車検作業に関する「標準作業構築」と、エンジニアや検査員が自分の仕事に集中できる環境を作れるように「サポートスタッフの増員」に取り組むと説明。加えて、社内ヒアリングで最も要望が多かったエンジニアの労働環境と処遇改善については、「休憩スペースなどを設ける」「検査員手当の増額」「老朽化した整備・点検機材の更新」などを実施することで「慢性的に負荷の高い状況が続いていた」課題も解決していくとした。
さらに、調査の結果「車検制度に対する従業員の理解と遵法意識の欠如」があったとし、エンジニアだけでなく営業スタッフも含めた全従業員に対して研修を実施するとともに、毎月コンプライアンスの重要性を社長自らが発信していくという。また「店舗の監査機能の強化」も掲げ、完成検査時のエビデンス写真の撮影と保管、車検ネットワークシステムの全店舗への導入を実施すると明言し、「引き続き再建に尽力していく」と締めくくった。
結果重視の表彰制度がそれらを助長していたと認識
トヨタの佐藤本部長は、7月20日から実施してきた全店舗総点検について、新たに販売店11社12店舗で指定整備違反が判明したと報告。
8店舗については自社の検査で判明したもので、4店舗についてはレクサス高輪と同様に国土交通省の検査で発覚したという。また、自社の検査で判明したうち2店舗については、レクサス高輪と同様に検査の未実施、検査数値の改ざんという故意によるもの、6店舗については過失によるものであると明かした。なお、処分についてはレクサス高輪のみ決定していて、その他は未確定であるという。今後も不正の事実が明らかになった場合は、隠さずきちんと伝えることを徹底すると報告した。
トヨタ、販売店11社12店舗で不正車検が判明 全国販売店の総点検結果公表
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1354408.html
佐藤本部長は「今回実施した全国のトヨタ/レクサス販売店4852拠点(指定・認証工場、車検センター)の総点検は、違反の有無を確認する『監査』ではなく、現場の実態や会社の仕組み・管理方法などに不正へと繋がるリスクがないかを確認しつつ、指定整備の重要性の再確認とサービス現場が抱える課題なども共有することが目的である」と説明。
そこから見えてきた課題として、車検の一連の作業の中で、営業とサービスの連携・コミュニケーション不足が発生していて、エンジニアが本来の作業に集中できない状況が発生。また、経営陣も営業成果重視・目標達成型のマネジメントが軸となり、現場の声や実態を把握せずに現場任せであったことも要因の1つと解説。合わせてメーカー側も販売店の活動・定着へのサポートが不十分だったことと、結果重視の表彰制度により、それらを助長していたことも認識したと報告した。
今後の取り組みとしては、現場では標準作業の明確化と負荷の平準化を行なうことでエンジニアが本来の作業に集中できる環境の構築を行なうとともに、事前の荷下ろしや平日入庫といったユーザーへのお願いを徹底することで、月末や土日に集中しがちな車検の業務負担の平準化を行なっていくとした。
経営サイドは、代表者や経営層が現場の声を聞く活動や、正しい仕事の仕組み作りを継続的に行なうことと、相談窓口やヘルプラインの周知を行なうと同時に、暑さ寒さ対策や作業負荷を減らす最新ツールの導入といった労働環境の改善と検査員手当や給与体系など、処遇面の見直しも随時行なっていくという。
また、メーカーもTPS(トヨタ生産方式)に基づいた改善・活動支援と合わせて、販売店との向き合い方では、助長の要因となっている表彰制度の見直しを図るとし、佐藤本部長は「営業成果、結果のみを見ていたことを改め、プロセスや仕事の品質も確認し、お客さまと地域のために仕事ができているか? 従業員がいきいきと働ける環境であるか? などを検討していく」と明言。
最後に佐藤本部長は「時間はかかるかもしれないが、今回分かったことを1店舗1店舗、1つ1つの課題に向き合い、現地現物、現場に寄り添った取り組み改善をスタートし、やり続ける覚悟です」と締めくくった。